第五話『視界消失』 破
六日目の夕食時、
試験の途中で冊子を参照しても良いということは、それを前提とした課題を用意しているということである。
そして七日目の朝、
車内では
「
狭い車内で山道に揺られながら、
バックミラーに映った
「本日、試験を行うと
初日にも
車内の
⦿
山の中へ入ったワゴン車を道中で
「迷う恐れが御座いますので、どうか固まって歩かれますよう」
あまり森の奥深くに入られると遭難の恐れがある。
決行するならば早い方が良いだろう。
が、木々が少し開けた場所に踏み込むと、
「では、試験を開始いたします」
「ぐああああっっ!!」
またしても崖から転落させられた
不意打ちには驚かされたが、この状況は
「な、何しやがんだ!」
真っ先に怒号を上げたのは
だが、
状況は既に、
「う、
「あわわ……」
それを見た
七人が落とされたのは崖と言うより巨大な落とし穴で、四方八方全てが地層の壁に取り囲まれていた。
そしてその中には、
「
それは体長三
そして檻の主は、誰もが知る日本最大の危険な肉食動物なのだ。
「その羆は皆様が落ちた穴から何日も出られず、餌に有り付けておりません。これが何を意味するか、
要するに、これから腹を
「事前に皆様にお渡ししました『
無茶を言うな、と
理科の実験でもそうだが、実験の方法を座学で理解するのと実演するのとでは全く違う。
テキストを理解しただけでいきなり実践しろと言われても
「
すっかり目が覚めた様子の
彼が指摘したかったのは、すっかり
「兄ちゃんよ、ちゃんと身に付けとくべきだったな」
戦い方に関する内容は十巻もある長い冊子の末尾であり、到達するのに日数を要したのが痛かった。
一応、皆で練習しなかった訳ではないが、合同練習では誰も何一つ身に付かなかった。
「参ったな、
「ああ」
そして無情にも、羆は猛スピードで
空腹で追い詰められた羆に人間を恐れる様子は無い。
この野生の猛獣は平気で数人を犠牲にする。
そんな獣害事件が過去何件も報告されている。
羆が狙ったのは最も小柄な
悲鳴を上げ、頭を抱えてしゃがみ込む彼女に、羆の剛腕と
絶体絶命、
「
その際、
地面を一回転した
「大丈夫か、
「あ、ありがとう
安心したのも
この猛獣の恐ろしいところの一つは執着心である。
また、逃げるものを追い掛けずにはいられない習性も持ち合わせていた。
「
拳は光を放ち、一発で羆をふらつかせる程の
「徹夜で追加練習しといて良かったな、
「ああ。だがやっぱり全員を巻き込むべきだったよ」
前日、不安を覚えた
しかし、夜遅かったこともあって他の者達は寝静まっており、起こすことも出来なかったので、二人だけで練習するしかなかったのだ。
座学の試験だった場合に徹夜がマイナスになる懸念も
そんなわけで、
冊子によると、
それは自律神経が意識とは無関係に心臓を鼓動させ代謝を行うように、驚異的な耐久力と回復力を常時働かせている。
しかし、重い物を動かすには力を込める必要があるように、超人的な身体能力は何気無く発揮される訳ではない。
あくまでも人為的なものであり、神の威光そのものとは異なる。
或いは「
それは、自らの中に神なる意識を内在させ、その力を意のままに操るという
その内なる神の深部に意識を向ける程、より超常的な力を発揮することが出来るのだ。
力の深さには段階があり、薬を飲んだだけで身に付けられる耐久力と生命力は第一段階、
二人が一夜掛けて練習しなければならなかったように、第二段階の力を発揮するには
「
怒れる羆の剛腕が
「サンキュー、
「二対一で、力を身に付けたとはいえ油断するなよ。相手は日本でも最大最凶の野生動物なんだ」
「それはそうとして、
「今は良いだろ、それは」
下らない会話をしている隙に、羆が
この攻撃を躱すのは容易かった。
だが、二人は大きなミスを犯していた。
「きゃああああっっ!!」
羆は待避しようとしていた
すぐ近くに
が、その時羆の頭に強烈なラリアットが
ふらつきながらも驚いた羆は、不意に飛び掛かった女の方を
「しっかり守れ、
「
彼女は羆の反撃を躱しつつ、首元に光る蹴りを入れる。
その動きは何やら武術の心得があるように見え、また攻撃の威力は明らかに
「
「何だよ
「誘えよ!」
「知ったこっちゃないね。
(つ、強え……)
その女とは思えない強烈な武威に、
(なんでこんなにやたら強い女と縁があるんだ、
余計なことを考えてしまった
だが決定打にはならなかったようで、怒りに
「ありがとう、
余程怖かったのだろう、無理も無い。
「相部屋の
そして、
「他の連中は
依然として、彼らが危機に直面している状況は変わらない。
ならば、それを除去しなければならない。
「だってよ、有難いこったな。じゃ一丁やるか、
「ああ。さっさと片付けよう、
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