第9話
サポーターのボルテージが上がるにつれて府中の攻撃が活発になった。
サイドへと繋ぎ、クロスボールをペナルティエリア内に上げてくる。そのボールに対してアルケミストのDF伊達がヘディングでクリアしたが、そのルーズボールを府中に拾われハイボールを入れてくる。府中の戦略は徹底したサイドからのクロスボールを入れてくるやり方のようだ。
10分ほど劣勢の状態が続き、しのぐアルケミスト、攻める府中の展開で前半の終盤に入った。
ボールがタッチラインを出て府中のボールになると、「伊達、武田、鍋島、大内!!ラインを上げろ!このままでは永遠とクロスを食らうぞ」。GKの川田さんが雷鳴かと思えるくらいの声でディフェンス陣に檄を飛ばす。
この檄を気にアルケミストのディフェンスラインが先ほどより少し高く取るようになった。それにより、相手選手へのプレッシャーかけられるようになったため、マイボールになるケースが増えた。
状況が少し好転したところで前半終了の笛がピッチにとどろいた。
控え選手はハーフタイムになると、アップを始める。その準備のために桜井がピッチに入ると、口論かと思えるようなテンションで議論している川田さんと、伊達、武田とすれ違った。
あとから来たゴールキーパーコーチは、アップのシュート練習で使用するボールを抱えながら「川田をよく見とけよ」と言いながら肩をぽんと叩いてから持っているボールを地面に置いた。
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