人生遊戯~歴代卒業生0人の学園で俺はダイスを振り続ける~
如月香
1年生編
前期
第1話 入学の尺牘
「本日より開学となる都内の私立高校である
圧倒的な施設と資金、それでいて入学にかかる諸費用や授業料は無償。それに食いついた中学生とその親……当時は世間を揺るがすほど話題になった。
それが5年前の出来事だ。
ただ、2年ほど前から妙な話が広まり始めた。
この学園は全寮制なため、生徒が自宅に帰ることはほぼなくその代わりに、学園側から保護者へと様子等が連絡されるシステムだった。
’’卒業式がない’’
考えれば、開学当初に入学した生徒は2年前から見ればちょうど卒業する頃だろう。
しかし、卒業式の案内について保護者への連絡は一切なく生徒が帰ってくることはなく、警察への捜索願、SNSでの呼びかけが頻繁になった。
そんな中でSNSでとある投稿がされた。
「失踪したんじゃなくて、何かあって殺されて、それを学園が隠蔽したんじゃね?」
当時、この投稿は不謹慎だなんだと大きく批判を浴びた。
だがしかし、時間が進むにつれてこの投稿は信憑性が高くなり、連日ニュースでも取り上げられるようになり、いつしか学生集団失踪隠蔽事件と言うようになった。
事件はその年だけでなく、次の年も起こった。それにより、火に油を注ぐように事件は日本中に広まっていった。
そんなある日、中学校から帰ると俺、
差出人は’’永戯学苑’’と記してあった。
この学園の真実について俺自身ニュースで見ることはあったがそこまで気にしていなかった。
両親が早くに亡くなり、祖父母と暮らしていた俺にとって諸学費が無償なのは非常にありがたかった。
もちろん俺はこの学園への入学を決断した。
4月7日、入学式の日、俺はこの学園へ足を踏み入れた。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。……とは言っても、君たちは新入生にして最高学年なんですがね」
最後に何か、ボソッと言っていたがあまり聞き取れなかった。
少し意味深な校長からのあいさつが終わり、入学式が終わりHRとなった。
担任が入ってくると、一人の生徒が手を挙げた。
「先生、何故2,3年生の出席はなかったのですか?普通は出席をするものではないのですか?」
確かに中学の時も、2,3年生は入学式に出席していた。
それについて、担任は口を開いた。
「あぁ、そのことについては――」
そう、担任が言いかけたとき、会話を聞いていたかのように校内放送がされた。
「1年A組の君、いい質問だね~!特別に教えてあげるよ、この学校には今、君たちしか所属していない」
人工音声のような放送がそう言い、教室が騒めいた。
その言葉に続けてさらに、
「この学校は今まで卒業生がいないんだ。みんな最後まで辿り着けなかった……。あ、ちょうどいいから今言っておくね! 君たちには今から簡単なゲームをしてもらよ!」
今何が起きているのか誰も理解できていなく、どういうことだと皆、放送に対して叫んでいる。
「みんな一度はやったことあるよね、『人生ゲーム』をさ! それを卒業までやってもらうんだよ!」
遊んでいるだけで卒業できる。その言葉に教室は歓喜した。だがそれは、長くは続かなかった。
そのまま人工音声は話を続けた。
「ルールは簡単! 1時間に1回ダイスを振って出た目だけ進む。もちろん、土日もやってもらうよ。そして進んだ先のマスに書いていることに従うだけ! 簡単でしょ? マップはこの学校全部で、マスの数は明日から3年後の3月7日の卒業式までの1065日分、つまり1065マスだよ」
「最後に注意事項だよ。みんなの教室のテレビに映したから見てね~!」
テレビに目をやると、確かに画面に映っていた。
~
・卒業まで学園の外に出てはいけないよ
・これはあくまで
・ゲームで獲得できるお金は2日に一回開くマーケットでも使えるよ
・マスの指示には必ず従うこと。(例えそれが、人殺しだとしてもね)
・指示に反した場合、どんな罰が下るかな?
・最後に、この
学園から出られない、それに加え人殺しなんて単語を見れば教室中がパニックになるのは誰もが容易に想像できた。
俺には気になる点がいくつかあった。
まず、このゲームには運営がいること。おそらくこの書き方をするということは、主催者は学園の人間ではなく、別の誰かだろう。
それとマスの指示。括弧の中に『例えそれが、人殺しだとしても……』とある。つまり、マスの指示には殺人をしろ、というようなのがあるはずだ。
また、『マスの指示に従わなければ罰が下る』とあるが、きっとこの’’罰’’というのは何かしらによって自分が殺されることだと俺は考えた。
そう考えると2年前、1年前と学園の生徒が集団で失踪したことにも合点がいく。今までの生徒は誰一人としてクリアできなく、またクリアができなかった場合も運営に
要するにこれは、単なるお遊びの人生ゲームじゃない。
「なるほどな……面白れえじゃねぇか! この命、
これは、人生を賭けた
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