第十話『異人』 破
彼女がその
それまで浮ついた話の一つも無かった彼女は、初めて燃える様な情欲を感じた。
母と義父が自分達の世界でロマンスの思い出に浸っているのを
その時ふと、光に照らされて色合いを変える弟の横顔が、どういう訳かとても
そんな事を考え、彼女は我を忘れた。
そして気が付くと、彼女は年端も行かぬ弟の
寸での所で
弟は、その
交通事故だった。
突然の
弔問客を帰し、棺に眠る弟と家族だけで
当初、彼女は確かに
棺の小窓から
嗚呼、愛おしい弟よ、狂おしい
花火の下で見た色めく横顔よりも、悲しみの白が何と幻想的で美しいことか。
姉の顔が弟の顔に近付く。
唇と唇が触れそうになる。
気が付くと、そこは通夜を終えた愛別離苦の空間ではなくなっていた。
もっと
我に返った彼女は己の行いに
胸に秘めた思いに気が付いてしまった彼女は、とても弟との別れを悲しむどころではなくなってしまったのだ。
あろうことか彼女は「九歳の」「弟の」「死体に」欲情していた。
そんな観念から彼女を一時的に解放し、闇から救ったのは五年後の出会い――『
⦿⦿⦿
西の空が
だが、
「何故お前達だけ残されたか分かるか?」
成果の悪さに
他の五人は
「
「その通りだ、能無し共!」
訓練の初日からずっと、
何か気に入らない事、言い掛かりの余地があると、この様に意味も無く暴行されるのだ。
「ぐ、はっ……!」
「
「
普段はおちゃらけた彼だが、
だが、
「そんな眼をしたところで、今のお前は落ち
屈辱感を
「自明な筈だ、お前達が
身勝手極まりない論理、これこそが
それは自身を正義と確信する傲慢というよりは、多少の
当然、こんなものが
「なあ、お前もそう思うだろう、
「ヒッ……!」
異常な論理で暴力による支配を
「お前は特に、訓練に身が入っていない。何故なんだろうな? この
当然、協力は望めないだろう。
だが、今の彼女はその恨みよりも恐怖が勝っている。
「我々の使命は地球より重い! 怠惰は最大の罪だ! それは
「痛い! 痛い!!」
「だが、
あまりの暴言に、
「
「
立ち直るのが早かった
「愚か者共めが」
だが、
「三人の中でお前はまだマシな方だな。なかなか良い拳じゃあないか」
「
「ぐっ……!」
一方で、
だが、両腕を使える
「じゃあ、親を殴った罰と成長した子へのご褒美を兼ねて、
一・二発は
止めとばかりに、
「あ……あぁ……」
その背中に触れる
「さぁて、最悪の問題児二人をどうしたものか、この場で決めてしまうとするかな……」
しかし、この状況は悪い事ばかりではない。
何故なら、
『
『しかし、そう
『大丈夫です。……
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