第3話 異世界
男は目を覚ますと、見覚えのない森の中で倒れていた。
上半身を起こし片膝だけ立て、片腕を乗せた。
目に入るのは見たこともない草花や樹木。
奇妙な生物の鳴き声も響いている。
(マジで異世界に転生したのか……? やっぱ俺、死んだのか……)
「はあ……」
男は大きな溜め息をつきながら、辺りを見回すと、
(ん? ここでも?)
右斜め前に画面のようなものが浮かび、文字が書いてあることに気づいた。
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ミズト・アマノ LV1
種族 :人間
所属 :なし
加護 :創造神
クラス:万能冒険者(熟練度1)
万能生産者(熟練度1)
転生者(熟練度1)
超越者(熟練度10)
ステータス
筋力 :S(+S)
生命力:S(+S)
知力 :S(+S)
精神力:S(+S)
敏捷性:S(+S)
器用さ:S(+S)
成長力:S(+S)
存在力:S(+S)
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(これが俺のステータス画面か。ほとんどゲームの世界だな。名前がカタカナなのはいいとして、『創造神』なんて加護は選択肢になかったような。ステータスのSも、Aより上なのか、Fよりずっと下なのか……。それに、下二つのステータスは設定の時あったっけ?)
いくつか違和感を覚えながらもミズトは立ち上がり、パンパンと服の土埃を払った。
(画面がついて来る?)
地面に腰を着いた状態では、ステータス画面はミズトの目線の位置に表示されていたのだが、立ち上がると高さを変えてきた。
試しに顔を上下左右動かしてみても、画面は動かない。しかし少し歩いてみると、画面はミズトと一緒に移動する。
どうやら相対位置が固定されているようだ。
(へえ、面白いな。でもずっとそこにあるのは邪魔だな)
ミズトがそう思った瞬間、宙に映っていた画面が消えた。
(消えた? もう一回見たい時はどうすんだ?)
今度はそう思った瞬間、画面が現れた。
(なるほど、思うだけで表示非表示が自由なのか。すげえな)
ミズトは画面の表示非表示を繰り返した。
(ん? こっちにも何か映ってるな)
左斜め前にも文字が表示されていた。
点滅しているビックリマークが二つ、上下に並んでいる。
よく見ると、どちらもマークの横に何か書かれていた。
(確認していないクエストがあります? 下の方は……起動していないスキルがあります、か)
ミズトは上のビックリマークに触れた。
「わっ!?」
思わず声が漏れ、尻もちをついた。
周囲に大量の画面が表示されたのだ。
(なんだよ、ビックリさせやがって。何が表示されたんだ?)
一番近い画面に目を向けた。
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◆クエスト発生◆
クエスト名:初めてのモンスター退治
モンスターを三体倒してください。
報酬:経験値10
金10G
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(なるほど。クエストで経験値とお金が手に入るのか。そういえばステータス画面にLV1と書いてあったし、経験値を稼いでLVを上げるってことなんだろう。まさにRPG)
他の画面には『初めてのポーション』『初めての買い物』『初めての魔法』などと書いてあるのが見える。
ミズトはクエスト画面を全て閉じると、再び立ち上がり、少し警戒しながらもう一つのマークに触れた。
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スキル『女神の知恵袋』を起動しますか? はい いいえ
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音声は流れず文字だけが表示された。
(これって確か、最後に追加されたやつだよな? 起動して大丈夫なのか……)
スキルの名前だけ見れば、危険なスキルどころか役に立ちそうなのだが、あの女神が追加したスキル。
ミズトはどうも引っ掛かり、起動せずに画面を閉じた。
(とりあえず後回しだ。もっと落ち着いてから考えるか)
たぶんここはスタート地点と呼ばれる場所。ゲームならすぐ近くに何かあるはずだ。
ミズトはそう思い周囲を観察した。
だが人の気配はなく、変わったものは何一つない。
ただ草木が広がっているだけだった。
(どうすりゃいいんだ? エラい不親切だな。クエストをこなせってことなのか。あれ? 武器どうすんだ? そういえば荷物ないし)
ミズトは背負っていたはずの通勤用リュックがないことに気づいた。
身につけていた腕時計も、ポケットにあるはずの財布やハンカチさえも。
代わりに何かを持っているわけでもない。
(おいおいおい……)
本格的に焦ってきた。
先ほど見たクエストはモンスターを三体退治。つまりゲームのようなモンスターが現れるということだ。
戦う術のないミズトは、今の状況を危険だと感じだしていた。
陽は高く、暗くなるまで時間はありそうだ。
と言っても、どこかも分からない森の中で夜を過ごす度胸なんてないため、明るいうちに町を見つけないといけない。
しかし方向も分からないうえ、移動したらモンスターと遭遇する可能性もある。
急に知らない世界に放り出された自覚がミズトを襲ってきた。
もう、草木が風でなびく音さえ不安を煽り、敏感に反応してしまっている。
(マジでやばいな。スタート地点と言うぐらいなら、そこそこ近くに何かありそうだけど)
キョロキョロと周りを見ていると、点滅するビックリマークが目に入った。
一度は閉じたスキル起動のマークだ。
女神のことは気になるが、今は藁にもすがりたい気分になっている。
今度は躊躇することなく、ミズトは『はい』を選んだ。
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スキル『女神の知恵袋』を起動します。
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文字と共に、何か効果音のようなものが鳴った。
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