第七話『為動機神体』 急
「なんですか、このスペース?」
ぼんやりとした暗がりの中、
機体に入る時も、人間の出入り口にしては随分大がかりなハッチだと感じた。
そのまま操縦室に着席出来れば良いものを、
「
重要ではないことも確かなので、今は良いだろう。
「操縦席は
確かに、操縦席と副操縦席が何と呼ばれているか、という情報もどうでも良いだろう。
今回は
「脇に御座います二つの
「こうですか? うおっ!?」
瞬間、
まるで深い海の底に沈んだ様な、それでいて全身が温かく包まれている様な、そんな心地だった。
「
「今、
成程、言われてみればまるで巨大な機体が自分の体と同化したような感覚だ。
同時に、体の自由を完全に別の誰かへ委ねているような、奇妙な心地良さを感じる。
機体の肌感覚で、上から光が降り注いでいると分かったのだ。
「遠隔操作で出撃口を開きました。今から出ますよ、御覚悟を」
見渡すと足下には山野と、その隙間を縫う様に町村が見える。
だが、
「ぐええ……」
あまりの速度に
「
「仕方がありませんね。本日のところは試運転起動状態で徐行するのみと致しましょう」
「飛行具、異常無し。駆体動作、異常無し。兵装は
何をしているのか
「御気分は
「大分良くなりました」
「それは、宜しゅう御座います」
機体はUターンし、元の山へと戻っていく。
「
「よーく
落ち着いてきたとはいえ、発進するだけで
同乗しただけでこうなのだから、自ら操縦するとなると大変なものだろう。
「
「はい」
「ですが、もし仮に
「その
確かに、
だが
「戦闘の才能は無いとのことですけど、こっちは才能ありますかね?」
「全く期待しておりませんが、自然な形で
またしても
だが今、
(気合いを入れなきゃならないな……)
そんな
⦿
「これは栄養ドリンクか何かですか? 何だか随分元気になった様な気がします」
「
「つまり、ポーションのようなものですか」
「
元々、
彼が大きく疲弊していたのは、そういう事情もある。
故に、このサービスは有難かった。
「
「御心配なさらずとも、三週間分は充分保ちますよ。毎日お飲みになりたいと申されますのも織り込み済みで御座います」
「毎日、か……」
相変わらず威容を見せ付ける『
大変なことだが、少し心が躍りもする。
「しかし、今日みたいな偶然でも無ければ一緒に出歩くのは不自然なのでは?」
「どうせ
「他の
何やら、告げるのが心苦しいといった様子だ。
「
「何故
「お分かりになりませんか?」
「内通者、ですか」
「はい。どなたかは存じ上げませんが、
考えたくはなかったが、あり得ない話ではない。
無いにも等しい計画が昨日の時点で
「あの、
「はい」
「名目上、
「つまり、家事や
「別に、普通では?」
一方、
「承知しました。毎日の買い出しに御同行頂く、という名目で参りましょう」
女と二人で家事をする、となると、やはり
あの時の彼女も、
「方向性は整いましたね。後は毎日、昼は
「昼の訓練を頑張り過ぎて、見放される計画がパーにならないようにしないといけませんね」
「その心配は全く御座いませんから御安心を」
毒舌なところまで
「しかし、そう上手く行きますかね? なんか、都合良く考え過ぎな気がしますけど」
「と、
「いくらなんでも、
確かに、
だが、
「そこは
「本当に、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。……
どうやら
「ですから、必ずやあの男を破滅へと導いて見せます。どうか大船に乗ったつもりでお任せくださいませ」
太鼓判を押す
何か裏を含んでいる様な、それでいて詮索を拒んでいる様な、そんな雰囲気だ。
だが、
「ん? 候補者を放り出す?
「はい。なんでも、本日の訓練内容は
瞬間、
「早く言ってくださいよ!
「御安心を。発見現場に書き置きを残しておきました。館の近くまでお送りしますので、適当な近所でお仲間と合流してください」
一瞬焦ったが、
「すみませんね、何から何まで……」
「いいえ、お構い無く」
今からお客様モードではなく通常モード、家事を共に担う意識に切り替えておきたかった。
⦿
帰りの廊下は
おそらく、脱出の展望が開けて気分が上を向いたからだろう。
「
例を受けた
「あまり他人を簡単に信用なさらぬ方が宜しいかと。姉の如く付け込まれますよ」
「信じますよ。
「
何にせよ、一度頓挫した
後はあの
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