帰還

勝利だギューちゃん

第1話

父が他界してから、11年が経つ。

母はしぶとく生きている。

しぶとくというのは、元気ではないため。


介護が必要な状態。


夫婦仲は険悪とまではいかないが、かなり悪く喧嘩がたえなかった。

母はその怒りの矛先を俺に向けて、毎日いびってきた。

身が持たん。


それが世間にも浸透して、世間様は私には高圧的でつぶそうとしてくる。


それは、今も続いている。


間違いなく、俺のほうが母よりも先に逝くな。

まあ、そうなるのが母の思惑通りだが・・・


で、先日55回目の結婚記念日を迎えた。

いわゆるエメラルド婚。


「宇宙にきらめくエメラルド~」


『ただいま』

「父さん、どうした」

『結婚記念日だから、帰ってきた』

「母さんを祝いにか?」

『まさか、母さんに言いたいことがあってな』

「そっか・・・」


肉体は死んでも、魂は死なない。

なので、たまに会いに来る。

霊が見えるというのも考え物だ。


母には見えないらしいが・・・


「で、どうするんだ?」

『あの世にある、特効薬を持ってきた』

「それはなんだ?」

『寿命を長くするためだ』

「母さんを生かすのか」


そりゃあ会いたくないよな」


『いや、お前のだ』

「俺の?」

『お前はまだ、こっちに来るな。やり残したことがあるだろう」

『ああ」


薬を渡される。


『それを飲め、後10年は持つ』

10年・・・

64歳か。


『不満か?』

「いや充分だ」


そう、後10年。

それだけの間にやりつくそう。


「かあさんには会わないのか?」

『かあさんが嫌がっているだろう。あの世から俺の悪口を聞いている』


確かにほざいてるな。


『まあ、今は向こうでゴルフをしたり、絵を描いて楽しんでいる。

友達も、大在来たしな』


向こうでは楽しくいやってそうだ。


「かあさんは、どのくらい生きる」

『まだ、会いたくないから、30年は迎えに来ん』」


さてと、少しでも、やりつくしますか。

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帰還 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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