β1/SWITCH OVER

🌳三杉令

未来編(31世紀)

第1話 マーキュリーと双子の子供

 西暦3060年。


 人類学者である若い女性マーキュリーは5才の双子の母親でもあった。

 家族は皆、髪の色が薄く、眼の色素も薄い。

 アルビノに近いかもしれない。


 肌の色が白く三人とも美形で、特に男の子は飛び切りの美男子である。


 娘の名はアリエル、男の子はロキ。ロキは優しい子だ。

 夜、マーキュリーは二人を寝かしつける時に、いつも絵本を読んであげている。


 ロキがマーキュリーに絵本をねだる。

「お母さん、『ちいさなくれよん』がいい」


 アリエルが反対する。勝気な女の子だ。

「今日もアルファだよ! ロキは黙ってて!」


「またあ?」 ロキは不満だ。


 アリエルのお気に入りは『最後のアルファ』。


 アルファは千年前に新人類と勇敢に戦って散った最後のホモサピエンスの男だ。


 精悍な顔つきと体、こんな頼もしい男性は現代(未来)では皆無である。

 

「まあまあアリエル、ロキの事も考えてね。ロキ、明日は『ちいさなくれよん』にするね」


「明日? うん…… いいけど」


 ロキは少し納得がいかないが、あきらめた。


 実は母親もアルファがお気に入りなのだ。


(だって、いい男なんだもの)


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 この31世紀の未来、新人類にはβ1(ベータワン)とF1(エフワン)という2つの種が存在しており、21世紀まで長く生態系のトップとして君臨していたホモサピエンス(現人類)は絶滅していた。 


 この未来は女性が優位な社会であり、特にベータ1は超能力も使える。それに対して男は、ただ優しくて可愛いだけの存在なのである。


 第2話以降ではマーキュリーが絶滅したはずのホモサピエンスを探しにメレオン島に行く。

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(2024.2.11)

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