いつかあなたとまた、あのはじまりの海で

青空野光

ドライブ

 真夏の訪れも待たずに、史上最高との不名誉を冠した高温が各地で観測された今年は、少しばかり特殊な年だったように思う。

 それでいて秋の彼岸が過ぎた途端、今度はコートが必要なほどに肌寒い日が続いている。

 テレビのニュースでは、異常気象という語句が流行り病のように使われていたが、近年では彼の業界がいうところの例年のほうが例外だと感じているのは、果たしてこの僕だけなのだろうか?


 全長5メートルを優に超える巨躯を誇る高級外国車に乗り込むと、大径のコンフォートタイヤが2トンを超える質量を軽々と加速させていく。

 まるで秋晴れの見本市のような今日は、ドライブをするにはまさにうってつけの日和だった。

 窓を全開にし、交通量の少ない海沿いの道路でも走ったら、ため息が出るほどに気持ちがいいこと請け合いだ。

 彼女とドライブに出掛けるのは、一体どれだけ久しぶりのことだろう。

 最後のそれがいつだったのかを思い出すことは残念ながらできなかったが、彼女を初めて助手席に乗せた日のことは、それこそ昨日のことのようによく覚えている。

 あの日も今日と同じようにとてもよく晴れ渡り、東の方角からは穏やかな風が吹いていた。

 ただ、季節はといえば今とはちょうど真逆で、沿道の桜がその蕾を一斉に咲かせ始めた、うららかな土曜の午後のことであった。

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