第5話 テオ大公

 だが、テオが二十一歳になったばかりの春の日に、前国王が逝去した。

 同時に十六歳の若く美しい少女が即位した。


 テオは目鼻立ちがすっきり整い、手足もすらりと長かった。表情に乏しく、口数も少なく、それでいて立ち振る舞いは優雅で洗練されていた。

 

 そんな容姿とは裏腹に、即位して間もなくテオ大公は異能者狩りを決行した。

 異能者はその能力で革命を起こし、政権を奪い取りかねない危険分子と定めた大公は、国中から異能者たちをやっきになって捕縛し、牢にぶち込み、殺害した。


「異能者たちは日が昇る前から起床して、畑作りや店の準備にいそしんでいる温和で賢明な者たちです。それぞれ異能を持ちながら、自ら異能を封印し、日々健康でよく働く彼らをなぜそんな」


 女王は波打つ金髪。白磁はくじのように肌理の細かい白い肌。長い睫毛に縁どられた素晴らしく大きな双眸は常にきらめき、ふっくらとした唇を険しく横に引いている。


 ここぞという時には持ち前の聡明さで夫に忠言してきたのだが、それが鼻についたのか。

 

 なよやかで、はかなげで、いじらしい。

 

 二十四歳のゲオルグはフランチェスカが誕生して以来の守役でもあり、側近中の側近だ。

 彼の中では目撃された美少女剣士がノイスールの女王陛下であるはずがない。

 たとえどんなに似ていても。




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