事故で記憶喪失の俺、自称彼女を名乗る女に監禁されてヤバすぎる!
カイマントカゲ
上
目を覚ますとそこは病室だった。そして何も覚えていなかった。
自分の名前さえも。
先生の話によると俺は自宅のアパートの2階から転落したらしい。だが理由は不明。当事者である俺が覚えていないからだ。でも自殺は考えられにくく、おそらく誤って事故で落ちたのではないかというのが警察の見解らしい。
そしてその結果、怪我としては軽傷だったのだが、打ちどころが悪かったのか記憶喪失になってしまったらしい。生活に必要な事は大丈夫なのだが、人間関係や出来事などは忘れてしまっている。
これからどうしようか……なんて悩んでいるとバンッと勢いよく扉が開かれた。
「
入ってきたのは黒髪の綺麗なフリルとリボンが特徴的な白いワンピースを着た美少女だった。
「えっと……誰……ですか?」
「そんな! 私だよ? ひより!
平野ひより……彼女だと言っているが全く思い出せない。俺にこんな可愛い彼女がいたというのか? それに千尋というのが俺の名前なのか?
「ごめん……何も思い出せなくて」
俺は申し訳なく思い、俯いてそう告げる。
すると彼女……平野ひよりは今にも泣き出しそうな顔で俺の手を握った。
「ううん。謝るのは私の方。ごめんね、思い出せなくて一番辛いのは千尋くんなのに……」
彼女とは言うが、今は俺にとって見ず知らずの可愛い女の子。そんな子に急に手を握られて俺はドキドキしていた。
「ありがとう……えっと、ひより? って呼んでたのかな?」
「!! そうだよ! きっと神様が私の名前だけは千尋くんの頭の中に残してくれてたんだね! 嬉しい!!」
ひよりはそう言って嬉し涙を浮かべながら俺に抱きついてくる。
俺は何となく彼女だというので適当に下の名前で呼んでみたが、どうやら正解だったらしい。まぁ大体名前で呼んでそうなもんだが、こんなに喜んでくれるのならよかった。
それから一時間ほどひよりは俺との思い出を色々と語ってくれた。
俺たちの出会いの話、初めてのデートの話、そして今は二人で同棲していると言う事も。
「じゃあ私そろそろ帰るね。千尋くんがいつ帰ってきてもいいように部屋綺麗にしておかないと! あ、病院の手続きとかは全部私がやっておくから、千尋くんは気にせずゆっくりしててね」
「うん、ありがとう助かるよ。またね……ひより」
「またね、千尋くん」
そして数日後、体は軽傷だった為すぐに完治し退院した。もちろんひよりが迎えにきてくれて。
「さ、帰ってきたよ二人のお家に」
俺はひよりに連れられて二人で住んでいるという小さなアパートの201号室へと入る。
部屋の中は決して広いとは言えないが、綺麗に整理整頓されていた。
「ここが俺の家、か……」
台の上を見ると俺とひよりが写った写真が何枚も飾られており、よほど仲がよかったのだろう。それなのに忘れてしまうなんて俺はなんてダメな彼氏なんだろうか。
そんな事を考えていると、背後からひよりがぎゅっと俺を抱きしめてきた。
「ひより……?」
「千尋くんが入院してる間ずっと一人で寂しかったの。だからたとえ記憶喪失だとしても嬉しくて……!」
「ひより……!」
「んっ……」
俺もそれに応えるように優しく抱きしめる。密着した事でより、ひよりの暖かさを感じた。そしてひよりは蕩けた表情でこちらを見上げる。その顔を見ていると、俺の心臓の鼓動がひよりに聞こえてしまうんじゃないかと思うほどになっているのを感じた。
「あっ! そうだ、紅茶いれるね。千尋くんがいつも飲んでたやつ……覚えてないかもだけど」
数秒見つめ合っていたが、ひよりはふと思い出したようにそう言って台所へと向かう。
「そ、そうだったのか。ごめん何も思い出せない……」
「ううん、気にしないで。それに飲んでるといつか懐かしくて思い出すかもだし……はい、入ったよ」
ひよりは紅茶を淹れたカップとクッキーやチョコのはいった皿も用意して運んでくる。
「お菓子まであるんだ。ありがとう、ひより」
「昨日買っておいたの。どっちも千尋くんが好きだったやつだよ」
しかし本当にこんないい子が彼女にいながら何も思い出せないのは本当に申し訳ない。
俺は感謝しながら紅茶を飲む。
「うん! おいしい!」
「本当? やっぱり体は覚えてるんだね、なんて」
その後もひよりから記憶を失う前の話を色々と聞きながらこの至福の時間を過ごしていった。
「ふー、おいしかった……ふぁぁ、なんか食ったら眠くなってきたな……」
「ふふ、眠くなったら寝ていいよ。片付け私がやっとくから」
そう言ってひよりは空になった皿やカップを流し台へと運ぶ。そして洗い物の音を聞きながら俺は何も覚えてないくせに、懐かしい気分になりながら意識が薄れていくのを感じていた……。
♢♢♢
「んー……寝てたのか?」
目を覚ますと部屋は真っ暗になっていて、ひよりの姿も見当たらなくなっていた。
床で寝転んで寝ていたはずもベッドの上に寝かされていた。
「ひよりはどこか出かけたのかな?」
ひよりを探そうと思い立とうとした瞬間、ぐいっと体が引き戻された。
「ん?」
暗闇に少し目が慣れよく見てみると両手両足はベッドに括り付けられ、身動きが取れなくされていた。
「えっ……なんで……!?」
俺は体を揺らし拘束から逃れようとするが、かなり頑丈に括られているようで全く外れそうになかった。
「動けない……! くそ……ひよりはどこに?」
ひよりの姿を探そうとした瞬間、暗闇の中にうっすらと人影が見えた。
「あ! やっと起きたんだね千尋くん。起こす手間が省けてよかった〜」
「ひ、ひより……」
パチッとスイッチを押す音が聞こえると部屋の明かりがつく。
「それじゃ、お楽しみ時間の始まり……だね!」
そしてそこにいたのはバスタオルを巻いて、不適な笑みを浮かべるひよりだった……。
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