Let’s『カワイイ』被害者の会!!
珀幟希
第♡話 あいきゃっち
『レヴィア・ドスキューティクルの犯した悪行の数々について』
事例1
きょう未明、繁華街の路上でドラゴン(ある組織の幹部)が発見された。被害ドラゴンは鱗から血を流して会社に出頭、そのまま無期限の長期休暇をとったとのこと。
被害ドラゴンは街の人々に冷気光線を浴びせていたところ、買い物帰りのレヴィア・ドスキューティクルに襲撃をうけたのだという。一瞬の隙をみてなんとか逃走には成功したが、もし追いかけられたら――逃げなかったら、命はなかっただろうと震え気味に語る。
「『このほうがかわいいもん~!』といいながら我がうろこを一枚一枚、丁寧に剥いでいくのはもはや狂気の沙汰でした」とも。
当分、前線復帰は厳しそうだ。レヴィアが残した傷は深い。
事例2
また、こんな報告もあった。
被害に遭ったのはやはりある組織の幹部だ。彼はクレーンゲームでとったテディベアを大事そうに抱きかかえて店を出た。
その瞬間だ。前方から(曰く名状しがたい)(ハートの)光線に撃ち抜かれたのは。
風穴の空いたテディベア。胸にぽっかりと穴が空いたような気分の幹部。
事例1と異なるのは、彼は何も迷惑をかけていないという点だ。ただゲームセンターで遊び、棚ぼた的に景品をとったというだけ。その報いか、不幸への揺り戻しだとでもいうのか。
レヴィアの容赦の無さが、ここからもうかがえる。
彼が意識を失う寸前、駆け寄ったレヴィアの台詞があった。
「私の見立てに狂いはなかったわ! ドーナツみたいでかわいい!」
彼は夢で今でもあのハートと、テディベアの風通しのいい胴体にうなされているという……。
事例3
またまた、こんな報告もあった。
被害に遭ったのはレヴィア・ドスキューティクルの同業者だ。レヴィアは同業の彼と白熱の議論を繰り広げていたが、ある時どういうシチュがかわいいかという話になった際に、
「少女マンガとかでさ。よくあるじゃん」
「なにがだよ」
「『こいつ、黙ってればかわいいのにな……』ってヒロインがなってるシチュエーション!」
「あー、あれか? 普段は喧嘩してばっかなんだけど、二人きりの場面で男側が疲れたか気を許したかでヒロインの隣で眠っちゃう。で、ヒロインが普段とのギャップにふふってなっちゃうとか、そういう?」
「そうそう! よし、早速やってみよっか! ちょっと口閉じて~」
「何すん、いや自分でできるから! なんだその手! なぜ鼻をつまむ必要があ――――」
「うーん。なんか違ったわ。ねえ、なんでだと思う? ……あれ、気絶してる?」
(中略)……以下、似たような事例が十数ページにわたって並んでいる。
被害に遭った方はこちらのダイヤルまで
0120―×××―△△△(語呂合わせでレヴィア助けて、と書かれている)
カワイイ被害者の会 代表 蓼丸一心
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