安らかに眠れ。
第1話
ただ目が惹かれた。とても、とてもとても綺麗で、その艶やかな髪に、馬鹿みたいに整った凜とした顔に、ただその容姿に見惚れていた。
少し窮屈な、新品の服の独特な匂いがする制服を着て、中学の時とは違う、この高校の新しい体育館の匂いに包まれて。真ん中あたりの髪が少し薄い、いかにも校長であると主張しているような先生が、無意味に話を続ける。この人は、さっきから、「お、終わりそうだな」と思わせるような話の区切り方を何度もするから、意地悪だ。
そして、なんとか校長の話が終わったところで、ふと周りを見渡した。みんな心なしか少しげっそりとしている。
ちらりと、さっき見つけた彼女の方を見たら、つまらなそうに髪をいじっている。その姿が、愛らしくて、つい頬が緩む。こんなに可愛い子を毎日拝めると思うと、今から始まる高校生活が、少し楽しみになってきた。それほどまでに、わたしは彼女の容姿に惹かれてしまった。
あれから2ヶ月ほど経った今。その子について、なんとなくわかったことは、その子が絡む友達は、校則を破ったり、授業中に騒いだりするような、いわゆる一軍のグループの人たちばかりだということ。中学のときとは違って、カーストがはっきりしていて、なんだかみんな喋りかけにくくて、なんというか、とても嫌な感じだ。けど、絡んでいる子たちがそういう風なだけであって、彼女自身は喋りかけにくいオーラなどはなくて、誰にでも笑顔で接していて、たまに授業中にスマホを触っているところは見るけれど、性格はとても良さそうな子だ。
その子から直接聞いたわけではないけど、名前は、
そしてもう一つ。わかっていたけど、やっぱりそんな可愛くて、優しい子にはそれ相応の、かっこいい年上の彼氏がいる、ということだ。
悔しいなぁ、わたしの方が絶対先に橋本さんに惚れていたのに。
と、わたしの初めての一目惚れは、早くに散ってしまった。
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