件名:ホームステイ先がヤバイ 全1話

件名:ホームステイ先がヤバイ

 大学の頃の知り合いからメールが届いていた。




件名:ホームステイ先がヤバイ

本文:

 ホームステイ先がヤバイ!

 別に人間トラブルって訳じゃないんだよな。ホストマザーは料理上手で、ホストファザーは明るく冗談を飛ばす人だし。本当にいい人達だよ。


 ただいくつか困った事があってさ。誰もいない部屋でテレビが付いたり、一晩中何かが家中を駆け回る音が聞こえたり、バスルームが手跡だらけになったりしてるんだよな。


 で、ホストマザーに聞いてみたらさ、


“Don’t worry. This sometimes happens in the East Coast”

 だってよ。ちなみに文法はあってるか分からんぞ。俺が思い出して書いただけだからな。じゃあ英語で書くなって? 何だよ、かっこつけちゃ悪いかよ。


 まあ、あれだよ。この国って東海岸から開拓してった国だから、東の方が歴史古いんだよな。だからかな、ホストファミリーが特別そういう人なのかもしれないけど、西との対抗意識があるっていうか、霊的なものが出るのは歴史がある証拠って考えてるっぽくてさ。

 だからホストファミリーはさ、心霊現象が起きても全然気にしてない訳。先祖と一緒に暮らせるって素敵じゃないかって聞かれてさ。まあ、俺も今のところそんなには困ってないけどさ。


 じゃあ別にいいだろって? 俺もそう思ってたよ。


 でもさ、バスルームの手跡見たらそう思えなくてさ。


 人間の霊じゃないんだわ、ここにいるの。


 それをどうやってやんわりと英語で伝えたらいいか、T●EFLで高得点をたたき出したお前に相談したいんだよ。





 メールを削除した。彼がホームステイ先で変死してから今日でちょうど20年。毎年命日になると、このメールが届く。何があったかしらないけど、そんなに接点のなかった自分にばかりメールを送るのはそろそろやめてほしい。いい加減成仏してくれないだろうか。

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