兼六園

 車を借りて兼六園に向かう。兼六園周辺は駐車場が山ほどあるが、近くの駐車場はかなり埋まっている印象だ。

 少し離れた立体駐車場に車を止めて見に行く。


 傘を差したり差さなかったりのまばらな雨だが、観光客の方も以前よりまばら。

 それもそのはず、茶屋が10軒弱あるのでそこに吸われていたのではないだろう。


 せっかくの庭園が雨模様なのは残念と思うかもしれないが、それは誤りである。


 雨には雨の風情がある。良い庭園というものは雨の日に別の味わいを提供してくれるものだ。これは写真に写らない。

 気温、湿度、匂い、傘を打つ雨音、梢から滴る雫。これらもまた庭園を形成する要素であり、そこに自分が身を置くことで全容を知ることができる。


 庭園は総合芸術である。オペラの宣材写真を見て、オペラを知った気になる者はいない。

 雨が嫌いでないのなら、雨の兼六園も見に行った方がいい。晴れの日に無いものがそこにある。


 しかし、寒い。これは動かしがたい事実だ。我々は、結局ほかの観光客同様に茶屋に吸い込まれていく。

 抹茶とぜんざいを頼んでみた。可もなく不可もないが、歩き疲れた体にはこういうのがいいのだ。


 しかし、一番おいしかったのは、無料で提供された梅の味がする玄米茶。ほとんどお茶漬けのあの味。これが甘味と非常に合うので思わず買ってしまった。

 まことに商売上手である。

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