Discover the Discovery

Phantom Cat

1

 まただ。


 これはいったい、どう解釈すべきなのか。


 確かに「カレイド」は何かを「発見」したのだ。だから警戒態勢に入っている。


 だが、それが何かは、わからない。


 悲しいかな、現時点でのAIはそういうものなのだ。結論だけがポンと出てきて、なぜそうなったのか、どういう過程でそうなったのかはすぐにはわからない。少なくとも、人間には。


 だから、「カレイド」が何を「発見」したのかを発見する、俺のようなデータサイエンティストがNSA(米国家安全保障局National Security Agency)には必要、ってことだ。そう。俺のモットーは Discover the Discovery ――「発見」を発見する――なのだ。


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 俺の相棒の「カレイド」は、全世界のありとあらゆるネットワークに繋がったスーパーコンピュータ。そこで送受信されている情報を傍受し、国家、ひいては自由主義陣営にとって脅威となる存在を暴き出す。だが、これまでは傍受で得られた膨大なデータの海から何か有益な情報を取り出すのは至難の業だった。


 しかし、昨今の機械学習の飛躍的な進歩により、傍受したデータを処理して脅威の兆候を自動的に見つけ出すことが可能になった。ただ、AIに出来るのはあくまで何らかの兆候の検出だけで、それがいったい何を意味するのか、までは教えてくれない。とは言え、他の諜報機関から得られた、敵性国家やテロ組織の情報を加味することで、それが何なのかが明らかになる場合も多く、そのような情報も含めて「カレイド」に学習させることで、今ではヤツもかなり具体的に脅威を予測することができるようになっている。


 だが、ここ数日で、どうもこれまでになかった未知のタイプの脅威が出現したようなのだ。新しいテロ組織でも生まれたのか、とCIAラングレーに聞いてみたが、そんなことはないらしい。それでも「カレイド」によると脅威の深刻さはかなり高いという。放ってはおけないだろう。


 というわけで、俺は「カレイド」の深層学習ディープラーニングアルゴリズムの中にダイブして、ヤツが見つけた「脅威」とやらの正体を探ることにした。


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