泡沫

泡沫①

 暖炉の中でぱちぱちと焚き木がはぜる音が聞こえる。


「いいかい。これは昔々のお話だよ」


 美しい金色の髪を持つ女性が、彼女によく似ているが、茶色の髪の毛を持つ少女に言い聞かせるようにそう囁く。


「どれくらい昔?」


 少女が無邪気に笑いながらそう尋ねると、女性は少し困ったような笑みを浮かべて「お母さんが生まれるよりも、お祖母ちゃんが生まれるよりも、もっともっと昔のお話だよ」と少女の頭を撫でながら、優しい声音で答えた。


「えーじゃあ、あたしが知らないのは当たり前だよぉ」


 女性は愛おしそうに彼女の頭を一撫ですると、詠うように古い物語を口ずさみ始める。


「遠い遠い昔。海には独りぼっちの人魚姫がいました。けれど、彼女にはたった一人だけ、心を許しているモノがいたのです。それは彼女にとって――

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