第39話 帰郷

レクに皆へ料理を教えてもらう事にした。

これで当分は俺が居なくても大丈夫だろう。


「久々に帰ろうかな。グリフォナに。」



「グリフォナって確か少し遠い所の町よね。

どうして?」



「俺はそこでちょっと前まで暮らしてたんだ。」



「貴方の故郷なのね。だから帰るのね…」



「どうしたの?」


何故か少し悲しそうな声だった。



「いえ、貴方がこの家に少しでも居なくなってしまうと思うと寂しくてね。あの子達もカデ達も悲しむと思うわよ。」


成程。


「まぁすぐ帰ってくるさ。皆に会いに行くだけだしね。」


「我儘だけど早く帰ってきてね。」



「うん。」

あ、そうだ。


「白金貨1000枚置いておくよ。自由に使って。」


「ど、どうしてこんな大金…」


「だから好きに使ってくれていいから。それじゃ!」





◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️

「瞬間転移」でグリフォナに帰ってきた。



サイスさんやアスター達は元気だろうか。



取り敢えず冒険者ギルドに着いた。

ここなら皆いるかな。


「メリーさん!?帰ってきてたんですか!」



走って近づいてくるのは、サイスさんだ。





「サイスさん。久しぶりですね。マリナは来てないんですか?」



「マリナは奥の部屋で遊んでるんです。メリーさんが帰ってきてるって知ったら喜んで飛び起きますよ。」



「ん?何かありました?ギルドの様子がなんか慌ただしい様な…」



「今、実は竜種が出現してるんです。」



「竜種?」


竜種ってなんだろ?ドラゴンって事かな?



『竜種とは、ドラゴン種がユニークモンスターとなり進化した存在の事を指します。』



ユニークモンスターに進化したって結構ヤバいのでは…



『竜種の最低レベルは恐らく10000程あると思われます。』



まじか。



「対処には誰か向かったんですか?」


「アスターさん達とノエル様が偵察に向かいました。周辺国にも応援を呼びかけているのですが…」


「発見されて間もないから更に時間が掛かると。」



「はい…」



不味いかもしれんな。最低レベル10000なら

ノエルもアスター達も危険かもしれない。



行きますかね。



「ちょっと俺行ってくるよ。」



「ええ!?ノエル様と引き分けたって聞きましたけど…でも今回はギルドで待っていましょうよ!」



「大丈夫大丈夫。」




「で、でも。」




「アスター達が行った方向ってどっちかわかる?」




「ズムスタ森の更に奥の海周辺です。」



「分かった。ありがと。」



俺はそのまま少し離れ人がいない所で「飛行」を発動しそのままま最高速で飛び立つ。


◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️

「もうすぐで目撃情報が出た辺りに着くぞ。

皆気をつけてくれ。」



「うん。分かってるよ。」



「メリーがいてくれればな。」



森を進みながら会話をしているアスター達と剣聖ノエル。



彼女達は目撃情報のあった竜種を偵察しにズムスタ森の奥まで来ていた。



「彼はそんなに頼りになるんですね。」

ノエルは幼い頃から剣に生きた人間だ。

だから分かる。彼の剣技は自分自身を超えており遥か高みにいる。




「私も命を助けてもらったしね!」



魔法使いの少女、確かナータという子だった。


「みんなメリーの事好きなんだね。」



ノエルの何気ない一言。



「いやいやいや!そ、そ、そ、そんなわけ無いよ!」



「私はメリーの事が好きだけど。」



「私もメリーの事は嫌いではないな。」



「私もー」



ナータはとても動揺していてアスターは直接的だ。



ナータに至っては顔が真っ赤なので恐らくメリーの事が好きなのだろう。


アスターも恋愛的な意味で好きなのだろうか。


そんな物思いに耽っていると…



「ギギャーーーーー!!!!!」



明らかに人のもので無い叫び声が聞こえる。

同時に感じる威圧感。



間違いなく


「竜種だね。」



空を睨む。


だがどうする。恐らくアスター達では相手にならないだろう。

もう発見されてしまっているし逃亡は絶望的だ。



「アスター達!ここは私に任せて、情報を持ち帰って。」


なら一人でも多く生き残って情報を伝えるべきだ。



それにもしかしたら私のスキルと神剣を使えば勝てない相手ではない。



アスター達もそれを察してくれたのか


「分かった。」


短いやり取りで会話を交わし竜種に集中する。



「ギャーーーー!!」



同じ様な声が聞こえてくる。

だがノエルが見据えている竜種が出した声ではない。



と言う事は

「まさか二体いたなんて…」


アスター達の目の前にも立ちはだかっている

竜種。



明らかに異常だ。

ユニークモンスターが二体も同時に出現するなんて。



「もしかして私達ユニークモンスターに愛されてたりして。」


「た、確かにね!」


全員戦闘態勢を取る。

でも、アスター達では流石に厳しい。



どうすれば…



「おーいこっち向けー」



少し気の抜けた声で竜種の挑発をしている

青年が居た。


その青年は皆よく知っている人間だった。







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