第113話 船旅
クレア王女の捜索依頼を受けた翌日、ミズトはレガントリア帝国へ向かうため船に乗り込もうとしていた。
「ミズト、これが港町エルポートへ向かう船だ」
王都ルディナリアに寄港している大きな船を、エドガーが指差した。
それは王都とエシュロキアを結ぶ定期船に比べると二回り以上は大きく、長期の船旅を前提としている造りになっていた。
人だけではなく、様々な大きな荷も運び込まれている様子が見え、移動手段に加え貿易にも一役買っているのがミズトにも分かった。
(なんでこいつも来るんだ? 王国騎士が行ったら大問題になるんじゃなかったのか?)
ミズトはエドガーを見ずに頭の中で呟いた。
【一人ぐらいは大丈夫だと判断されたようです】
(だとしても、別行動で良くないか?)
【やはりミズトさんでも、行動を共にするならセシルさんのような美人の方が良いのですね】
(そういう話をしてないだろ……)
「エドガーさん、クレアさんも同じようにこの船で港町エルポートへ渡ったのでしょうか?」
ミズトは隣のエドガーに尋ねた。
「ああ、親善訪問と言っても非公式だからな。本来なら王家所有の船で直接帝都オルフェニアへ渡るのだが、今回は身分を隠して庶民に混じり向かわれた」
エドガーによると、クレア王女は少数の侍女と護衛を伴い、定期船で港町エルポートへ渡り、その後は馬車で帝都オルフェニアへ向けて出発したところまで確認されているようだった。
しかし、王都オルフェニアに到着した情報は無く、一行からの連絡も途絶えたというのだ。
ミズトとエドガーは、まずクレア王女たちの足取りを同じように辿り、手掛かりを見つけなければならなかった。
「なるほど、とりあえず情報集めですね。連絡がつかないだけで、無事に帝都へ着いているといいですね」
「ああ……そうだな……」
(…………)
クレア王女の身を案じているエドガーに対し、ミズトは気休めにもならない言葉をかけてしまい、少し後悔した。
*
港町エルポートまでは、船で二週間ほどかかった。
その間テレビもインターネットもなく、船内に娯楽施設もない船旅は、日本人のミズトにとって退屈そのものだった。
毎日、甲板に出ては海の景色を眺め、暇つぶしにモンスターでも襲ってこないかと周囲を見回してみても、察知できる気配は遥か遠く。
これほど長い期間、何もせずに過ごすという苦行は人生初めてだった。
途中、イベントクエストの報酬を思い出しガチャ券を使ってみたことが、唯一やったことだった。
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ガチャ券×1を使用しました。
クラン名変更券を手に入れました。
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(…………なるほど、こういうのが当たるのか)
試しに一枚使うと、名前で何に使うか分かるアイテムをミズトは入手した。
【イベントクエストの報酬は、比較的
(ふうん。俺には必要なさそうだが、クランとかやってる奴らにはガチャは楽しそうだな)
ミズトはもう一枚ガチャ券を使用した。
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ガチャ券×1を使用しました。
猫の着ぐるみ(白)を手に入れました。
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(…………)
ミズトは床に現れた猫の着ぐるみを見下ろした。
街で風船でも配っていそうな、名前の通り真っ白な猫の着ぐるみだ。
(何に使うんだ、これ……? ゆるキャラみたいなもんか?)
【おめでとうございます。着ぐるみは当たりアイテムの一つです。このアイテムは所持している防具の性能をコピーし、同性能の防具として装備することが可能です】
(ん~、例えば最強の防具を手に入れたら、それをコピーすると最強の防具が二つになるってことかね。ゲームなら良いアイテムだけど、現実だと見た目がなあ……)
ミズトは残ったガチャ券八枚をまとめて使用した。
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ガチャ券×8を使用しました。
髪色変更券を手に入れました。
パンダの着ぐるみ(桃色)を手に入れました。
ピコピコハンマーを手に入れました。
変身キャップを手に入れました。
拡声器を手に入れました。
クランポイント券(青)を手に入れました。
クランポイント券(虹)を手に入れました。
プレミアムガチャ補助券を手に入れました。
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(未来の猫型ロボットが四次元ポケットから出したようなアイテム名もあるが……)
【さすがイベントクエストの報酬です。どれもそれなりのアイテムが出たようです】
(そうか? まあ、いい暇つぶしにはなったけどな……)
ミズトは現れたアイテムを全てマジックバッグへ収納した。
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