糸に絡め取られて

自主企画「〇〇バース小説」

https://kakuyomu.jp/user_events/16817330667784496459


⚠️監禁もの


翡翠「蜘蛛」

鏡夜のことが大好き。ストーカー。


鏡夜『蝶』

翡翠の友達。最近ずっと見られているような気がする。翡翠が自分のことが好きなのは知らないし、蜘蛛なのも知らない。


 ───────────────────


『あれ…?ここは…』


 目を覚ますと知らない部屋にいた。立ちあがろうとすると右足が重く、ジャラジャラッと金属のぶつかる音がする。何だろうと思い右足を見ると、簡単に壊れなさそうな頑丈な足枷が付いていた。何処に鍵があるのか探そうとした瞬間──


「ねぇ何処に行くの?」


 聞き慣れた声が背後から聞こえた。


『───ッ!』


「アハハッ驚いた顔可愛い♡」


『何でお前が……』


 そこにいたのは愉しそうに、口元に弧を描いた翡翠がいた。


『ここは何処なんだよ!』


「まぁそんなこといいでしょ。

 実はね僕蜘蛛なんだよねぇ〜」


『えっ……』


 急に翡翠にカミングアウトされ、驚愕する。だって蜘蛛は俺ら蝶を喰う敵だ。蝶は蜘蛛に捕まったら逃げられず、ただ泣き喚き喰われるだけの被食者だ。


「俺を喰うつもりなのか…?」


 俺の恐怖心が翡翠にバレないように、奥歯を噛み締め、声が震えそうになるのを抑える。


『うーん、どうしようかね?』


 目を細め、嗤いながら言ってくる。恐怖が体を支配する。息がし辛い。心臓がバクバクと大きな音を立てて脈打つ。


「お、俺は蛾だぞ」


 嘘を言う。蛾は俺たち蝶と似ているが、毒を持ち、蜘蛛が蛾を喰らえば死に至る。蜘蛛にとって蝶と蛾は見分けがつけづらく、喰う時に慎重に見極めないと自分まで死んでしまう。だから、蜘蛛にとって蛾は怖いのだ。


 だけどそんなことはお構いなしとばかりに嗤いながら、俺を見下ろす。


「僕は鏡夜くんが蛾だったとしても全然いいよ。」


 そう言うと俺の頬をペロリと舐める。翡翠のザラザラとした舌が頬を擦り、生暖かくねっとりとした唾液が付く。舌が離れると頬についた唾液は、空気に触れスーッと冷えていく。


「んっ… 美味しい。フフッもし蛾だったら一緒に死のうね♡ あぁ… 早く喰いたいなぁ♡」


『や、やだ… 死にたくない……』


 涙が溢れて視界がボヤける。もう虚勢なんかは張れない。もう限界だ。どのみち俺は翡翠に喰われて死ぬ運命しかないんだ。別の選択肢なんかない。逃げるなんて絶対に無理だ。蜘蛛の巣に引っかかった、哀れなは踠いても逃げることは絶対に出来ない。俺がもう無理だと絶望すると。


「あぁごめん… 怖かったよね。嘘だよ。

 鏡夜くんのこと喰わないから。安心して。」


 申し訳なさそうに、俺を優しく抱きしめる。その温かさを感じると震えが止まり、恐怖心が消えた。


 何で?さっきまで怖かったのに… 普通は逆に恐怖心が湧き上がる筈なのに。何でこんなにも安心してしまうの?


「大丈夫だよ… 大丈夫だよ…」


 優しく言う翡翠の声が、さっきとのギャップで頭の中がぐちゃぐちゃになる。


「好きだよ鏡夜くん。好き… 大好きだよ。」


 翡翠が囁く愛の言葉が、頭の中で反響する。もう分かんない。考えられない。ただただ好きという言葉が繰り返される。




『好き… 俺も、俺も好きだよ♡』


「アハハッ堕ちてくれた。好き、いや、愛しているよ、鏡夜くん♡」



───────────────────

半年ぐらい前に別サイトでこれを書いたのを思い出して、今回自主企画でバース系の小説を募集しました。基本 オメガ もしくは Dom/Sub の小説しか読まないので色んなのが読みたくなったんですよね。


今回バタフライバースで書かせていただきましたが、知らないと言う方も多いと思います。実際、私も知らなくて「バース系」で調べて出会ったんですよね。そのサイトのURLは下に貼っておくのでもし良ければ見てください。


今回のようにちょっと闇を感じさせるバース小説を書きたい方には、このバタフライバースオススメです!是非書いたら読ませて下さい!


また今回の登場人物は「バカで可愛いのは君の方」と言う私の作品に出ています。是非読んでみてね〜


バース URL〔https://blnews.chil-chil.net/newsDetail/21043/〕


「バカで可愛いのは君の方」URL〔https://kakuyomu.jp/works/16817330662950579310

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る