スキル【呼吸】が最弱すぎて追放された俺、NTR&追放確定で奈落に堕ちるも〈奈落の空気〉を取り込み人生確変!復讐と共に無双する!

リミットオーバー≒サン

第1話 スキル【呼吸】



『今何してる?』

『呼吸』


 というくだらない会話は誰もがしたことがあると思う。 

 バリエーションとして、


『今何してる?』

『光合成』も、あるだろう。


 まさか俺がこんなありふれたギャグみたいな能力を身につけるなんて思いもしなかった。


『神裂アルト。あなたの能力は〈呼吸〉です』


「呼吸ですか? 肉体の強化とか剣士の能力とかそういうものではなくて?」


『呼吸です。吸って吐くことです』


 俺は絶望した。吸って吐くだけだと?

 そんなものが能力だなんて……。




 現実世界で病死した俺は、VR異世界に〈ソウルワールド〉に魂を転生していた。


 生前の俺は世界政府の実験に参加していたためだ。

 臓器提供のようなもので、死後魂をVR異世界に移す登録をしていたのである。


 死後数時間以内の人の脳の情報をVR世界〈ソウルワールド〉に転写することで生きながらえたのだ。


 現実では死亡の判定が下され肉体は消滅するが、ソウルワールドの中で魂は生き続ける。


 科学文明の異世界転生だ。


 VR世界への魂魄転写は、現実とのリンクを残している。

 俺の行動記録は現実の記録ログとして送信されるし、現実の様子もこちらからみることができるのだ。


 始まりの白い部屋で、俺はまず母さんに連絡をした。

 ソウルワールドからスマホへと直接通話できるらしい。


「本当に、アルトなのね」

「母さん……。俺だよ。ごめん。死んじゃって」

「いいのよ。姿が変わってもあんただってちゃんとわかるから。見守っているから」


 現世ではいつも喧嘩ばかりだったのにな。

 病気になって入院してからも世話になりっぱなしだったしな。


 だがVR世界〈ソウルワールド〉での転生では、まだチャンスがある。

 せめていいところを見せてやるぜ。


「俺はこっちで元気にやるから。世界は違うけど。母さんを勇気づけられるようにするからな」


「なんでもいいから、元気でいなさいよ! いつだって応援してる。応援、してるんだから……!」


 多くの死後の人々の魂がソウルワールドで再構築されたようだ。


 俺の他にも通話をしている人がちらほらみえていた。


 魂の世界といっても、すべてが現実と遜色ない仮想世界だ。


 家族を造るものもいるし生殖だって可能だ。

 現実で死んだからってまだ生きていける。


 俺の全身を光が包んだ。


【女神像のチュートリアルが始まります】


「母さん。そろそろ、みたいだ」

「時々、連絡よこしなさいよ」


「ああ。連絡するよ……。行ってきます!」

「行ってらっしゃい……!」


 かくして俺のソウルワールドの生活が開始した。


 白い光に包まれさらに転送される。

 目を開けると1000人ほどが集められた〈白い体育館〉にいた。


【始まりの場所〈白亜の伽藍〉】



 と、網膜投影に映し出される。

 網膜投影にはパラメーターや情報が映し出されるようだ。

 俺は早速自分のパラメーターを開く。



神裂アルト レベル1


HP 60

MP 30

TP 20

攻撃 30

防御 20

魔攻 20

魔防 20

素早さ 30

運命力 0

体格 10

移動 10



『第333期転生者へ。スキルの起動を行います。ここには神の意図は介入しません。あなた方の潜在能力が解放されます』


 女神像と呼ばれる解説者が、初期説明チュートリアルを始めた。


 そのまま女神の像だ。

 チュートリアルが始まり、スキルが振り分けられるらしい。


 俺は考える。


 333期で1000人ごとということは、この世界には33万3000人ほどの人口がいるということになる。


 俺の周囲で、人々が輝きだしていた。

 スキルが与えられているのだろう。


【スキルが付与されました】


俺もまたスキルをゲットする。



神裂アルト レベル1


HP 60

MP 30

TP 20

攻撃 30

防御 20

魔攻 20

魔防 20

素早さ 30

運命力 0

体格 10

移動 10


【バイタル】グリーン

【スキル】呼吸

【アビリティ】不運

【ギフト】なし


俺は項目を確認していく。


バイタル;生命力の状態のこと

スキル:生まれつき備わったもの。誰でも持っている】

アビリティ:成長、付加が可能なもの

ギフト:天性の才能のこと。開花する場合もある。



初期項目の他にも増えていくようだが……。

俺には大いなる疑問があった。


「【スキル:呼吸】って何?」


 周囲を見渡すと、スキルについての会話が始まっている。


『俺はパイロキネシス。炎を出せるらしい』

『僕はクライマーだ。崖を登ったり上下の身体能力が高いらしい』

『私は水使い。水を操れるんだって』


 俺は蒼白となってくる。


 だから、スキル【呼吸】って何?


 女神像がアナウンスをする。


「疑問点、質問点などがあれば受け付けます」


 1000人の中からポツポツと質問があがり女神像が応えていく。


『アビリティの成長可能上限は何個までですか?』

『上限はありません。ただし習得には現実同様時間がかかります』


『ギフトの開花条件はわかりますか?』

『ギフトは眠っています。開花条件は努力次第です』



 俺は尋ねるべきかどうか迷ったが、女神像に質問する。

 スキル【呼吸】がちょっと、何言ってるかわからなすぎる。


「あの……!」


 できるだけ女神像に近づき、小声で質問した。

 周囲に弱みをみせないためだ。


『俺のスキル、呼吸なんですけど……。これなんすか?』

「そのままの意味です」


 女神像の答えはあまりにアバウトだった。


「そっすか……」


 慎重に小声で質問したはずだったがジロジロと見られてしまう。


(雑魚バレはしてないよな……。大丈夫だよな?)


 この質問が命運をどん底に堕としてしまうことを、俺はまだ知らずにいた。


 俺の背後では、にやにやとほくそ笑む連中がいた。

 目をつけられてしまっていたのだ。


――――――――――――――――――――――――――

登場人物紹介①


神裂アルト

:スキル〈呼吸〉を使う少年。現世では難病で死亡。


姫宮イバラ

:パーティーの紅一点。アルトとは病院で一緒だった。


白咲トワ(ラビ)

:アルトの前に現れるうさぎのアバター。秘密があるらしい。


毒島アキラ

:パーティーの頭目。剛戦士。野心が強い


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