第18話 DIF図鑑

「了解だ」


「あの、DIF図鑑とは何ですか?」


 スマホを操作している画面を覗こうとした走矢へ、ももが尋ねてくる。


 これも養成所で習うことなのだが、今知っておくのもいいだろう。

 

 そう思った走矢は、DIF図鑑について説明をする。


 DIF同士の戦闘において相手の能力を知ることは、対策を練り戦闘を優位に進められるため、どんな手段を用いても欲しい情報であった。


 初期の頃はDIFの情報を専門に扱う者たちがおり、彼らから情報を買って対策を取るというのが一般的だった。


 ところがある時、ネットにDIF図鑑というサイトができたことで、全てが変わった。


 どういう仕組みなのか未だに分かっていないのだが、とりあえずDIFの能力を使用すると、一時間以内にDIF図鑑へ情報が記載されるのだ。


 このサイトは一度記載されたら、排除することは不可能であり、閲覧禁止にもできない。


 なぜなら、この専門サイト自体がDIFとしての能力で作られたからである。


 作った本人を亡き者にすれば、消えるかもしれないが、初めて作られた六年前から現在に至るまで、サイトを作ったDIFを特定できていないので、ほぼ不可能であるとみんな諦めている。


 このサイトを利用するには、二つの条件が存在する。


 まずはDIFであること。人間がこのサイトを開いても、白紙状態で何も見えないそうだ。


 次に閲覧できる情報量は、自分のランク以下のものしか見ることができない。


 このランクとは、人工島で発行される時にDIFとしての強さの試験を行い、G、F、E、D、C、B、A、Sの順にランクを付けられる。


 ランクはDIFとしての強さの基準となるので、みんな一つでもランクを上げようと必死に研鑽し、年に一回行われる試験で少しずつランクを上げていく。


 で、このランクがDIF図鑑の閲覧にも適用されており、例えばランクDのDIFがランクD以下のDIFの情報は閲覧可能だが、ランクC以上のDIFの情報はアクセスしても真っ黒で何も見えない。


 さらに同ランクでも強さによっては一部が秘匿された状態で表示されることが分かっている。ただし、これが適用されているのはSランクだけであり、Aランク以下は秘匿されることはない。


 強い情報を見たければ、そして見られたくなければ必死でランクを上げろと言わんばかりである。


「なんと。そんな物があったんですね」


「あったんですよ。ちなみにこの中では、水上が一番高いランクBだから、調べさせたんだ。万が一、千両寺冬也のランクがBならランクCである私では閲覧できないから」


「……えっ?」


(嘘でしょう。あの強さでランクC。ってことは、この男はそれ以上の……)


 走矢の強さを知っている二人は、ランクでは上である水上に興味津々の視線を浴びせていく。


 しかし、そんな視線を水上は鼻で笑う。


「はっ、ランクが下だぁ? よく言うぜ。時田みたいなランクCがうじゃうじゃいてたまるか!」


「ももちゃん、これだけは覚えといた方がいいわよ。走矢のように五年以上もニューライトブルーシティーに住んでいて、ランクがC以下ってことは絶対にないの。だって、ランクCが五年も生き残れるなんて甘い場所じゃないからよ。でももしいるとしたら、それは実力があるのに己の力をわざと隠しているか、そもそもランク試験が面倒で行っていない奴のどちらかよ」


 七海が耳打ちをすると、今度は視線が走矢へ向く。


「もちろん、走矢は後者よ」


 走矢は満面の笑みとサムズアップで答えるのだった。

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