第14話 到着
【何か急いでいる様子でした。そのために相場より高い額を提示したのかもしれません】
(1,000Gか。これ一枚で1,000Gってこと?)
硬貨を握っていた手を開いた。
【はい。それは1,000G銀貨です。ミズトさんがクエストの達成でいつも獲得している硬貨は10G銅貨になります】
(ああ、これね)
ミズトは、地面に落ちている先ほどの限定クエスト報酬を拾った。
今のところお金を手に入れたのはクエストの報酬のみだった。
報酬額は全て10Gで、達成すると地面に突然落ちてくるのだ。
(で、この銅貨一枚なら何が買えるんだ?)
【地域や時期によって貨幣の価値は変動しますが、だいたい10Gで果物が一個購入できます】
(果物一個で10G? まだ銅貨七枚しか持ってないから、果物七個しか買えなかったってことか。せっかく町に着いても金がないと何をするにも困りそうだな。今のハイエルフが買ってくれて助かったかもな……。なあエデンさん、町に着いたら売れそうなアイテムを出したりできるか?)
【申し訳ございません。あくまで必要最低限の利用アイテムしか出すことはできません。もちろんお金を出すこともできません】
(そんな都合よくないか。残ってるポーションなら町で売れるか?)
ミズトはもう一つの中級ポーションを出した。
【はい、売れる可能性が高いです。ポーション屋や雑貨屋などポーションを販売しているお店で買い取りをしている場合が多く、また冒険者ギルドでも買い取りをしています】
(なるほど。ちなみに俺でも作れたりする?)
【もちろんミズトさんの持つ『調合』によりポーションの作成は可能です。ただし、材料は揃える必要があり、薬草は森で採取できますが、
(入れる容器ってことか。それは町で買うしかなさそうだな。薬草は果物のときみたいに見つけられるか?)
【はい、周囲でポーション作成の材料があればお知らせします。集めた薬草を持ち運ぶための
(ああ、頼む)
ミズトが言い終わると、目の前に背負うタイプの大きな
木の革か何かで編み込まれた、軽くて丈夫そうなつくりだ。
(もう一つ聞きたいんだけど、さっきのハイエルフ、俺より強いよな? レベルが全然違うのもあるけど、去っていく身のこなし、ついていける気がしなかった)
【ミズトさんはステータスが極めて高いため、レベル3の現状でもレベル20の冒険者と同格です。ですが先ほどのセシルさんはレベル73。超一流の冒険者レベルですので、強さには大きな開きがあると言えます】
(そうだよな……)
ミズトはつい先日までアラフィフの中年。それに比べれば今の身体は思うようにどころか、それ以上に動くことが出来る。
前の世界ではありえない身体能力を手に入れたために、慢心しているところがあったのだ。
それが高レベルの動きを目の当たりにすることで、自分の思い込みだと感じていた。
「この世界ではまだまだってことだな」
ミズトは数日前に受けた腹部の激痛を思い出しながら、
(ちょうど良い。この辺はモンスターがたくさんいるようだし、レベル上げでもしていくか)
と、剣を握る力を強めた。
ハイエルフのセシルと出会ったエリアは、生息するモンスターが明らかに違っていた。
フォレストウルフは群れで行動をしており、より強力なモンスターも多数察知できる。
経験値稼ぎにはうってつけだった。
ミズトは町への道を進む一方で、戦闘と採取に力を入れ、四日後に町に到着した際には、レベルが4に上昇し、薬草でいっぱいの
*
ミズトが辿り着いたのは、この世界で二週間ほど過ごしたエンディルヴァンド大森林の端に位置する『ドゥーラ』と呼ばれる町だった。そこは町全体が木の柵で囲まれ、出入り口は必要に応じて閉じることができそうな構造だ。
ただし、今は開け放たれており門番もいない。誰でも自由に出入りできるようだった。
(これがこの世界の町か。町ごと柵に囲まれるって息苦しくないのかね。モンスターから身を守るためだから仕方ないんだろうけど)
ミズトは自分の倍はありそうな高さの柵を見上げた。
【この世界では防護壁を町に設けるのは一般的です。モンスターだけではなく、他国の侵略や盗賊などの侵入を防ぐ意味もあります】
(モンスターだけじゃなく人間に対してもってことか。島国の国民には、どうもそういう感覚が薄いんだよな)
ミズトは周りを見回しながら、出入り口へと向かった。
町の中に足を踏み入れると、さほど広くはないが活気はあるようだった。見える範囲にはいくつかの商店が立ち並び、人通りもある。しかし、武器を手にした、柄の悪そうな風貌の通行人が多く、全体的には荒れた印象を受けた。
(なんか臭くないか? 田舎の町はこんなもん?)
【大勢の人が集まり住みつけば、ある程度の臭いは生じます】
(ま、そういうもんか。そんなことより何だか色んな視線を感じるな。やっぱこの
【たしかにミズトさんが背負っている
(ふうん)
ミズトは、敵意のようなものを感じとり、少し不快な気分になった。
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