第112話 人間らしい選択
【先日の合同討伐で、最も貢献度が高かったミズトさんはA級へ推薦されていたようです】
エデンがリンダの言葉を補足した。
(言われてみれば、そういう話だったような……)
「ありがとうございます。念のため確認ですが、A級昇格を辞退することは可能でしょうか?」
「何を仰るのですか!? A級は世界中の冒険者の憧れであり目標です! 辞退なんて聞いたことがありません!!」
「ですよね……」
ミズトはリンダの勢いに負け、それ以上は何も言わずに派手な冒険者ギルド証を手に取った。
「そういうわけだ、ミズト! クレア様捜索のために、帝国へ向かってくれ!!」
エドガーが真剣な眼差しでミズトをまっすぐ見据える。クレアの事が心配で仕方がないのが、手に取るように伝わってきた。
それでもミズトは、その依頼の受領を即答する気にはなれなかった。
【ミズトさんは『無限迷宮』でのあの御方との訓練で、ご自分が強くなり過ぎたことを気にされているのでしょうか?】
(なんだ、エデンさん、そんなことまで分かるのか……。俺は結局この世界の人間じゃないからな。そんな俺がこんな力を持ってこの世界の出来事に干渉するのはどうかと思ってな)
【師弟システムを通じてあの御方の弟子となり、強くなり過ぎたご自分の力が恐ろしいのですね。実際、ミズトさんの力はこの世界の歴史を簡単に変えるほどにまで成長しております。女神アルテナ様はそうなることを憂慮され、スキル『女神の憂鬱』でミズトさんの能力を制限されました】
(はは、そう考えると女神のやったことはあながち間違ってないな。あの時、俺は女神の言う通りに能力設定さえしていれば、もっと自由に生きていけた気もするし)
【理不尽にも強制的にこの世界へ連れて来られたミズトさんがそのような事をおっしゃるなんて、女神アルテナ様がお聞きになれば、きっと安堵されることでしょう。しかし、それでもミズトさんはもっと自由に生きても問題ございません】
(もっと自由に?)
【ミズトさんがその力を使って世界を滅ぼすことはもちろん、善良な誰かを傷つけることは決してないとわたしは理解しております。ですからミズトさんは自由に自分の人生を楽しみ、周りを気にせず思うままに生きて良いのです。あなたが選ぶ道は、きっと素晴らしい未来へと繋がっていくでしょう。ご自分の生きたいように生きていけば良いのです。もし、このまま依頼を受けずに、恩のあるクレアさんを救出できなかった場合、間違いなく後悔されることになります】
(恩? ああ、そういえば潔白を証明するときに、わざわざ身分を明かして手助けしてくれたんだっけ……)
いつにもまして饒舌なエデンに、ミズトは戸惑った。
【はい。それゆえこの世界のことなど気にせず、ミズトさんが助けたいと思えば助ければよろしいのです】
(未来まで分かるようになった新エデンさんは、何か意図があって言ってるとしか思えないんだよなぁ…………。まあ、さすがにここで借りた恩を返さないのは薄情どころじゃないか……。それに、あっちの大陸には
【そうでしょうか?】
(べつに俺だけじゃなく、人間、誰だって色んなしがらみの中で生きてんだ。何でもかんでも自由ってのは、ちょっと違う気がするけど。でもたしかに、俺がこの世界に気を使い過ぎるのも、それはそれで違う気もしてきたな)
ミズトは、クレア王女の捜索依頼を受ける決断をした。
この半月、ダンジョンの奥底に潜んでいた恐ろしい何かと、『師弟システム』の模擬戦を繰り返した。
ただただ、その何かを満足させるためだけに、ミズトは必死で戦った。
その結果レベルは上昇し、強くなり過ぎた自分はもう人間ではなく、あの恐ろしい何かの仲間入りをしたような気持ちになっていたのだ。
そんなミズトだったが、知り合いが困っているときに手を貸すという、人間として当然の行動をとるのも、悪くないと感じていた。
無意識に人間らしい行動に飢えていたのだ。
【ミズトさん。『女神の憂鬱』が削除され、レベルアップに必要な経験値が大幅に減少されました。さらに、あの御方の恩恵により『万能冒険者』と『万能生産者』から上位クラスへクラスアップし、様々なスキルが習得可能になっております。こうなったら強さを極めてみてはいかがでしょうか?】
(いやいや、『こうなったら』の意味が全然分からないけど……)
ミズトはあまり好きではない自分のステータスをエデンが勝手に開き、久しぶりに目にしてしまった。
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ミズト・アマノ LV20
種族 :人間
所属 :なし
加護 :創造神
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クラス:全能冒険者(熟練度10)
全能生産者(熟練度10)
転生者(熟練度1)
超越者(熟練度10)
ステータス
筋力 :S(+S)
生命力:S(+S)
知力 :S(+S)
精神力:S(+S)
敏捷性:S(+S)
器用さ:S(+S)
成長力:S(+S)
存在力:S(+S)
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