第80話 GW報告会 1/3

 ゴールデンウィーク最終日は毎年、光希と幸成と俺で報告会だ。

 毎年大抵一緒に遊んでいるから、報告も何もなくてただ喋るだけなんだけど、今年ばかりはいつもと違う。

 だから俺は少しだけ、緊張していた。


「じゃ、こうちゃんもゆっきーも、ごゆっくり!」


 今日も俺たち3人分の飲み物とお菓子を部屋へと持ってきてくれた千恵が、にっこりと笑って部屋を出て行く。


「ほんと、出来た妹だよな、千恵ちゃんは。輝良にはもったいないくらいだ」

「なんだそれ」

「ほんと、それな。なんでこの兄にしてあの妹なんだろうな?」

「おいっ! なんだよ2人ともっ!」


 千恵が褒められるのは、素直に嬉しい。

 だけど、何故に俺が貶められなければならないのか。

 ちょっと納得ができない。


「で、幸成は先輩とどこ行ったんだ?」

「ん? あぁ、書道展に、な」

「真面目か」

「あぁ。福ノ井ふくのい先輩はとても真面目な人なんだ。いつだって書道と真摯に向き合っている。あぁ、真面目なのは書道だけじゃないけどな」

「「はぁ……」」


 からかったはずの光希の言葉を、幸成は至極満足そうに受け取った。

 そしてドヤ顔で俺達を見る。


「前から行きたかった書道展だったそうだ。そこへ、先輩の方から俺を誘ってくれた。俺も書道部だし、すごく有意義な時間を過ごせたよ。それに、ずっと先輩と2人の時間を過ごすことができたからな。とてもいいゴールデンウィークだった」


 俺には書道の事はさっぱり分からないから、何がどう有意義なのかも分からないけど、幸成が嬉しそうに話す姿を見るのはなんだか嬉しい。

 それに、幸成は初めて先輩の名前を口にした。

 福ノ井先輩、って。

 絶対に先輩との恋を実らせるという、決意があるからだろうと思う。

 そんな幸成を、俺は心から応援したいと思った。


「で? 光希と輝良はどうだったんだ? 行ったんだろ? 台湾グルメイベント」

「「うん、まぁ」」


 光希と俺の返事が重なる。


 あれ?

 光希は灯ちゃんと一緒だったはず。そんで、明恵によると、2人はいわゆるらしい。

 なのにこの浮かない返事は、なんでだ?

 灯ちゃんとのデート、楽しくなかったんだろうか?


「ん? お前ら一緒に行ったんじゃないのか?」


 事情を知らない幸成が、俺達の態度に首を傾げる。


「一緒……じゃない。別行動だった。な、輝良」

「つーか、当日いきなり別行動にしようって言ってきたの、光希じゃないか」

「仕方ないだろ? 吉野がそうしろって言うんだから!」

「えっ⁉」


 驚く俺の隣で、幸成は小さく笑って言った。


「やっぱりさすがだな、吉野は」


 え? どゆこと?

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