第20話 強さ


ここは……



体が痛い……



目を開けると、テントのような天井が見える。ランタンが吊るされほのかに明るい



起きてみると大型テントの中にテーブルや椅子がありベッドに寝かされていた。


「タカヤ様!!!気がつきましたの!!」



入ってきたソフィアが叫ぶ。



バタバタとアリスとマックスがテントに入ってきた。


「起きたか!!!タカヤ!3日も起きないから我輩は…我輩は…」


涙ぐみながら、マックスが近づいてくる。

あれ?脚が…千切れてたはず…



ベッドから降り…立ち上がるが、まだ体の感覚がおかしくフラフラする。



「タカヤ……」


ホッとしたような少し嬉しそうな顔でアリスが俺の前に来る。






パーーーーーン!!!






俺はアリスの顔を平手打ちした……



何が起こったか分からないという表情で呆然と立ち尽くすアリス




「なんで逃げなかった…」




「俺の声…聞こえてたろ…どんだけ心配したと思って……」



後は声が出せなかった。



「こっちだって……」



「アリス様!!!」


飛び出して行くアリスと、それを追うソフィア。



立ち尽くしシンとした沈黙が続いた。


どれほどだろう…時間の感覚もわからない…



「のう、タカヤ…外に行かんか…」



言われるがままマックスに連れて行かれる。


頭の中がグチャグチャだ……





なんだよ…これ…


現場で見ていたはずだが、夜に見ると別物に見える。



街が瓦礫と崩れた建物で廃墟と化していた。

血の…跡も…たくさん…




「街の…人は…」


「あの後、命があった者は完全に治った…が……即死した者と街の外に居たものは…」



ボーーっとする、何も考えられない。



「乗れ!!」


マックスに乗る。


何処に行くんだろう。



……………



着いたのは森に囲まれた湖畔だった。


「あんなとこに居ては気も休まるまい」




腰を降ろし月明かりが反射する湖畔を見つめる。




「マックス……なんで…俺…弱いんだろ…」


情けなかった……何も出来ない…悔しい…


アリスを叩いたのは、完全に八つ当たりだ…




偉そうなこと言っておいて何もできない…自分の感情をアリスにぶつけてしまった。




「のう…タカヤよ…強さとは武力で捻じ伏せることを言うのか?」




「……でも…俺は何も」


「我輩は何度も助けられたぞ」



「それは!運や誰かがやったことだ!!!!」



情けなさを吐露するように叫ぶ



「誰かがやって何が悪い!!」



言い返すように叫ぶマックス



なに?



しばらく静寂が続きマックスが口を開く



「こんな話があってな、我が父ホクサイが妖兎族の戦士と出逢ってな…最初は捻じ伏せたらしいのだ」




「当然だ、妖兎族は戦闘には向かん、特別な腕力もサイも無い」




「だが、その戦士は折れなかった、誰もが無理だ、やめろ、無駄だと言い非難したが腕を磨き、我が道を貫いた」



独り言をつぶやくようにポツポツと語るマックス



「結果、ホクサイが敗北するほどの戦士となり、この戦士になら我が人生を託すに値すると忠誠を誓ってな」



「ありえんだろ…兎が虎に勝ったのだ、その男の姿についてくる者が増えてな!結局あれよ、あれよと国王にまでなってしまった」



「勇者エドワード・マール、我が父の主だ」


マックスは我が事のようにワクワクとした顔で語りかける。



「それは、凄いけどさ、俺は違うだろ」





「そんな事はない!!!!」





「…!!」


「タカヤは誰もが逃げ出すところで逃げなかった!」


「我輩の窮地を全て救ってくれた!!!」


「奇跡も誰かの心を動かす力も!諦めず護る、その姿にこそ宿るもの!!」




「しっかりしろ!我が主タカヤ・シンドー、そなたこそが時代を変える英雄なのだ!我輩は信じているぞ!!」





マックス……





『それにアリスを護ったのは間違いなくお前の力だ』


は?


『感傷的になってるところ、すまないが俺は現実しか言わない、そしてフェンリルを倒せるのは、お前とその剣だけだ』



は?は?





「そ、それに……タ…タカヤ…我輩ははじめて逢った時から…その…そなたのことを……」




ガサガサ……


湖畔を囲む森から誰かが出てきた


「アリス…」


月明かりがアリスを照らした…



「悪かったよ…俺は……」



アリスは駆け寄り、俺を抱きしめて




キスをした






は?は?は?








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