第27話 アルファが最高峰の司令官になるまで

 ――アルファがブライトン卒業後、連合軍の上位司令官になるまでの話


 双子の兄アルファはブライトン特別専門学校を卒業した後、自国の軍隊に入隊し、即幹部として連合軍に加わった。

 不本意ではあるがX国軍と一緒にベータとの局地戦を進める。ある時の戦いの様子はこうだった。アルファが直下の兵士に尋ねる。


「ベータの拠点C2での攻略状況は?」


「膠着状態です。ベータは強固なシールドを構築しています。アルファ殿、クラスター弾の使用許可を」


「駄目だ。何度も言っているだろう。中の者達が死傷するようなやり方は許さん」


「そんなぬるい事を…… では、どうすれば?」


「フム。特殊部隊はどうだ? C2には地下通路があるはずだ。そちらから忍び込めないか?」


「可能ですが、少数が潜り込んだところで、袋叩きに遭うのが目に見えています」


「遅行性の催眠ガスを撒けないか? 無色無臭の新型ガスが入荷しただろう?」


 アルファの臨機応変で有効的な提案に部下は感心した。


「なるほど、それはいい作戦かもしれませんね。ええ、新型ガスは確かに入荷しているはずです。やってみます」


 連合軍部隊はアルファの提案通り、地下通路から催眠ガスを使って、まんまと拠点C2を攻略。


 C2は無血で開錠し、中で薬剤によって倒れていたベータ達は全員拘束された。その報告を聞いたアルファが部下に言う。


「お前達よくやった。だがベータの子供達はくれぐれも丁重に扱え、なにかあったら俺が許さんぞ。彼女達にはリリアムに移送されるか、軍の特別緩和センターで我々の管理下で過ごすか意向を聞いて選ばせろ。いいか、スタッフにはベータに対して高圧的な態度を取ったり、精神的なストレスを与えないように細心の注意をさせるんだ」


 こうして、アルファが管轄する連合軍部隊はベータの拠点を犠牲者を出さずに攻略していった。


 一方、X国軍中心の他の前線部隊は粗っぽい作戦を取るところが多く、その場合大概はベータの念力との間で全面的な戦闘になった。しかし、得てしてベータ側の被害は少ない。ベータは強力な念力と防御力を有するからだ。


 稀に激化した戦闘にアルファ自身が巻き込まれることがあった。多数の連合軍兵士が傷つく中でも、なぜかアルファだけはほとんど傷を負わなかった。


 ある時などは、アルファの部隊に無人機による爆撃が直撃したことがあった。


「みんな伏せろー 爆撃だ!」


 アルファが叫ぶ。次の瞬間、耳をつんざくような炸裂音と悲鳴が響いた。やがて土煙が薄くなっていく。後方の部隊が駆け付けて声をかける。


「大丈夫かー」


 瓦礫から、アルファだけがゆっくり立ちあがる。


「俺は、大丈夫だ。他の連中は……?」


 他に返事するものは誰もいなかった。アルファ以外は全滅だった。


「アルファ司令。何故あなただけが無傷なんですか??」


 味方の兵士は不思議がる。アルファには周りに話していない特殊能力があった。それはスカイやベータ1を上回る自己シールド能力である。

 

 その目に見えないシールドはベータからの攻撃を跳ね返すほどの能力がある。なので、アルファは最前線で活動することも辞さない。


 アルファは連合軍の中でも最高峰の有名な兵士兼司令官に育っていく。それでも連合軍とベータとの闘いは一進一退を繰り返した。

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