第三話『事態急変』 急
海浜公園へ
特に調べていなかったが、幸いにして二十四時間開いている。
「ありがとうございます。帰りは始発に乗りますので」
タクシーを見送った
「タクシー代って高いんだな。こんな無駄金使って、何やってるんだ
アルバイトと奨学金で学費を賄っている
しかもそれで何かがしたかったというわけでもなく、ただ海が見たかっただけなので、本当に金を
とはいえ
まさかすぐにタクシーを呼び戻して帰るわけにもいくまい。
「行くか……」
自分から
月は既に西に傾いており、期待していたような美しい水面は見られず、ピアノの黒鍵の様な
だが、それでも海岸のデッキを歩くのは決して悪くない心地だった。
(
独り取り残された彼に次の恋が見つかったとして、彼女の陰を重ねずにいられるのだろうか。
(人っ子一人居ないな。こんな時間に開いている意味あるのか?)
そんなことを思った
(居たよ、しかもカップルだ。一緒に海を見るならもっとロマンチックな時間帯があるだろう。見せ付けやがってよ)
抱き合って濃厚な
「なあ女神様よ、
今後彼の見付ける恋が
そんな男に恋をする資格など無いし、
ならば、あくまで本物を求めるか?
本物の女神を求めて海の向こうへ旅立ったとして、その先で今も待っているとは限らないのに。
(もう一層、このまま海に身を投げてしまうか……?)
海を眺めながらの考え事は、思い出の懐旧へと移行する。
(行ったなあ、海釣り。結構釣れたし、あれは楽しかった……)
道具は
ただ、その時も最も数とサイズを上げていたのは
(結局何をやっても、
そう思うと、断然自分は
振り切るべきはもっと根本的な執着なのだが、彼は決してそこへ思い至らない。
そんなことをしていると、
雑念を振り払って思考がクリアになったことで、周囲の気配に敏感になったのかも知れない。
(誰か居る……。あのカップルじゃない。もう二人、近付いて来る……)
その時、若い男の野獣の様な怒声と女の絹を裂く様な悲鳴が夜の
先程まで愛を紡いでいた恋人達に、二人の男が
「な、何やってんだ!!」
助ける為に身体が勝手に動いた、といった感じだった。
驚いた様子のもう一人に、拳を
暴漢達が
「早く逃げろ!!」
「この餓鬼、よくも邪魔を!」
「よくもじゃないだろ、何のつもりだ」
ただ暗闇に紛れる黒い服を着て、
夜の闇ではっきりとは
(多分、例のテロリストじゃないな。
あの時以来の危機、あの時以来の戦いである。
(あの二人は……充分逃げたな、
助けた二人の様子が気になって
不覚を取った
が、
全く
つい先程、眠りに落ちる前に同様の妄想に
幼き日の記憶の中で、
意外と鍛えている
仲間を助けよう襲い掛かってきたもう一人にも、
殴り飛ばされた男の身体は、そのまま海に落ちた。
(成程な、良いことを思い付いたぞ)
別に意図して海に落としたわけではないが、
陸に残った男が
先に殴り落とされた男が岸に泳ぎ着き、デッキに上がろうとしていたが、
二人の暴漢は共に海中で
(良し、この隙に……!)
二人掛かりを相手にしつつも襲撃を
逃げられる時にはさっさと逃げてしまい、危険から遠ざかるのが賢明だろう。
「情けない奴らだ」
逃げだそうとした
三人目の男が
さっきまでの暴漢二人とは次元の違う重さの拳だった。
「か……は……!」
膝を付いた
「おい、さっさと上がって来い、
「げほげほっ、申し訳御座いません、同志
「こいつ、結構出来る男でして……。
どうやらこの男、単なる暴漢の仲間ではなく上の立場の人間らしい。
「予定変更だ。こいつ一人だけ持って行くぞ。先程の立ち回り、
三人の男達は気を失った
六月二日火曜日未明、平穏な生活の中で恋の
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