第67話 クローンが見た未来
ある日の夕暮れ、クローンの三人は美しい景色を見ながら話し合った。アイリスがジーンに訊く。
「ジーン、私達はクローンなんですよね? ノアからオリジナルの三人は核攻撃で亡くなったって聞いた……」
「ええ、そうよ。でも記憶を移植してある。核攻撃も含めダウンロード後の記憶がないだけでオリジナルと同じ……」
アルファが呟く。
「何か、オリジナルが俺達の身代わりに死んだような感じだな。カプセルに入れられた所までしか記憶がない。ありがたいけれど、なんでこんなことをしたんだ?」
ジーンは少し考えてから答えた。その記憶はある筈なのだが何故かはっきりしない。
「何でだろう。たぶん種の対立に一生を巻き込まれた自分やあなた達が不憫だったのかな」
アルファがアイリスの方を見て言った。
「そうだな。あの戦争で死んで終わりでは、とてもいい人生だったとは言えないよな」
アイリスは素直に肯定はしなかった。
「それはそうだけど、私達以外はみなクローンもなくて死んでいった」
もちろん、彼女はキリーのことが心残りなのである。
「そうねアイリス。特にキリーはあの後、私達のカプセルを守ることに一生をささげた訳ね。あなたの事を想っていたのね」
「でも運命だから仕方ない……」
ジーンは少しためらってからアイリスに言った。
「アイリス、私の冷凍装置で保管しておいたものがまだある」
「何ですか?」
「キリーの遺伝子よ。リリアムでの停戦協議の期間に入手した」
「え、それをどうするんですか?」
「キリーのクローンを作ることができる。彼に関しては記憶が無いけれど。作る?」
しばらくアイリスは考えてから答えた。
「お願いします……」
アルファがジーンに言った。
「さすがだな。やることが先読みで脱帽だ」
ジーンが微笑みながら返す。アルファはあることを思い出した。
「ジーン、そう言えばリリアムのラボでお前が俺を襲った時に……」
「え、ジーンが襲った!?」
アイリスが反応する。ジーンが訂正する。
「襲うなんて、表現が極端。そんな事はしていないわよ」
アルファが無視して続ける。
「あの時、俺の遺伝子だか何かをとって、コールドスリープの理由を言っていたよな」
ジーンも思い出した。
「そうね。思い出した。あなたを冷凍睡眠した大きな理由は純血アルファ種の復活よ。私とキリーがウイルスでアルファ種を滅ぼしちゃったけれど、私ならあなたの遺伝子をうまく使って、アルファの女性を誕生させることができる。この千年後でもアルファ種を対立させること無く復活できるのよ」
「アルファ種の復活……」
アイリスが言った。
「そう。今度こそは間違いなく平和にいくつもの種が共存できる世界が作れる。ほら、このメレオンの様に」
「まさか、こんな時代が来るとは……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます