05話 反乱軍アジト殲滅作戦 前


 クラウンの眷属は、変身後ならモニターを使い自分の意志で移動できる。

 ずるり、とモニターから這い出れば、展開が終わった兵士たちの戦列、その後ろだった。

 高度なサイバネ技術で作られた戦闘スーツに身を包んだ兵士達の横に、ほぼ同数の機械兵士が共に並んでいた。ファントムから逃げる途中、リツが起動させようとしたものと同型だ。


 ここらは工業区画。通路や部屋の様子は洗練されたデザインの都市地上部と異なり、ゴツゴツした無骨なもの。装飾や彩色も最低限で、オレンジ色のライトに照らされ赤銅一色である。


「戦闘魔導士官第七組所属、ピースメーカーです。状況はいかがでしょうか」

「はっ! 今しがた部隊展開が完了しました。指揮官の号令でいつでも戦闘開始できます」


 周りより階級章に星が一つ多い男に敬礼すれば、同じく敬礼で返される。

 つい先日まで国軍学校の生徒だったリツは、上官であった立場の人間から敬語を使われたことに居心地の悪さを感じたが、どうにかなるものではない。努めてその感覚を無視する。


 一方シアンは気負うこともなく、近くの兵士に少しでも更新されたマップデータがないか聞いていた。かと思えば、ホログラムの画面端末を受け取ってリツの元までやってくる。


「テレパシーの確認しておこうよ。分断された時とか便利でしょ」

「……そうですね」


 了承し、一言二言を思念で交わす。これもクラウンの眷属の能力の一つ。バディと定められた二人の間で、口を使わす言葉をやり取りできる。近くにいないと通じないが、音を発さずに意思疎通ができるというメリットは大きい。


 テレパシーが通じると分かったシアンは、虫食いになった斑の立体地図を様々な角度から見回している。かと思えば、「戦力配置ってどうなってるの?」とまた別の兵士に声をかけた。


 口調から感じる印象通り、シアンは奔放な性格のようだった。

 空を見たい、その理由はなぜか。先の言葉を思い出す。

 自由。リツの最も嫌う言葉だ。


 聞いた瞬間、リツの中の炎が爆ぜた。

 射殺すような燃える目でシアンを睨み……リツは言葉を飲み込んだ。


 作戦開始まで幾許も無かったのも理由の一つだ。

 だがそれよりも、口を開けば穏便な返答ができるとは思えなかったからだ。

 無論、自由という一単語、それを口にしたただそれだけでシアンのことを反乱軍の同類と烙印を押したりはしない。


 嫌う理由となったのは、反乱軍の前身たる革命軍。無論反乱軍も心底嫌いだが……この二者、自由を標榜する連中が意味を違えていることは理解している。あれは自由ではなく、無法だ。

 だから、語る者全てがゴミでは無いことも、頭では理解している。

 それでも、胸の内に燻り続ける隔意は消すことができなかった。


「ね、ピスメ、こっちの通路から回り込んでこのあたりまで行こうよ」

「は? ……なぜです? あと略さないでください」


 リツは苛立ちに眉を歪めたが、シアンの差し出したホログラムを素直に受け取った。いくつかの範囲が最新のものに更新された、ここら一帯の地図データ。反乱軍のアジトの推定範囲が色付けされているが、その大半は残念ながら地図データが存在しない部分だった。

 シアンが示したのは消失部分のギリギリ外、現在は使われていない施設跡。


「……ここですか?」

「うん。ほら、よく見てよ。このデータ消失部分に気を取られがちだけど、そこからちょっと動かしたこれ。この空白部分ちょっと広くない? 通路があってもおかしくないでしょ」

「……そうですね。確かに」


 三次元的に入り組んだ構造の中、確かにそこには隙間があった。ディストピアの地下構造、その壁の向こうは土ではなく空間である。なのにその間が分厚いということは、何かがあると言っているのと同じだ。


「だからさ、多分この辺の壁壊せば通路に入り込めると思うんだよね。地形把握も兼ねて、何かあった時に即応しやすいあーしら魔法少女がこっちに行くのがいいかなって」


 万が一の想定外で魔法少女を失う訳にはいかないという考えもあるが、魔法少女が太刀打ちできない存在がいたら迷わず退却を選ぶことになるだろう。不安箇所に強力な駒を置くという考えは何も間違ってはいない。


 リツの隔意はシアンの提案に同意するのを躊躇わせたが、個人の感情で合理的な判断を失うことがあってはならない。冷静に俯瞰して判断すべきだ。


 その後、作戦の統制を取る現場指揮官に連絡し、配置変更の許可を得た二人は、シアンの指し示した地点に向かった。


 戦乙女のような魔法少女は、「この辺かな?」と壁を見つめながら、魔法で武器を作り出す。


「“スカイハルバード空観斧槍”」


 翼の意匠が美しい、空色に光るハルバードだ。身の丈ほどもあるそれをくるりと回して調子を確認し、石突をカン、と地面に突き立てる。


「よし、初仕事頑張ろうか、ピスメ」

「略さないでください。……そちらこそヘマしないでくださいよ」


 自由を口にしたシアンへの苛立ちと、それに削がれてなお残る高揚を努めて抑え込む。

 余計な感情を表に出すな。冷静に、冷静に役目を果たせ。

 イヤーカフ型デバイスの画面が映し出す、作戦開始カウントダウンが秒読みを開始した。

 リツも魔法を発動させ、赤紫の模様が走る黒いアサルトライフルを作り出す。


「大丈夫。任せてよ。絶望郷のため、あーしの夢のため。全力でやるから」


 奔放な雰囲気が鳴りを潜め、シアンが浮かべるのは、酷薄な機械じみた表情。

 背後に備える兵士たちに目配せし――。


「「絶望郷に希望あれ」」


 作戦開始。


 シアンが縦横に斧槍を振るう。

 バラバラと崩れ落ちる壁の向こうには、彼女の目論見通り通路があった。


「やっぱりね。行こう」


 小さく頷くと、シアンは通路の奥へと駆けていく。リツは突撃銃を手に続き、後詰の兵士たちが機械兵士を伴ってさらに続く。


「……なっ!? ぐあっ!」


 進路上で油断していた反乱軍の男をシアンのハルバードが打ち据え、昏倒させる。刃の側面を使って殺さないようにしたようだが、殴られた男は吹き飛んだ。手加減はしていないらしい。

 二人は倒れた男に見向きもせず、アジトを全速で駆け抜ける。


 奥へ、奥へ。

 とうに後詰の兵士たちを置き去っているが、今求められているのは速さだ。自分達魔法少女を除いても、武装も練度も数もこちらが上。完全に制圧できるまで時間の問題だろうが、長引かせれば余計な手間やコストが増える。


 通路を歩く反乱軍は、目に付き次第片端から始末していく。

 部屋があれば、その入り口をハルバードで切り裂き瓦礫を吹き飛ばして突入。

 リツも必要があれば麻痺弾を撃つつもりではいたが、数人程度、しかも非戦闘員が相手ではシアン一人でも過剰戦力だった。慣れているのか、あまりにも迷いなく突き進んでいく。


 しばらくそんな蹂躙が続いたが、ようやく敵襲の報が広がったらしい。徐々に反乱軍が武装し始めた。が、訓練を積み魔法少女の力をも得たリツからすれば、射撃訓練と変わらない。


「拙いですね。さすが落伍者」


 嘲りを交え、一言。

 変身したことによりさらに高まった反射神経は、電光石火の如く体へ指令を下す。

 キャットウォークの下から、巨大なタンクの向こうから。レジスタンスが銃を構えて体を出した瞬間、先にリツが放った弾丸が全身を麻痺させる。

 痺れた兵士の手を離れ、ガシャン、と銃が地面に転がった。絶望郷の兵士に標準配備されているタイプのものもあれば、ジャンク品から作ったような粗いものまで様々だった。


「……どこから確保したのやら」


 言いつつ睨むのは、アジトの設備。

 廃工場を改造したらしきこの拠点は、どうも武器を作るのに利用されていたようだ。バラされた部品が作業台の上に散らばっている箇所もあれば、稼働しっぱなしの機械もある。

 

「まあその辺の調査は制圧してからでいいじゃん? 隠れてた奴から不意打ちされたらめんどくさいし。邪魔が入らなくなってから専門の人達に任せたほうが効率的でしょ」


 効率的、か。

 バディとなった魔法少女は、やたらと効率にこだわるタチらしく、度々それを口にする。


「そうですね。行きましょう。――ポイントF制圧完了。後詰をよろしくお願いします」


 指揮官に一報を入れ、二人は再び駆け出す。


「……小部屋が多くて面倒だね~……」

「構造から察するに、義肢やアンドロイド部品のカスタマイズ店などが集まっていたのでしょうね。かなり古めのもののようですが」


 持ち主は死んだか、どこかに移ったかしたのだろう。この絶望郷で商店を個人で経営することを認められた人間は数少ない。その多くが、国属の技師となり働いている。


 階段を登り、次の区画へ。いくらか進んだ通路の奥には即席のバリケードが築かれていた。

 先より反乱軍が纏まってきている。だがやはり、正面突破することは容易だ。


 シアンも同じ結論に達したらしい。角から飛び出した瞬間、長い通路の奥にある防壁目掛けハルバードを投擲。リツはその背後から麻痺弾を放ち援護する。

 回転するハルバードが直撃し、バリケードごと吹き飛ぶ造反者達。無事だった者も、投擲と同時に突貫したシアンに殴られ、昏倒していく。苦し紛れに投げられたグレネードは、シアンがバットのように斧槍を振るって部屋のどこかへ吹き飛ばした。


 さらに奥へ駆けていくシアンを追い、リツも走り出す。

 このまま次に――。

 そう思った瞬間、背後でギシ、と異音を立てる天井。


 前方に飛び出し振り向いた瞬間、金属構造が爆発。ぶち破って何かが降りてくる。


「クソが……よくもやってくれたな」


 赤熱する瓦礫の中起き上がるシルエットは、人の形をしていた。

 熱を帯びた拳からは、竜に似た爪が伸びる。明るい赤と茶の衣装に、炎のように波打つ朱色の髪がチリチリと火の粉を発していた。嗜虐を是とする風体の顔立ちに青筋を立て、射殺すような眼光をこちらに向けてくる。

 その頭上には、リツを攫おうと襲ってきた薄紫の魔法少女、ファントムと同じ茨の光輪。


 敵手の姿が目に写った瞬間、ふと頭に一つの名前が浮かぶ。

 これも、魔法少女の能力の一つ。オリジナル、ファミリア問わず全ての魔法少女が持つ感応能力。司る属性、概念などが発するエネルギーを読み取り、それが示す名前を教えてくれる。


 ディバイン☆ウィルム。

 絶望郷に属さない、反乱軍の魔法少女。


 ディバイン――神聖、と名を関す通り、頭の上に浮かぶ茨の光輪は天使を思い起こさせる。

 ウィルムという言葉は、腕や足のない竜の一種を指す言葉だったはずだ。転じて、亜竜とでも呼ぶべきか。

 なるほど大した名前だ。だがその名のモチーフが何だろうと関係ない。

 リツは何を当然と、煽るように口を開く。


「よくも、ですか。兵器密造、内乱罪に超越技術不許可使用。拘束には十分な理由です」

「ハッ、腐れ道化師の言うがまま犬になるのは楽しいか? あぁ? ……名前からしてそのまんまじゃねぇか。ピースメーカー?」


 同じくこちらの名を読み取ったウィルムが粗暴な挑発をしてくるが、リツは鼻で笑い飛ばす。


「その道化師の功績、恩恵すら忘れた犬以下の畜生はよく吠えますね。弱いからでしょうか」


 返答は赤熱する爪の一撃だった。

 即座迎撃に移るが、しかしそれは翼のハルバードに止められる。割り込んだのはシアンだ。


「……は?」


 ウィルムが驚愕に顔を歪めた。

 固まった亜竜の魔法少女に向け引き金を引いたが、我に返ったウィルムは飛び退いて躱す。


「テメェ……シアンだな!? 何でそっち側にいやがる!!」


 憤怒の形相で叫ぶウィルム。

 対照的に、シアンの態度は何も特別なことはないと言わんばかりの自然体だ。


「流石にバレるか。そっち側も何も、そんなこと考えなくてもわかるでしょ」

「……テメェがここを売ったのか! 裏切り者がぁ!!」


 ……売った? まさか……。

 考える間もなく、振るわれた爪から炎が迸る。

 通路を覆い尽くすほどの爆炎が広がり、二人は避けるために大きく飛び退いた。


『ピスメ、あーしが抑えとくよ。他の奴ら捕縛しに行って。中枢部なら幹部いるかもだし』

『……嫌がらせですか。どう転んでも理になると』


 口を閉じたままテレパシーで会話する。

 ウィルムからすれば、シアン一人に粘られている間に仲間が捕縛される状況。無理矢理戦乙女を突破しようにも必ず隙が生まれる。


 なるほど揺さぶりとしてよい手だろう。シアンが撃破されなければだが、本人ができると言うなら任せるまでだ。


『後で色々聞かせてもらいますよ』


 シアンはウィルムに相対したまま、緩く手を振った。


 裏切り者ということは、元々反乱軍に所属していたのか。

 なぜ魔法少女となったのか。

 問い詰めたいことは無数にあったが、リツはそれを全て棚上げすることにした。そも、クラウンが眷属にしたのだ。叛意があると見れば眷属になどしないはず。まずは任務遂行が第一。


 全速で通路を走り、シアンが粉砕したバリケードを越えてさらに奥へ。

 階段を飛び降り、通路を曲がり、なお進む。


「逃げろ!!」

「魔法少女だ!!」

「ウィルムは何してんだ!?」

「突破されたのか!?」


 逃げる反乱軍が這々の体で扉の向こうに駆け込んでいく。ガシュ、と通路の奥の扉が閉まるが、リツは構わず突き進む。


 ――“兵器創造マギファクチュア・サブマシンガンブレード”


 アサルトライフルが紅紫の粒子となって消えていく。

 代わりに虚空に現れた魔法陣から引き抜いたのは、二丁のサブマシンガン。銃口下部から、刃渡り四十センチほどのレーザーブレードが展開され、ヴンと空気を震わせる。


 これがリツの、ディストピア☆ピースメーカーの魔法。

 望む兵器を作り上げる。それだけのシンプルな能力。


 ロックされた扉の蝶番と鍵部分を切り裂き、大きな鉄板となったそれを蹴破って突入する。


(ここは広いですね……元は何の施設だったのやら)


 高い天井付近に、重量物運搬用のクレーンがいくらかあるのが見えた。製造機械が等間隔で並んでおり、特に巨大なそれが目を引く。機械のせいで物陰が多く、潜伏箇所が多い。構造を支えるため、中央付近に数本の柱がそびえ立つ。


 状況把握は一瞬。

 足を止めず、サブマシンガンの弾をバラ撒くように撃ち続ける。

 知らずの内に、押さえつけた喜悦が湧き上がり口角が上がっていく。


「大人しく、お縄に付いてくださいねッ!」


 殺してしまうより、情報を得られる可能性がある方が良い。

 余裕のある今、装填されているのは麻痺弾を模した魔法の弾丸。


 銃弾の嵐に成すすべなく、ドサドサと造反者達が倒れていく。


 遮蔽に身を隠していた者が引き金を引くのが視界の端に映るが、対処するまでもない。


 リツは魔法少女となっている。ちょっとやそっとの銃弾は魔法少女全てが有する能力、魔法防壁により防がれる。加えて、変身した魔法少女の肉体は常人のそれと比べて遥かに頑強だ。


 ――常であればそうだった。

 だが、飛んできたのは一抱えほどもある火球だった。


(は!?)


 驚愕したのも一瞬。

 全力で右方に走れば、先程まで立っていた場所が爆炎に飲まれた。着弾点が赤熱し、金属の床が溶けてすらいる。ファミリア魔法少女とて直撃を貰えば相当な痛手となるだろう。


(この銃を作っていたと……! プロテクター越しでも体が溶け落ちるんじゃないですか!? なんてものを!)


 あの火球銃を持つレジスタンス共はそれなりに戦い慣れているのか、一発撃った後すぐに身を隠した。虚を突かれ反撃の隙を見逃した。チ、と舌打ち一つを捨て、それなら順に仕留めるまでと床を蹴る。


「くそ、逃げろ!」

「速く出せ!!」


 下層へ降りるリフトに詰めかける人々。

 それを守るよう銃を構えるレジスタンス達。


 非戦闘員は後回し。

 先に鎮圧する!

 飛び出すと同時姿勢を下げ、火球の下をくぐり抜ける。背中を熱が撫でていく。

 そして遮蔽となる作業台を宙返りの要領で飛び越し、タタタ、と顔面に麻痺弾を撃ち込む。


「がびゃっ……!」


 引き攣った声を上げ、崩れ落ちる男。次。


 リツが得意とする超機動による攪乱戦法は、変身し強化された身体能力によりさらに磨きがかかっていた。凄まじい速度で動き回り、照準を定めさせない。

 滅茶苦茶な動きの中でも、確実に銃弾を当てられる腕があるからこそできる無二の戦法。


 機械や台、材料コンテナの間を縫い、辻斬りのように反乱軍を行動不能にしていく。

 途中、飛び上がったリツを苦し紛れに狙っていくらか発射されたが、その全てはあらぬ方向に飛んで行った。威力は凄まじいが、弾速が遅ければリツには当たらない。


 非殺傷モードにしたレーザーブレードで最後の一人を切り裂く。

 痙攣しながら崩れ落ちる男が手にしていたのは、先に見たようなジャンク銃だった。一見して、あんな馬鹿げた業火を生み出せるような兵器には見えない。

 恐らくは……マスコットによる超技術の産物。


 リツは両手に持つサブマシンガンを構え直し、昇降リフトに向かって駆け出す。


 火球銃のせいで手間取った。リフトの乗降口は無骨な扉に塞がれてしまっていた。しかし特別な避難用ではなく、荷物の運搬用と思しき旧型の昇降装置だ。この程度すぐに突破できる。


 力ずくで開けるための武器を作り出そうとしたが、リツはとっさに足を止める。

 扉への進路を塞ぐように、上から何かがゴトゴトと落ちてきた。


 カシャカシャと機械音を鳴らしながら展開したそれは、ボールから蜘蛛のような足を生やし、カマキリのように深緑のブレードを構える謎の兵器だった。廃材で作られているらしく、それぞれ装甲がツギハギだったり、足の長さや細部の形が微妙に違う。

 ざっと三十。赤いアイカメラが無機質にリツを認識し、虫じみた機動で襲いかかってくる。


(面倒な……!)


 ブレードを躱し、弾丸をお見舞い。既に非殺傷モードは解除しているが、行動不能に追い込むのに数発は必要だった。


『こちらピースメーカー! マスコット技術の産物と思しき兵器を確認! 加えて――』


 機械蜘蛛。火球銃。地下へ続くリフト。司令部へと報告を飛ばし、戦い続ける。

 厄介な蜘蛛だ。死角に回り込むような、嫌な動きをしてくる。無理にリフトに乗り込んでは、狭い空間でロクな回避行動も取れずにズタズタにされかねない。


「っつう……!」


 ズパッと腕を通り抜ける、鎌のような刃。

 傷の痛みよりも、斬られた事実に眉をしかめる。


(障壁が突破された……!? いや、これは……!)


 魔法障壁は攻撃の威力を減衰し、軽減する。その過程で無力化できるものも多いが、この兵器はそれを貫通してきた。

 障壁自体にも耐久限界があるが、それが訪れたわけではない。

 魔法障壁を貫通することに特化した兵器。後ろ寒いものが背筋を伝う。

 なるべく早く仕留めなければ……!

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