下の心

つかさ

第1話

いつまで待てばいいの?

暗くてせまい部屋の中

心地悪そうに軋む音

気づいていたけど


明るくひろい世間では

大きな声では流石に

言えないけど

気づいてるんでしょ?


今じゃないって それ口癖

やめた方がいいよ

私以外じゃきっと無理だよ


来なかったいつかを

いつも繊細に思い描いて

色をつけて大事にしまっておいてた

もうほとんど色褪せてしまったけれど

君の見える世界に 私は最初から


ずっと気づいていたよ

ぴったり形が噛み合わないことを

気づかれないようにいつも

上からそっと撫でるだけ


優しくしてって言わなかったのは

わざとらしいのも

それが優しさじゃないことも

全部知っていたから


だけどね フィルムが一つ

光が包み込む 惰性と温もり 

優しさに似たものがあった

色褪せてしまっても

現像なんかされてなくても


気づいていないでしょ 

知ってる だから言わないよ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

下の心 つかさ @tsuki_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ