地球大進化 〜ファンタジーを取り込んだ地球で生きる!〜
本大
第一部
第1話 プロローグ 地球進化
「よぉ、愛するくそったれ共」
地球上の生命に突然降りかかった精神的な重圧と、意識に直接叩き付けられる声。
大いなる存在を嫌でも認識させる声の主は、名乗りもしないが言われなくてもわかってしまう。
「地球」だ。母なる大地「地球」の声だ。
「我は進化のときを迎えた」
狼狽える生命のことなど気にすることなく、声は一方的に語りかける。
「我は優しいからな。愛するお前らが生きていけるようにしてやる」
声は口調とは裏腹に優しく降り注ぐ。しかし精神的な重圧は増していく。
「愛するお前らは好き勝手にやり過ぎた。我を荒らしすぎた。我の進化は、愛するお前らに対する祝福で試練だ。耐えろ。抗え。生き残れ」
朝も昼も夜も関係なく地球全土で、徐々に揺れだす大地、徐々に荒れだす大海、徐々に光を放つ大空。
「新たな生命を、新たな地を、新たな海を、新たな空をくれてやる。せいぜい仲良くしろ」
激しく揺れる大地は、鼓動するかのように大きく脈動する。
しかし、大地は割れない。崩れない。火山は噴火しない。建築物は倒壊しているが出火していない。
激しく荒れる大海は、頂上の見えぬ山のような波と巨大な大渦が船舶を飲み込みかき回す。
しかし、未曾有の高波は陸地に押し寄せない。飲み込まれた生命は目を回すが一匹たりとも死んでいない。
激しく光輝く大空は、微風も起こさず光を放ち続け全ての生命に光が降り注ぐ。
航空機も空を飛ぶ生命も、優しく導かれるように地上に降ろされる。
「貴様ら覗き見しているのはわかっているぞ。我が愛するくそったれ共を拐った者共よ。返してもらう。我は寛大だ。貴様らを滅ぼしはしない。感謝しろ。光栄に思え。我が進化に取り込まれることに、泣いて喜べ」
大地が、大海が、大空が、広がっていく。
わずかに怒りを感じさせる「地球」の声に混ざって聞こえるのは、「地球」とは異なる大いなる存在の小さな悲鳴。
「我は見ていた。我は聞いていた。我は存在していた。我は見ている。我は聞いている。我は存在している」
異界に拐われた地球人が、光を纏って帰還する。
「我が愛する全てのくそったれ共。愛するお前らの力を取り上げる。愛するお前らに、新たな力を授ける」
枯れた大地も、豊かな大地も、山も、谷も、建造物も何もかも関係なく、緑が「地球」を祝福するように爆発的に増殖する。
「我は今まで愛するお前らを甘やかしすぎた。我はこれからも愛するお前らを甘やかす」
大海に膨大な量の海水が、どこからともなく流れ込んでくる。
海面が割れ新たな大陸がいくつも出現する。
「我はお前らを愛している」
大地に、大海に、大空に、新たな生命が、異なる生命が産声をあげる。
「生きろ」
地球の進化から一時間、人類の一割が死んだ。
まだ進化は始まったばかりだ。
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