君といた夏を忘れないように

@yuriarare

第1話 いつもの君

今日も二人でここを歩いているはずだった。なのに、君は突如姿を消した。なんの前触れもなく。今はあかりの声はなく、風の音だけが耳をかすめる。そんな重い気持ちを引きずったまま僕は席につく。

「突然ですが一ノ瀬さんは転校することになりました」クラスのみんながざわつき始める。幼稚園から中二の今まで一緒だったあかりが転校するなんて。そんな事を考えてる僕に、隣の席の幼馴染の沙奈(さな)が話しかけてきた。「今すっごい顔暗いけど大丈夫?」

「沙奈は悲しくないの?」 「悲しいけど分かりきってたことじゃん」 「なんで沙奈はしってんの?」僕は思わず声に出してしまった。「あかりから聞いてなかったの?」僕はその瞬間なぜあかりは沙奈にだけ言ったんだろう。僕の頭はそれでいっぱいだった。そんなとき先生の声が教室に響いた。「気を取り直して、今から美術の授業を始めまーす」美術は僕の好きな科目だ。でも今朝のことがあったせいでなんにも頭に入ってこない。僕はずっと心のどこかにモヤモヤを抱えていた。そんな調子のまま一年が経ちもう卒業だ。あかりは笑顔で卒業を迎えられているのだろうか。

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