ドリームマッチ
九戸政景
プロローグ
『ふんふんふふ~ん♪』
薄暗く様々な書類や機材などが置かれ、まるで物置のようになっている一室にそんな機嫌が良さそうな鼻歌が響く。しかし、鼻歌の主は室内にはいなかった。人どころか生き物の姿はない室内に備え付けられたコンピューターの画面の中に鼻歌の主はいた。
『これで今日の身だしなみもバッチリばく。人前に出る仕事をしている以上、身だしなみには気を付けないといけないばくね~』
画面の中にいた物、それは珍妙な姿をした生き物だった。象のように長い鼻とサイのような目、牛のような尾に虎のような足を持ったソレは頭に白いシルクハットを被った黒い燕尾服姿であり、艶のある茶色のステッキを持った前足で首元の蝶ネクタイを直すと、満足そうに頷いた。
『今日のばっくんもイケバク過ぎて惚れ惚れするばくねぇ……まあそれは当然なんだばく。ばっくんは仕事で忙しい中でも可愛い女の子達から取り合いされる程の人気者ばくからねぇ。いやぁ、イケバクな上に人気者っていうのは罪ばくねぇ』
うっとりしたように独り言ちていたその時、ばっくんの目の前に一人の人物の顔写真が映し出された。
『お、次のお仕事ばくね。しかしこれはまた……冴えない感じばくねぇ。でも、こうして仕事を回されたのならどんなに冴えなくても恵まれなくても夢のような一時を過ごせるように取り計らうのがばっくんの使命ばく。という事で、早速行ってくるばくかねぇ』
ばっくんは独り言ちると大きな欠伸をした。そして大きく開いた口からは虹色のシャボン玉のような物が現れると、それはばっくんの身体を静かに包み込む。
『それじゃあ早速お仕事に出発ばく』
ばっくんは手に持っていたステッキでシャボン玉を割った。そしてシャボン玉は割れたが、そこにばっくんの姿は無くなり、室内は再び静寂に包まれた。
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