第6話 本当に

 ノイスールの南に面した軍港は、ダフネ帝国と同じように最大にして最強と呼ばれる軍港だ。その南の軍港を海軍少佐のエーミルが指揮をしている。

 

「今、ダフネが転覆するのを要していたのは、一体どこの誰なんだ」


 いきり立つ声音で告げられ、ゲオルグは目を上げた。


「確かに今の主力戦はダフネだが、小舟には帝国の旗印も何もなかったはずだ」

「それならノイスールの侵略に便乗した、別国の襲撃だとでも言いたいのか?」

「可能性は捨て切れない」


 視線を交わした二人の脳裏に、同じ顔の少女が浮かんでいるはずだ。

 男のように髪を刈り、軍服を着て剣をたずさえ、荒波にもまれる舟の甲板に立った細身の少女。

 

「ダフネの北の軍港が壊滅したなら、こちらも海軍で攻め込もう。陣営の立て直しと同時に、奇襲の指揮官の正体を突き止めるのも必要だ」


 海のエーミル、陸のゲオルグと謳われる双頭の鷲のエーミルは、すでに次の手に打って出る心づもりができている。

 

 

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