第八話『剛腕』 急
対して
「
「当然でしょう。さっきも言った通り、どうせ
「そうですね。でもやはり、一つ目の要求が通ったという確証は欲しくなると思いますよ。だって、二つ目は通りませんから」
母娘の間に、険悪な空気が張り詰めていく。
「そんなの通じると思う?
「見棄てさせませんよ、
タイマーが動いており、録音状態になっている。
そして
「成程。今の収録時間を見るに、事務室に入ってきた時には録音を開始していたようね」
「ええ。
今度は
娘にあっさりと弱みを握られる
「
「これは困ったわねえ……。
言葉とは裏腹に
「
「分かっているでしょう?
「それは……そうですね」
その後、再び見せた不敵な笑みは、これまでの勝ち誇ったものとは意味が違う。
彼女は、この場で話す
「御母様、
「
「仰る通りです。だから、逆にその
「どういうこと? 何が言いたいの、
今度は
初めて娘の意図を読み取りかねているといった様子だ。
「
「応援? つまり、動くのは
「はい。
あまりの言葉に、
突如現れた国交の無い謎の大国に単身乗り込み、犯罪組織と自ら接触して拉致被害者を奪還すると云うのだ。
破天荒、そう評するに
「……
「渡航自粛要請――北朝鮮と同じ特殊な扱い、ですね」
「それを承知の上で、政府の閣僚たる
「嫌なら別に、容認して頂かなくても結構ですよ」
顎に手を当てて、
言外に、
ならば……。
「御母様、世界最強を目指す
「それは……そうね」
「分かりました。そういうことなら、
「ありがとうございます」
「但し、一つ条件を修正させなさい」
「修正?」
「さっきの録音、
母の、日本政府の助けが無くとも、
しかし、
迅速に事を
「直接的なスキャンダルではなく、
いつの間にか、
「上出来ね。あと条件を付け加えるなら、必ず帰ってくること、かしら。
後継者としての資質に満足した、そういう笑みだった。
「ああそれと、
その時、事務所の扉が開いた。
「先生、そろそろ御準備なさった方が
もう一人の秘書・
若く駆け出しだった五年前と比べ、高級スーツがよく
「ああ、もうこんな時間だったのね。久々に
そして、
「
「あら、しっかり
「まあね。後のことは
はい、と何の疑問も挟まずに答える
「用済みになったら切り捨てる。そうやって
「心外ね。
背中を向けた
そして
「
「やっぱり気に入らない……」
自分の感情を確かめる
⦿
「では、秘書である
対して
これで、
「パスポートの申請って一週間も掛かるものなんですね。正直、待っていられないわ……」
「我慢しろ。
現在、
この内、中露は
日本は
「それと、二つ程注意点を告げておこう。先ず、向こうでは『
「ヤシマ人民民主主義共和国、でしたね」
「その国家主席の孫・
つまり、彼自身に
「そしてもう一つ。これの方がはるかに重要で、
「
「百も承知です。態々
「本当だろうな?」
念を押す様に、
そんな彼を、
「大丈夫ですよ。現に
「そうか……」
「なら良い。今日はこれでお開きにしよう。何かあったら連絡してくれ」
「ありがとうございます」
「送ろうか」
有名な国産の高級車だ。
「結構です。自分の足で来たので」
「なんだ、疲れただろうから、休憩所にでも案内してやろうと思ったのに」
「
二人は
⦿⦿⦿
暴力での解決は望ましくない。
それはとても安易な手段だ。
そんなことに慣れ切った拳は
暴力で解決出来ない、絶大なる困難に対して何も出来なくなる。
彼を殴り付けた時、
父が亡くなった時、どうにもならない絶対的な力に
だから
誰かを守る肝心な時まで、
その肝心な時とは、当に今ではないか。
今、その
刃を研いでいる間に
後悔してもし切れないではないか。
だから、
皆を取り戻す
残されたままでなどいられる訳が無い。
何としても取り戻したい、帰ってきて欲しいから。
――一週間の後、
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