第5話 私が治してあげるね!

 少しでも長くティオとの時間を過ごす為に、リタは朝食を済ませた後すぐに歯磨きや洗顔をしてティオと出掛けた。

 出掛けた先は敷地内の庭にあるたくさんの花壇がある場所であった。聞けばその花壇はリタの誕生祝いに両親が造った物であるらしく、サティを除く子供達を始め使用人もすべてドン引きしたほどであったとの事。ちなみに、当時植えた花の種はサティがあらゆる花屋から買って植えたものであった。


「綺麗でしょ?このお花さん達はね、私が毎日お水をあげているからこんなにきれいなんだよ!」

「へえ~すご~い!!」


 ティオはたくさんの花壇を見て眼を輝かせていた。





 一方で、そんなリタとティオの仲良さげな場面を見て嫉妬の眼差しを向けていた。


「むぅ~!!あの花壇のお花は私がリタの為にいろんなお花屋さんから買ってプレゼントしたものなのに~!!」



 リタが花に水をあげていると、ティオにもやらせようとして如雨露を持たせ背中から支えるようにティオの後ろに回ってやり方を教えた。勿論ティオの背中にはまたしてもリタの胸が当たった状態であった。



(はわわ~また当たってる~!!!!)




 水をやり終えた後は、部屋に置く観葉植物用に植木鉢に花を植え替えようとしてそれを2人でやるが、その内の花の1つの薔薇の棘がティオの手に刺さる。


「イタ…」

「あ!大丈夫!?」

「棘刺さった…」


 ティオの手をよく見ると、血が少しだが垂れていた。大した怪我では無いが、リタは大げさに慌てていた。


「大変!!待ってて…」


 そう言うと、リタはティオの手に自分の手を添えるかのように近づけた。


 そうした時、少しだがけがをした部位が光り、なんと傷が塞がり血も止まった…

 

「え!?怪我が治った…リタさん…これって…?」

「私の治癒魔法だよ」

「治癒魔法?」


 リタがやったのは、傷を治す魔法であるであった。

 

「うん、私生まれた時にこの魔法をもらったんだけどね、魔力が少ないからこんなふうに小さな傷しか治せないの…」


 リタは残念そうな表情で自分の魔法についてティオに説明した。しかしティオは…


「すごいよ!怪我を治せる魔法なんて!!!」

「えへへ…そんなに褒めなくてもいいのに…」


 自分の魔法を褒められた事でリタは少しだが照れていた。


 やがて時刻は正午を迎え、昼食の時間となった。昼食は邸宅の2階にあるバルコニーで取る事となった。昼食は綺麗な黄色いふわふわのオムレツだった。2人はそれを幸せそうな笑みを浮かべながらモグモグと食べ、近くに居たメイドは微笑ましく笑っていた。


「このオムレツも美味しい!!」

「美味しいね!!」


 幸せな笑みを浮かべて食べてる中で、ティオはさっき見たリタのについて気になっていた。


「そういえば、リタさんのさっきの魔法って…」

「え?治癒魔法の事?」

「僕、前いた所で治癒魔法の事で話をしていたのを聞いた事があるんだけど…」


 ティオの話によれば、治癒の魔法は彼にとって非常に珍しい物であったようで、それでさっきは驚いていたのだった。


(そんなにすごいのかな?私が使うのよりすごい治癒魔法使える人はたくさんいるはずなのに…)


 そんな不思議な想いを抱いている中で食事は終わった。


「じゃあティオ、今度は私の可愛いお友達を紹介するね!」

「お友達?」


 そういうとリタはティオの手を引っ張って、屋敷の外の森へ向かった。


 


 一方で、別室にてチェスをしてた兄、サイガとユーリがなにやら話をしていた。


「ユーリ、どう思う?」

「何が?」

「あの子、ティオの事…」

「ティオ、ああ、リタが拾ってきたあのガキか?」

「拾ったって…」


 不満げに愚痴のように発言したユーリにサイガは唖然としていた。


「リタがいうには、あの子、ティオはどこから来たのか分からない…それだけの事だけど…」

「でも、孤児院に引き取ってもらうんだろ…」

「そうだけど、リタがどう思うか…あの子の事結構気に入ってるみたいだし…」

「あいつ、昔から小動物や自分より年下の子供とか好きだからな…将来はそういった仕事に就きたいとかも言ってたよな…」

「そうだね…魔力の量によっては仕事も限られてるから、リタの場合、保育士か動物園の飼育員とかお似合いかもね…」


 リタの将来を何気なく話していた2人であったが、ユーリは何か思い詰めていた。


「なあ、兄貴、もしもの話だけどよ…」

「ん?」

「リタに、"使い魔"でも付けさせれば少しは変わるんじゃないか…」

「……使……か……」


 場所は戻って、リタはティオを連れて例の森へ来ていた。


「ほら、この子達が私のお友達だよ!」

「わあ!可愛い!!」


 リタの言う友達とは、例のリス達であった。

 リス達はリタの手の上や、頭、肩に乗っていて、まさにリタと仲良しを表しているようでった。


「いいなあ、僕も抱っこしたい!!」


 そう言うと、リタはティオにリスを一匹渡していた…。



 だが…


「グワアアアアアアアアアアアア!!」


「え!?何!?」


 突如として、森の奥から謎の奇声が聞こえた・・・

 そしてその奇声はどんどん2人に近づいていき、その正体は2人にとっても想像も付かない物であった。奇声の主は、恐ろしい外見をした巨大な凶暴生物であった。


「何……あれ……!?」


 そんな巨大生物を見てティオは尻もちをついてしまった。

 まさに今の2人は生物にとって、かっこうの餌に過ぎなかったかのように見えていた……。

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