第11話 ゴーストスクワッド パート1
統一暦4057年5月15日
現在の銀河では多数の種族や国家が存在し、宇宙航行をはたしている。そして現在の「人間」の定義は「一定の文明があり、思考力、コミュニケーションがとれる存在」としている。異星種族同士がコミュニティを作るのも当たり前の時代となった。
広大な宇宙において"光速を超える"移動手段の確保は必須事項とも言えるだろう。"ハイパードライブエンジン"(国によって呼び方は違うが)が新たな移動手段を確立した!だが素晴らしいエンジンには素晴らしい"燃料"が付きもの、その燃料とは"エレメント115"!この燃料は3000年以上前にコヴナント連合が偶然発見した事がきっかけである。現在では高いエネルギー生成率、輸送コストの低さから、軍・民間、問わずありとあらゆる星間航行船の燃料に用いられている。だが悲しいかな宇宙へ進出したとて変わらない事がある、"資源は金を呼ぶ"という事だ。
〜惑星オメガ〜
惑星オメガは通称"裏社会の略図"と呼ばれるが、コレほど的を得ている言葉もそうは無いだろう。元々はエレメント115採掘を行う為に大手資源開発企業"ネルトマーズカンパニー"主導による開発が行われた。だが巨万の富を狙うのは"善人"だけでは無い。すぐさま噂を聞きつけた無法者達がたむろするようになった。これに対してネルトマーズカンパニーは"対策を何もしなかった"、この対応が運命の分かれ道だったのだろう。犯罪者達は精力的に活動を続け6年が経つ頃には行政の中枢部まで腐敗してしまったのだ。その後ネルトマーズカンパニーに対するエレメント115の輸送を突然停止し、犯罪者達が自分達の懐を温める為だけに転売をし始める。ネルトマーズカンパニーは他惑星での資源開発失敗と惑星オメガの無政府状態化の責任を負われ倒産。残ったのは惑星オメガという名の遊び場である。現在のオメガは犯罪者、テロリスト、狂信者、傭兵達の憩いの場となっており、喧騒が絶えない。何も知らないよそ者が侵入しようものなら5分も持たずに身包みを剥がされるか、命による代償を支払うことになるだろう。
〜カサラゴ重工業地帯近郊 ISIAセーフハウス〜
人っこ一人いない小さなゴーストタウンに佇むガソリンスタンド。一見すると完全なる廃墟だと思われるが、ある事をするだけで地下への入り口が開く。
地下は地上にあったガソリンスタンドに比べかなり広く、上下水道・電気・ガス完備、同時に4人が寝れるベッドスペースに最高クラスの"双方量子通信システム"と"量子暗号化技術"搭載の通信システム、装備の調整が行える作業場に大量の食料・弾薬の備蓄、惑星中のカメラ(監視カメラ以外にも、ドローン、スマホ、サイボーグ用の義眼も含む)から映像を受信できる12のモニターを完備した監視システムまで、ありとあらゆるものが揃っている。
ここに派遣されたキーパーズは新たな指令が来るのを待っていた。
「はぁー・・・結局戻ってくるのか」アーセルスは憂鬱そうに監視システムのモニターから外を覗く。
「手早く仕事を終わらせてココからオサラバする!いつもの事だろ」オルカが、愛用している"M80F"というLMGを整備しながらアーセルスを励ます。
「さて・・・そろそろ指令が来るはずだけど」リコがセーフハウスに備え付けられているPCを操作していると ピピッ と電子音がなると共にある映像が届く。「皆んな!指令が届いたよ。ホログラムに投影するね!」リコがカタカタとキーボードを叩くと部屋が暗転して、ホログラムが展開される。
「例のプロジェクト完了直後ですまないが、諜報部門からの要請を受け、君達を派遣させてもらった!早速本題に入ろう」ホログラムに黒い鱗を持つ(チュウゴクワニトカゲに似た)アルゴニアンが映し出される。
「彼女の名は"リトラー・スー"ISIAの諜報部門に所属。スーはここオメガでエレメント115の密輸先を調査していた。ここ数ヶ月はなに事もなかったのだが、つい3日前の定時報告に応答しなかった。そこで君達の出番というわけだ!彼女身に何があったかを調査して欲しい。何事もなければ良いが・・・」
ホログラムの映像に地図が表記される。
「彼女が拠点にしていたのは"ラッドシティ"の集合住宅だ。この周辺は危険な傭兵達の縄張りでな。面倒を起こさないように・・・まぁ君達なら大丈夫か。最後にこの任務にもう一つ、捜査官チームを割り当てる。要は君達の仲間だな!」
ホログラムの画面が切り替わり、"青い鱗と片方が欠けた角が特徴的なドラゴニュート族"と"黒いベールと淡い緑色の光を放つゴーグルで顔を隠した種族・性別すら不明な者"、そして"黒のキャップを被り、目元が真っ赤なバイザーをしているガスマスクを付けた者"の三人組が映る。「コードネームは"セーイ"、"レイス"、"ミミック"。彼らと共にリトラー・スーを見つけてくれ。健闘を祈る!」
ホログラムの映像が終了した。
「・・・との事だ。皆んな装備を持ってラッドシティに出発だ!」ギャレスが椅子から立ち上がる。「あっ!皆さん外気遮断性の高いヘルメットかマスクを装備してください。外の空気すごく悪いですからね」フルームが注意を促す。
〜ラッドシティ近郊 集合住宅の一角〜
淀んだ空気に包まれ同じようなマンションが立ち並ぶ中、捜索対象のリトラー・スーが住んでいた場所からほど近い駐車場に大型の装甲車が一台止まっている。
「イヤ・・・本当に空気汚すぎない?」リコが装甲車の窓から外を見る。
惑星オメガに統一政府が存在しない為、各縄張りを取り仕切るが組織が好き勝手しているのだが、ならず者達が環境の事など頭にある訳がなく、気がついた時には深刻な汚染問題が発生していた。
「2年程前に仕事で立ち寄った事あるが、その時より酷くなってないか?」
「そうか?こんなものだろ?オルカ」
オルカがアーセルスに対して指を刺しながら「今は本名じゃ無く、"ダスク"という仕事用の名前で呼べと言ってるだろ?!」と釘を刺す。
「ヨシ!じゃあそろそろ出るぞ!」外気濾過システムを備えたヘルメットを被ったギャレスが外に出ると、全員それに続く。
〜同時刻 惑星オメガ 248号高速道路〜
バリケードを設置し、高速道路を封鎖しているガラの悪い人間達がたむろしている。そこに一台の赤い乗用車がやってく来た。
赤い乗用車がバリケードの手前で停車すると、中から出てきたのは、"ガスマスクを装着し、右の二の腕部分に「足の無い年老いた老人」をデザインしたパッチが当てられた赤黒いバトルアーマーを装備する大柄のドラゴニュート族"が左ハンドルの運転席から車外へ出てきて、車のドアを閉じようともせず、地面に足を踏みしめた場所から一歩も動かずにいる。
「よお!オッサン!ここを通りたかったら・・・分かるよな?」おそらく悪漢達のリーダーらしきサンヘリオスがサブマシンガンを片手で持ち、斜めに銃を構える(いわゆる"ギャング撃ち"の構え)。
「オッサンって、まだそんな歳では無いはずだが・・・まぁいい、この"セーイ"に何か御用かね?」セーイと名乗った男は余裕綽々な態度をとっており、"お前らごとき本気を出すまでも無い"と言わんばかりである。
「"セーイ"だとよ!ハッ年老いた幽霊に何ができるってんだよ!!」そう言って悪党達が全員銃を抜いて、セーイに照準を合わせる。
対してセーイは「・・・8人、武器はSMG、アマチュアばかり・・・」なにか小声でボソボソと喋っている。
「何ボソボソ喋ってんだ?さっさと車から離れろ!」悪党の一人は慣れていないのか緊張のあまり銃を持つ手が震えており、今すぐにでも引金を引いてしまいそうな雰囲気を放っている。
すると「わかった!この車をお前らにやる、それでどうだ!」と言って左腕を上げる。その手には車のキーが握りしめられていた。
「なんだ、話しが分かるじゃねぇか」
「よし、なら受け取れ!」セーイは車のキーを真上に放り投げる。
悪党達の視線が空高く舞い上がったキーに釘付けになっている隙に、セーイの右腕から突然「6発装填式リボルバー "ピースメーカー"」が現れた・・・いや、ピースメーカーはセーイの右腰に装着していたのだが、銃を引き抜き、構えるスピードが尋常ではなく、突然現れたように錯覚してしまうほどの早業だったのだ。
ダン!ダン!ダン!ダン! 重い4つの銃声が鳴り響く。
ドサリ、バタリと自分の隣で複数の何かが倒れる音がする。
音の発生源を恐る恐る見てみると、仲間達"だった"4つの死体が血液を流して倒れ伏している。よく見てみると脳幹、心臓、大動脈等の急所を正確に撃ち抜かれており、もう助からない事は火を見るより明らかだった。
「クソ!クソ!」半狂乱になりながらも残った4人は銃を撃ちまくる。
対してセーイは急いで車内に戻り、ドアを閉めるとダッシュボードの中にある小さな箱から一本のタバコを取り出し、口に咥えるとライターを着火させ、タバコに火を灯す。まるで"よくある日常"かのように優雅にタバコを吸い始めた。
キン!キン!と車に銃弾が撃ち込まれるが傷一つ付く事は無い。
(やはり本部に防弾車を要請したのは正解だったな)セーイはタバコをふかせながらバトルアーマーに内臓されている無線を繋ぐ。「オイ、"レイス"!もう半分はお前が仕留めろ」「オッケーイ」と気の抜けた女性の声が聞こえる。
ダダダダー 一心不乱にSMGを乱射する4人の悪党達。すると突然背後から パシュ と小さな炸裂音が聞こえると同時に悪党の一人が片膝を着いたかと思ば、うつ向けに倒れ込む。後頭部には穴が空いており、そこから血がドクドクと流れ落ちる。
背後から、それも至近距離で撃たれたようだがそこには誰も居ない。残った3人は恐慌状態に陥りつつありながらも一心不乱に周囲を確認するが、車に乗っているセーイと自分達以外には誰も居ない。
すると パシュ という小さな音が響くと同時に頭を撃ち抜かれる悪党。そして突然首を切られ、大動脈から大量出血するもう一人の悪党。最後の一人は"見えない何か"に怯えて逃げようとするが、パシュ パシュ と二回小さな炸裂音が聞こえると、自分の腹部に違和感を感じる。腹部を手で触ってみると血液がベッタリと付着していた。(イヤ・・・コレは俺の血か・・・)そう自覚した途端、ドサリと倒れ込む。
首を切られた悪党は薄れゆく意識の中(どうしてこうなっちまったんだ?)と自問していると"宙に浮いた血痕が動いている"事に気づく。(何だアレ?)と注視すると周囲の景観が少し歪んだような気がする。「そうか・・・光学迷彩か」と小声で一人納得すると、その歪みから"黒いベールが頭を覆い、黒と藍色が混ざった色をしたアーマーを装備した小柄な人物"が現れた。その人物は右手に
パシュ
黒いベールの人物は虫の息の悪党に対して銃口を向け、無慈悲に、そして冷酷に引き金を引く、そしていつの間にか車外に出てバリケードの撤去作業を行っているジェスターに詰め寄る。
???「セーイ・・・アンタ呑気にタバコ吸ってたわね?」ボイスチェンジャーだろうか、機械的な音声が大声で響く。
「あのな"レイス"、俺は最初に4人倒したんだから別に良いだろ?タバコくらい・・・」
「じゃあ援護くらいしたらどうなのよ!」
「とりあえずそっち持ってくれ」「はー・・・オッケー」
「「せーっの!」」
口論してはいるが、二人で仲良くバリケードを撤去しているセーイとレイス。
「言っておくが!お前の気配を悟られないように運転席のドアを開けっぱなしにして、注意を引く演技をするのにも神経すり減らしてんだからな!」
「アタシだってね!車が揺れたりしないようにしながら助手席から運転席のドアに移動すんのに気張ってんのよ!」
ギャアギャア言いながらも息ぴったりに作業を行う二人、そこに無線が繋がる。
「コチラ、支援オペレーターの"カロン"・・・毎回お前らのイチャイチャを無理矢理見せられるコッチの身にもなってくれ」ゲンナリした様子の男声が二人に諭すように伝える。
「「イチャイチしてない!!」」「本当に息ぴったりだよな・・・」
〜ラッドシティ近郊の団地 ラバンザ8号館2412号室前〜
キーパーズ一同はリトラー・スーの潜伏場所のすぐ近くまで歩みを進めていた。
「この時代にオートロックも無ければ、警備システムの一つもないとは・・・」「ここじゃ家があるだけでも結構良い暮らしできてる方なんだぞ」スミスとアーセルスが雑談をしながら部屋番号を確認していくと、"2412"という番号の付いた扉を発見した。
ビー とインターホンを鳴らしてみたが、返事が返ってこない。
ギャレスは扉を叩いて「リトラーさん?」と呼びかけるが、返ってくるのは静寂だけだった。
「この部屋がリトラー・スーの潜伏場所だよな・・・」
ギャレスが呟きながら扉に手をかけると、「鍵が開いてる・・・電子錠も物理キーも解除されてるな」鍵が掛けられておらず誰でも自由に出入りできる状態であった。
「この惑星で鍵をかけ忘れるバカはいない・・・あるとしたら"既にここから居なくなってる"か"この世から消えてる"連中くらいだな」アーセルスが不吉な事を語るが、彼はこの惑星出身だ、オメガの事情にこれ以上無いほど精通している。その上リトラーはISIAの諜報任務でここに赴いているのだ。消されたとしておかしくは無い。
「皆んな、いざって時に備えておけ」ギャレスが銃のセーフティを解除すると、他五人も戦闘態勢に入る。
ダスク(オルカ)がヘビーショットガン"シュレッダー"を構へ、「俺が先導する、援護してくれ」と言いながら扉の正面に陣取る。
スミスが扉のすぐ右側につき、ドアノブに手を掛ける。
「いくぞ?」スミスが小声でダスクに合図すると、コクリと頷くダスク。
ギィ と扉が軋む音をたてながら開いていく。
スミスが「ざっと見た感じトラップは無さそうだ」と小声で報告する。
「前進する」ダスクがゆっくりと部屋の中へ入っていく。
部屋はざっと見ると、ワンルームの9畳ほどの大きさで、入ってスグ右側に扉が一つ、左側の壁にはクローゼットらしき両折れ戸の扉が一つ、奥の方に窓が存在し、そこから入る陽光が窓に沿うように置かれたシングルベッドに当たっている。ベッドと玄関の間、ベッド近くにはローソファ、物でとっ散らかったローテーブル、小型テレビなどが存在し、テレビに隣接するようにキッチンが存在している。
「ダスクとスミスは右の扉、アーセルス、フルームは左の扉を確認」ギャレスの指示通りに四人はポジションにつく。
ガチャ 右の扉を開け、侵入したダスク、スミスから「右クリア」と聞こえてくる。
それと同時に左側の両折れ戸を開けたフルーム、アーセルスからも「左クリア」と聞こえてくる。
ギャレスが「ルームクリア」と一声かけると、六人は戦闘態勢を解き、部屋の物色を始めた。
まずリコが雑多な物でとっ散らかったローテーブルの上にノートPCを発見し、解析しようとすると「うわ!何これ・・・」リコの困惑する声が響く。
「どうした?」ギャレスがリコの元に駆け寄る。
リコがPCとタブレットの画面をじっと睨みつけ「凄いセキリュティだよ。今ある機材じゃあどうにも出来ないね・・・量子レベルか、それ以上の機材が必要かも」
「わかった、ひとまずPCはセーフハウスに持ち帰るとして・・・ダスク、そっちはどうだ?」
クローゼットを漁っているダスクに話しかけるギャレス。
「何も無いぞ。まぁこんな分かりやすい場所に隠すわけないか」
「キッチンもテレビも見たが何も無かったぞ」「バスルームも無かったですね」今度はアーセルスとフルームから報告を受ける。
「成果は、あまり芳しく無いか・・・ひとまずセーフハウスに撤退し・・・スミス?」
ギャレスが部屋を見渡していると、ローソファとその周辺の床をしきりに気にしているスミスが目に入った。
「この床、周りと少し色が違う・・・頻繁にソファを移動した?」と独りごちると突然ソファを移動させ、その下にあるフローリングを調べ始めた。
「何してんだ?」アーセルスは困惑の顔を浮かべると、ダスクが肩をすくめながら「さぁ?」と呆れた様子で答える。
ガン ガン と硬い床を叩いたりしながら調べを進めていくと、ガン ガン コン 「うん?」 突然調べる手を止め、首をわずかに傾げるスミス。ある一枚の床材を精査すると、カコ!っと音と共にその床材が外れ、「ビンゴ!」とスミスの上機嫌な独り言が響く。
中には10センチ四方程の黒い小型ケースが存在していた。
スミスがケースを取り出し、中を確認してみると、黒いUSBにも似た物が入っていた。
「USB?」「いや、コレは・・・"セキュリティトークン"だな」スミスの疑念にギャレスが答える。
ダスクが「確か、シタデル評議会の投資家どもが似たような物を持ってたような・・・」と顎に手を付け、顔を少し上向ける
「そんな物が何でここに・・・」フルームがセキュリティトークンを訝しげに見つめる。
「こんなまどろっこしい隠し方してるんだからよっぽど重要なんだと思うよ、少なくともこのPCよりは大切なものって事でしょ」リコがセキュリティトークンをケースごと回収する。
「よし、ひとまずセーフハウスに戻って情報の整理だな!リコ、PCとセキュリティトークンを任せる」「りょーかい」ギャレスの指示で撤退を始めたキーパーズ。
部屋を元通りした後、ダスクを先頭に6人が玄関の扉を開け、廊下に出る。
廊下に出て右へ目線を向けるとそこには、大勢の人間が居た・・・大小様々な銃を持ち、"盾のマークの中にトリケラトプスに似た生物"を模ったロゴを付け、黄色を基調としたバトルアーマーと顔が見えない戦闘用ヘルメットを装備している者達が。
黄色のバトルアーマーを装備している者達は部屋からキーパーズが出てきた事に面食らった様子をしている。すると最前列にいる隊長らしきゲルコニアンが耳元に手を当て、ボソボソと無線でどこかに連絡し始めたのだが、会話内容までは分からなかった。
ゲルコニアンが耳元に当てていた手を下ろすと、互いに静止し、睨み合う。その雰囲気はさながら西部劇のガンマンが決闘を行うような緊張感を醸し出している。
突然、隊長格のゲルコニアンが顎をしゃくりながら「ヤレ」と発すると、ソイツの部下達が瞬時に銃を構え、キーパーズに向け発砲する。
ダスクが銃口を向けられる直前にフルーリオシールドを展開しながら「お前ら!頭を下げて俺の後ろに隠れろ!」と怒鳴り散らし、5人はダスクの影に隠れる。
タタタン! ダンダン! 多数の激しい銃声と
ディス!ディス! シールドで弾を防ぐ音が周囲一帯に響く。
「ギャレス!これからどうすんだ?」ダスクが左腕でシールドを構えながら、右手に持っているサイドアームを使って敵を牽制する。
「エレベーターからの脱出は諦めて他の出口から脱出する!スミス、スモーク!」
「オーライ!」スミスがJACK8グレネードランチャーからスモークグレネードを射出し、周囲一帯の視界を奪う。
「僕からもプレゼントだよ!スミス!ちょっとC8爆薬借りるね!」リコが小型のドローンを取り出し、下部にスミスから拝借した梱包爆薬を取り付けると、そのままドローンをスモークの向こうにいる敵に特攻させる。数秒すると バゴーン! という爆発と共に何人かの悲鳴が聞こえてくる。
スモークと爆発によって敵からの攻撃がまばらになると「今だ!」ギャレスの掛け声を合図に少しずつ下がっていく。
シールドを構えているダスクの右肩を持って後ろへ下がる為の誘導を行うギャレスと、その二人を援護しながら徐々に下がっていくフルーム、スミス。そして撤退する先の安全を確保する為にアーセルス、リコが先陣を切る。
〜ラッドシティ近郊〜
一台の赤い乗用車が整備されていないアスファルトを走行しているが、現代のサスペンションでも衝撃が吸収しきれないのか、ガタガタと車体を揺らし、砂埃を巻き上げながらスピードをとばしていると ガコン! と車体が一際大きく揺れる。
車内では
「あいったーー!ちょっと!セーイ、安全運転しなさいよ!」助手席に座ってうたた寝していたレイスが、揺れた拍子にぶつけたらしい頭部を手でさすりながら運転手に向き合う。機械音声と頭部にかかった黒いベールで相変わらず表情が分からないが、声や身振りから怒り浸透であろう事はよく分かる。
「うるっさいなー!こんな悪路を揺らさずに運転しろと?!しかも"急行しろ"って本部に言われてんだぞ!ちょっとは我慢しろ!」運転中のセーイも負けじと怒声をあげる。
「お二人さーん、喧嘩するのは構わないが突然大声を出すのはやめてくれ。耳がちぎれるかと思ったぞ」カロンの声が無線越しに聞こえてくるが、非常に辛そうで怒る気力もない様子だ。
「あー・・・悪い・・・」「悪かったわ・・・ところで今回の任務にもう一組部隊が動員されてるみたいだけどどんな連中なの?」
「あれ?お前ら聞かされてないのか?」
「あぁ本部から任務の概要は聞いたが、人員の詳細までは知らされとらんな」
「了解、少し待ってろ・・・ヨシ!」
二人の持っているスマホに情報が共有される。
「なかなか面白いチームね」
セーイも車を自動運転に任せてデータを確認する。
「最近できたばかりの新人達だが・・・実績は確かみたいだな」
「C-SEC、連邦軍、コヴナント軍、ISIAメディックチーム、傭兵・・・本当、よくこんなへん・・・個性的なメンバーが集まったわね」
「先に現地を偵察してる"ミミック"から映像が送られてきてるが、ちょっとまずいな・・・その個性的なチームが結構なピンチに陥ってるみたいだぞー」
セーイとレイスのスマホに"正体不明の敵とキーパーズが激しい戦闘を行っているのをはるか上空から撮影している映像"がカロンから送られてきた。
「オイ!それを早く言え!それと聞いてるなミミック!"ルーキー達の手助けをしてやれ"!」
「おっけーい、任せてちょうだいよ」レイスの特徴的な機械音声がセーイとレイスの耳に入る。
「ねぇ"ミミック"!その下手なモノマネ辞めなさいって何度言ったらわかるのよ?!」
レイスとミミックの喧嘩を横目にセーイは手動運転に戻してアクセルを踏み抜き、目的地へ急行する。
〜ラッドシティ 集合住宅〜
タタタン! タタタン! いまだ激しい銃声が辺り一帯に鳴り響く。
「スミス!まだですか!」
フルームが"MP5E"を撃ちながら声を張り上げる。
フルームのすぐ後ろにある階段から、カチャカチャと音が鳴り響く。
そこには手早く、慣れた手つきで基盤をセットし、コードをつなぎ合わせ、火薬と信管を組み込んだ小型の接着性IED(即席爆弾)を制作しているスミスの姿があった。
「これで・・・セット完了!!下がっていいぞ!」
スミスの掛け声に合わせ、フルームがスミス、ダスク、ギャレスが駆け込んでくる。
「良いぞ!スミス!」「OK!最後の仕上げにレーザーを起動して・・・」スミスが階段を一段降りてすぐ、足元の壁に設置したIEDの上部にあるスイッチを押すと、薄い緑色のレーザー光線が反対側の壁に向けて投射される。
「よし!ブービートラップセット完了!」
四人は階段を駆け下り、一階に向かいながらギャレスが無線で「リコ、アーセルス!そっちの状況は!?」と問いかける。
〜同時刻 建物裏手の駐車場〜
タタタン!タタタン!と激しい銃声が鳴り響く駐車場では、先行していたリコとアーセルスが待ち伏せに遭遇し窮地に立たされていた。
「コッチは駐車場のど真ん中で敵の待ち伏せに遭遇して結構ピンチな状況!なるだけ早く合流して欲しいね!」遮蔽物として利用している車の裏でリコが声を荒げている。そしてすぐ隣では、アーセルスがライザーを使って応戦していた。
「6・・・9・・・残敵11人、流石に数が多すぎる。リコ!お前のドローンで何とかできないか?」
「ちょっと!僕のドローンはそんな便利道具じゃな無いんだよ!」と言いながらリコ自身もKE6を構え応戦していると、ふと少し離れたアパート3階にキラリと何か光が見えた気がした。
「アレは・・・ハッ!アーセルス伏せて!」
アーセルスが仰向けに倒れ込む瞬間、ダチン!とアーマーに弾丸が当たった音と、ダーンと周囲で響く銃声より一際大きい一発の銃声がこだまする。
「アーセルス!大丈夫かい?!」
アーセルスがむくりと起き上がり「アーマーが弾いた!問題ねぇ」と答える。
「良かった・・・にしてもスナイパーまで配置してるとはね、連中も本気みたいだね。まぁ位置が特定できたのは幸いかな」
「待て!よく見てみろ・・・」アーセルスの言葉を聞いたリコは周囲を観察する。するとキラキラ輝く光が4ヶ所ほどから発せられていた。
「もしかして・・・コレ全部スナイパースコープの反射?はぁ知らなきゃ良かった」
「バカな事言ってる場合か!距離はせいぜい200mってところだが、俺達の装備じゃスナイパー相手に部が悪い・・・ギャレス聞こえるな」アーセルスが無線で呼びかけるが返答が無い。
「ギャレス・・・ギャレス!」ジジっとノイズが聞こえるだけだったが、「こちらギャレス!どうかしたか?」聞き馴染んだ声が二人の耳に入る。
「ギャレス!敵のスナイパーがコッチを狙ってる何とかしてくれ!」
「ラジャー」と一言告げるとほぼ同時に、リコ達の左斜め後ろからターン!と一発の乾いた破裂音が聞こえる。
敵スナイパーが倒れる姿をピジョンドローンで見ていたリコは「ナイスショット!」と感嘆の声を上げる。
更に続けて同じ方向から銃声が3つ連続で聞こえた。
「スナイパー全員の排除を確認、お見事!さすがリーダー!」リコが興奮してるすぐ隣では、アーセルスが怪訝な顔をしている。
「なぁ・・・アレ本当にギャレスか?」
「えっ?どう言う事?」
「俺達がさっきまでいたのが"6号館"、いまの俺たちから見て"右側"だ・・・だがこの銃声は、おそらく7号館からの狙撃だな」
またも同じ場所からパーン!と大きな銃声が鳴り響くと同時に、敵の頭が吹き飛んだ。
「歩兵を一人排除・・・」ギャレスの声を模倣した何者かが無線ごしで静かに呟く。
すると、「二人とも無事か!!」またもギャレスの声が二人の耳に入る、今度は無線では無く"ギャレス本人"が二人の目に入っている。
「リーダー!そこで止まれ!」アーセルスがギャレス達を建物の出入り口で制止する。
「さて・・・今このチャンネルに侵入している君は一体誰なんだい?!」リコが語気を荒らげると、「安心してくれ、我々は味方だ」と聞き覚えの無い、若い男性の声がキーパーズ6人の耳に入る。
「アンタ、何者だ」ダスクが無線ごしに語りかける正体不明の人間を問いただす。
「失礼、私の名前は"カロン"、今回君達と共に任務を遂行する捜査チームの支援オペレーターをしている。そして先ほどの狙撃支援とチームリーダーの声マネをしているのが、仲間の"ミミック"です」
ターン! またも大きな銃声と「残り9人」ギャレスの声をマネしているミミックの報告が聞こえてくる。
「多分・・・アイツがミミックだな」スミスの目線の先、建物の屋上に、黒のキャップと赤色のバイザーが特徴のガスマスクを装着した人間がライフルを構えている姿が目に入る。
「残りの敵は我々"ゴーストスクワッド"にお任せあれ」カロンの言葉と共に遠くから車のエンジン音が聞こえてくる。
キキー! と甲高い音ともに、建物の影から赤い車が現れたかとおもうと、スピードを緩める事なく二人の敵を吹き飛ばしながらキーパーズの元に駆け抜けてくる。
そして、リコとアーセルスの目の前で車を止めると、運転席である左側からドラゴニュート族の男がリボルバーを持って、助手席からは黒ずくめの人間がカランビットナイフを持って現れた。
息つく暇もなくドラゴニュート族の男がダン!ダン!ダン!とリボルバーを三発撃ち、黒ずくめの人間は勢いよく敵に走り出すと同時に姿を消す。
次の瞬間、リボルバーの銃撃を受けた3人はバタバタと倒れていき、また3人は見えない何者かによって頸動脈を切り付けられ、最後の1人はミミックからの狙撃で撃ち倒される。
「ボス、周辺の安全を確保・・・クリアだ」
「了解・・・よくやったミミック」いまだギャレスの声を模倣しているミミックに対し、ボスと呼ばれたドラゴニュート族の男が労をねぎらう。
ドラゴニュート族の男が耳に手を添え、小さく言葉をこぼす「本部コチラ"ゴーストスクワッド"・・・これより任務を開始する」
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