第12話 ミズトの能力
(そういえばエデンさん。オールEって何の話だ? 向こうも俺のステータスが見えてたみたいだけど)
【はい、カズキさんも見えていました。他者のステータスが見えるのは『転移者』及び『転生者』が持つ『鑑定眼』というスキルによるものです。ただし、『超越者』が持つスキル『ステータス偽装』により、ミズトさんの本当のステータスを他者が見ることは出来ないようです】
(ステータス偽装?)
【はい。他者にはこのように見えています】
ステータス画面が表示された。
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ミズト・アマノ LV2
種族 :人間
所属 :なし
加護 :火の精霊
クラス:戦士(熟練度1)
転生者(熟練度1)
ステータス
筋力 :E(+E)
生命力:E
知力 :E
精神力:E
敏捷性:E
器用さ:E
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(名前とレベル、種族以外は全然違うな。なんでオールEなんだ?)
【名前、レベル、種族以外は初期設定値です。また、どの項目も思い通りに変更することが可能になっています。修正しますか?】
(名前も変えられんのか? 身分証偽装がやり放題だな……。ま、このままでいいや。低く見積もられても困ることはないだろうしな。ん? よく見るとステータスの項目が足りてないけど。下二つは?)
【申し訳ございません。おっしゃっている意味が分かりません。ステータスは筋力・生命力・知力・精神力・敏捷性・器用さの六つになります】
(いや、俺には器用さの下に、成長力と存在力が見えるんだけど)
ミズトは自分のステータス画面を表示した。
【申し訳ございません。私には見えません。また、その二つの項目の存在は知られておりません】
(そうなのか……。隠しステータスみたいなもんか? 変に思われても面倒だし、誰かと話すときはその二つに触れない方が良さそうだな)
【はい。ミズトさんがご自身の能力を隠したい場合は、それが賢明な判断になります】
(能力を隠したい?)
エデンに言われて、ミズトは自分がどうしたいかよく分からなかった。
なにせこの世界に来たくて来たわけではない。居たくて居るわけでもない。
ゲームのようにレベルが上がれば強くなるようだが、そういうものは求めていなかった。
女神アルテナが言っていたように、日本にいた自分は死んでしまっていて、もう戻ることが出来ないなら、この世界でどう生きていくのか考える必要がある。
ただ、そのためにはここがどんな世界なのか確かめる必要もあるし、まずは生きる手段を確立するのが先だ。
すべては近くの町へ向かって、生活を始めてからだと、ミズトは思っていた。
(ま、あの野郎が殴ってきても、次は避けれるぐらいにはなっておきたいけどな!)
アレクサンダーの顔を思い浮かべた。
*
カズキや世界騎士団たちとの出来事以降は、何事もなく単調な日々が続いた。
川で釣れる魚、森で採れる果物や木の実は同じようなものばかり。
出くわすモンスターは、フォレストウルフ、フォレストゴブリン、ブルースライムの三種だけ。
見慣れなかった草木は見慣れ、聞き慣れなかった鳴き声は聞き慣れてしまっていた。
昔から飽きっぽい性格のミズトは、もう異世界生活に退屈していた。
ただ、戦闘へのモチベーションは高かった。
世界騎士ロードのアレクサンダーに、唐突に腹を殴られた怒りは収まらず、八つ当たりをモンスターにぶつけている。
モンスターを遠くに察知すると、戻ってまで狩るほどだった。
そんな繰り返しの日常を続け、レベルが上がったのは八日目になってからだった。
(やっとレベル3か……。最低でもレベル10だったよな? 全然無理じゃね?)
【無理ではありませんが、この調子でいくと町に到着するまでにあと一つレベルアップすれば良い方です。たいへん恐縮ですが、レベルアップに必要な経験値がいくらか、必要経験値が多い理由はなにか、どちらも解析中で明確な回答はできません】
(解析中? 解析って?)
【以前申し上げたとおり、クラス『万能冒険者』『万能生産者』『超越者』は過去に確認されたことがありません。そのためその能力や習得スキルを解析中です。先日お伝えした『ステータス偽装』は、解析により判明したスキルになります」
(ふうん、そんなことも出来んのか。細かいことは別にいいけど、何か大事なことが分かったら教えてくれ)
【もちろんです。解析により重大な事柄を確認しましたら、ミズトさんへお伝えします】
(頼むぜエデンさん。あ、俺も一つ分かったことがある)
【どのようなことでしょうか?】
(レベルが上がるとモンスターを察知する範囲が広がるらしい。今まで察知していた距離より、数倍遠くにいるモンスターを感じるようになってる)
【それは素晴らしい発見です。解析するデータに追加いたします】
(ま、それもあるけど、俺としては経験値稼ぎがやりやすくなったのが、大きいけどな!)
ミズトはたくさんのモンスターを察知した方向へ走り出した。
――――が、数十メートルほど行ってすぐに立ち止まった。
「なんだよ、今の……」
エデンに答えを聞くまでもない疑問を口に出した。
レベルが上がり、異常なほど身体能力が高くなっているのだ。
「あそこからここまで数秒……」
ミズトは振り向いて、走り出す前の位置から動いた距離を確かめる。
そもそも走ったというより、軽く小走りをしたつもりが、全力でダッシュしたような速さだったのだ。
レベルアップの影響だとは分かっていても、その大きな変化に気味の悪さを感じていた。
それからミズトは再び走り出した。
自分の身体という実感がまったく湧かないまま疾走し、障害物を華麗に避ける。
しかも、さらに速度を上げることが出来そうなうえ、このままならいくら走っても疲れることはなさそうだった。
察知する範囲の拡大と、身体能力の向上。これによりモンスターを狩る効率が格段に上がった。
その日、近くの町へ向かっていることを忘れているのではと思えるほど、ミズトは戦闘に明け暮れる一日を送った。
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