第五話『視界消失』 序
突然の崩落を受けて命からがら
出迎えたのは、装飾控えめなメイド服を身に
長い黒髪をポニーテールにした背の高い女で、目線は
「ようこそ、新たな同志の皆様。
必要以上に丁寧だが、どこか事務的で無感情な物腰である。
「それでは皆様、
「
蛇のような
「
「はい、その間のことは抜かりなく準備して御座います。『
「ならば良い。
「……承知させていただきました」
口振りからすると、この館を管理する使用人の
「では改めまして、皆様、どうぞ」
他に行く所の無い
そんな彼らを
部屋には簡易浴室が備え付けられており、各員の着替えが二着ずつと、何やら意味深な冊子が用意されていた。
「各部屋に御用意いたしました冊子『
用意された客室は五部屋、
部屋割りが決まったところで、
⦿
客室に入った
湖に沈んだ夕日が朱色の残光を揺らめかせていた。
祖国は、故郷は、思い人はその
(こんなもの……!)
望郷の念を怒りが
だが、そんな彼の思案に、浴場から聞こえたシャワー音が水を差す。
「くゎー、気持ち良いーっ! 疲れた体には
浴場で反響する軽妙な調子の声。
その主は共に
他は
(あいつ、相談も無く勝手に風呂行きやがった。
「はぁー、いい湯だったぜえー」
脱色された金髪と鍛えられた日焼け肌から水が滴り、布団の生地に染み込んでいく。
「おま、何やってんだよ!」
「ん?」
「
「なんだよ、一々細けーな。お母さんか?」
「割と普通のことを言っただけだぞ。まさかこの
「ふーん。ま、良いや。取り敢えず
「お前この流れでよくそんな厚かましい頼み事出来るな……」
「
「褒めてねーよ」
この男と相部屋で
「もう良いよ。取り敢えず晩飯後に皆で集まりたいからよろしくな」
「うぃー、おやすみー」
このままずっと一緒に居る気など更々無いからだ。
全員で協力し、一週間以内に脱出する――そう深く決意を固めた。
⦿
夕食後、
残念ながら
「みんな、聴いてくれ」
今居る場所が
「正直無謀なのは
全員が
おちゃらけた
「狙い目は最終日だろうね」
「あの使用人は
「成程。
「例えば外国に亡命する場合、大使館に駆け込むのがセオリーだ。
「でも、そもそもここが
「んなもん、あの女脅して聞き出しゃ良いじゃねえか」
しかし、この彼ならではの発想も役に立つのは間違い無い。
「ありがとう、みんな」
会ったばかりにも
特に、
それだけ、突然の崩落に見舞われ
特に、怪しまれないように冊子は読み込んでおこうと一致した。
⦿⦿⦿
その後の一週間、
その冊子には、
最後の一節を読み解くと、
「つまりあの薬には、
五日目の会合が終わり、部屋で
「ざっくりしてるな。まあそういうことらしい。もう少し言うと、薬を飲んだ段階で簡単には死なない生命力が手に入る。あいつらは崩落でこれを試したんだ。その後、訓練次第で超人的な身体能力と不思議な現象を起こす特殊能力を身に付けることが出来るらしい。ま、どうでも良いけどな」
高校生の頃、学校を占拠したテロリストのリーダーは校庭から三階まで跳び上がり、
あれはひょっとすると、初日に飲まされた薬と同じ効能に
自分は何年も前から既に、この一節に書かれた実物を目撃していたのではないか。
「ふーん……。ま、
彼もまた、初日の
「
「そうか……」
当たり前の話だが、
無念の死を遂げた
事情の知れない
それだけに、
「
意外と妹
こうして一週間が
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