第21話 キリーとアイリス
――2054年3月20日 マヤ空港 事件収束後
キリー (X国出身) 2035年生まれ 19歳
アイリス(ベータ2) 2040年生まれ 14歳
空港のあるエリアでサーシャとアルファが出て行った後に5人が残された。スカイとレナは少し離れたテーブルセットに向かい合って座っている。
キリーは窓際の棚のような出っ張りに腰をかけて長い脚を組んでいる。そして顎を腕で支えて、傍で立っているアイリスを見定めている。
アイリスは視線を外そうともせず、キリーを睨み返している。
そしてエリスは二人を少し離れたところから見つめている。
キリーの口から鋭い言葉が飛び出しアイリスに刺さる。
「おまえ、ただのベータじゃないな?」
「だったら何よ」
「名前は?」
「くそくらえ!」
アイリスが吐き捨てるように言うと、キリーは笑みを浮かべた。
「フッ、ささくれてんなー。……お前とそっちのチビがさっき出した衝撃波は今までに見たことが無い威力だった」
「……」
「面白い話をしてやろう。これからリリアムに行くおまえらにはいい土産話になる。俺の祖国はリリアムを、ベータを殲滅しようと動き始めている。X国だ。知ってるな?」
「……」
「その戦略部隊の重要任務の一つは、能力が優れているベータから順にターゲットにして抹殺していくという事だ。俺の予想だと、おまえと、そこのおチビちゃんは真っ先にターゲットになる」
アイリスは内心、キリーの話に動揺したが、顔に出さないようにして強気に返した。
「それなら、あなたが今、私を殺せばいいじゃない」
「おいおい、野蛮だな。戦場でお前を殺せば勲章がもらえるが、ここで殺せばただの殺人犯だ。そんな違いも分からないのか?」
「とんだ
「ほー、怖えーな。あのパワー出されるのはごめんだぜ」
「じゃあ、その臭い口を閉じててよ」
キリーは窓際から離れて少し歩いた。
「お嬢ちゃん、どうして世の中の誰もがベータを憎んでいるかわかるか?」
「そんなの分かる訳ないでしょ」
「嫉妬だよ。嫉妬」
キリーは歩くのを止めて再びアイリスの方を見た。
「ベータが既に俺達旧人類、今アルファって呼ばれ始めているが、ベータが旧人類よりも優れた種であることは、もはや誰の目にも明白だ」
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