第18話 新田樹がいるという事。
新田樹は「ねーちゃんは根深い。流石母さんの娘だ」と言ってから、堀切拓実さんに「とりあえず関谷の心の傷は、美味しいものと、美しい景色と、レジャー施設でしか癒せないし、俺も運命共同体だから。とりあえず今晩はデミグラスソースの気分なんでハンバーグね。夏休みは2回くらい呼ぶから、アドレス交換しようよ」と言い出して堀切拓実さんに迫り、私には「関谷、ねーちゃん係任せたからな」なんて言う。
無茶苦茶な新田樹に、堀切拓実さんが「お前…怖い奴」と言いながらアドレス交換を済ませると、「今日これねー。この近くのハンバーグが自慢のファミレスー」と事前に調べていたものを送りつけて「よろしくお義理兄さん」と言ってしまう。
「関谷、長居しすぎたからお暇しよう」
「うん。今日は急に来てすみませんでした。お話を聞かせてくれてありがとうございました」
「ううん。会えて良かった。お兄さんの事も謝れて良かったわ」
私は首を横に振って「確かに大人になったお兄ちゃんに会いたかったし、お兄ちゃんと大人になりたかったけど、でもお兄ちゃんは後悔してないし、今も姫宮明日香さんと楽しく過ごしています。だからいいんです」と言った。
半分は背伸びしている。
でも、どこか半分ではお兄ちゃんらしい遺書を見て、新田樹に言われるままにお兄ちゃんと話したから気が済んだ。
勿論、今だけでこれから怒りに囚われるかもしれない。
だからこそ私は堀切拓実さんに「混浴の奴、水着で入る奴連れて行ってよ」と言っている新田樹を見る。
「何?どうした関谷?」
「新田、私が怒りと悲しみに囚われたら、シェアしてくれるんだよね?」
「勿論だぜ!心のケアは任せろ!金銭&物理面は義理兄さんとねーちゃんに任せる!美味いもの食わしてもらって綺麗な景色を見てレジャー施設で癒されるぞ!」
私はそれを見て、姫宮明日香さんのお母さんに、「悲しい時なんかは、シェアしてくれる人がいるから割り切ります」と言うと、「素敵な事ね。明日香にもそう言える人がいれば良かったのにね」と言ってくれた。
とりあえずハンバーグは美味しかった。
蒲生葉子さんは「いっくん…、なんでも簡単に片付けようとしちゃダメなのよ?」と注意したが、新田樹は「ねーちゃん、ハンバーグは美味い?デミグラスソースは美味い?」と質問で返して、蒲生葉子さんがひと口食べて「美味しいわよ」と答えるタイミングで「美味しい、美味しくない、簡単だよ?それでいいんだって」と笑い飛ばしてしまう。
「それに、ねーちゃんは姫宮明日香さんと関谷優斗さんに対して、美味しいものを食べてごめんなさいなんて思うだろうけど違うって、普通にこののハンバーグが美味しいよって報告してみなよ。よくも美味しいものを食べてなんて言わないよ」
何も言い返せない蒲生葉子さんをスルーして、新田樹は私には「お兄さんならねーちゃんが報告したらなんて言う?」と聞き、堀切拓実さんには「姫宮明日香さんならなんて言う?」と聞く。
「お兄ちゃん?私にじゃなく蒲生さんに?んー…『良かったよ。俺たちの事を気にしてくれてありがとう。でも蒲生さんは生きてるんだから、美味しいものを沢山食べて。それでまた教えてよ』とか、言いそう」
「ふむふむ。義理兄さんは?」
「あ?姫宮かぁ…、蒲生より優斗に言うイメージが強いんだけどな。『わぁ!優斗、美味しいって!良かったよね!でも美味しいんだったら優斗はお預けだね。私と蒲生さんは仲良く食べるから、優斗は外で寂しくコンビニのハンバーグね』なんて甘えて、優斗は『えぇ!?俺も皆と食べたいよ。いいよね?』なんて言うと思うな。姫宮は『仕方ない。優斗もいいよ』って言って『ありがとう姫宮さん』なんて言うな。俺や蒲生は呆れ顔でそれを見て笑っちゃうな」
ようやく蒲生葉子さんには言葉が届いたのだろう。
また涙を流して「本当?姫宮さん?関谷君?」と呟く。
「本当だよ。ありがとう蒲生さん。また美味しい報告してよ」
「ねー。楽しみに待ってるよ!」
私と堀切拓実さんが言葉を真似ると蒲生葉子さんはうんうんと頷いて泣いていた。
「蒲生さん、うちの妹がごめんね。これからもよろしくね」
「堀切君と付き合っちゃいなよ」
ん?
それは新田樹で、これまた芸が細かいと言うか、声真似はあんまりだが話し方はよく似ている。
「うん。任せてね。堀切君には悪いと思ってたけど2人が言うなら…え?」
「にひひ。言質ゲーット」
顔を赤くした蒲生葉子さんが「いっくん!」と怒ると、新田樹は「まあいいじゃん」と言って、ペロリとハンバーグを食べると「じゃあ今度は温泉ね。よろしくー」と言って終わらせてしまう。
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