第31話 Shadow


「おい。お前うちの島で何勝手やってんだよ」

「は?俺ら冒険者に関係ないだろ?なぁ?」

「わかってないみたいだな」 

 黒いパーカーを着た男は男達に歩み寄る。

「はぁ、サイキッカーだっけ?それ本当に早ってゴブッ!!」

「だからいってんだろ?人の島で何やってんだって?」

「おい!橋本!橋本?おい」

「誰か救急車!それか、ポーションを」


 ♦︎


『昨晩、葛飾区で殺人未遂事件が』

 と流れてるテレビを無視して、

「あっそれ俺のプリン!」

「私のでスゥー」

「テメェで買いに行けよ!」

「いやぁー!押し倒されるウゥゥ」

 プリンを持っていう言葉かよ!

「くそ!それを言えば良いと思って!」

「本当に押し倒しても良いんですよ?」

「うるさいうるさいうるさい」

 本当に鈴木さんはやって良いことと悪いことの区別がついてない!プリンは絶対ダメなのに!

「はいあーん」

 スプーンで救って渡してくるが、

「違うんですよ根本から!」

「何がですか?」

「プッチンするでしょ!」

「いや。洗い物めんどくさいし」

「あーだめだ!それは酷い」

「ひどくないしちゃんと美味しく食べますって!」

「あのプルプルを味わってこそのプリンですよ!」

「わかりましたよ。その熱意はなんなんですか」

「プリン大好きなんですから!」

「はいはい買ってきますよ」

 

「っとに。なんでそんなことで買い物行かないといけないかなぁ」

 でもそんなとことも好きなんだからしょうがないよねー!

「プリンプリン!」

 最後の一個を取られてしまう。

「あ、ごめん最後の一個」

「あー、しょうがないですよ」

「いいよあげる」

「え!ほんと!ありがとうー!」


 

「いいんですか?あんなに欲しがってたのにあげて」

「まぁ、良いよプリンくらい、今から始まることに比べたらね」

 黒いパーカーにShadowと描かれていた。


 さぁ、SHOWTIMEだ。



 冒険者狩りが始まったのはそれからだった。冒険者達は身を潜めており見つかるとShadowからは徹底的に追い回される。


 それを知らない我らが白井は普通に探索に行っていた。だって似たような格好だしな。


 “ヴヴッ”

「おー。どした?」

『そこにシャドウって書いたやつはいない?』

「ん?あ、流行りかなんか?全員着てるよ?」

 全員が一斉にこっちを見る。

『あちゃー』

「おい!」

「あっ俺のスマ…ホ」

 俺のスマホは足蹴にされバキバキにされた。

「お前なんかちげえと思ったらサイキっガハッ!!」

!!!!

「俺のスマホまだ新しいのに!何してくれてんだよ」

「ウッセー!それどこじゃねえだろ!やっちまえ!」

「ウゼェな!テキトーに遊んでやる」

「いぎゃ!」

「あぎゃ!」

「何が起こってるんだ!」

 影潜りでクナイを投げているだけだ!

 俺の悲しさを知れ!

 全員が倒れたところで影から出る。

「シャドウって名乗るんならこれくらいできろっつーの!それより俺のスマホ、修理代いくらかかるかな?」

 俺はその足でスマホのショップに向かう。


「な、なんなんだよあのつよさ」

「あ、あれがマスターの言ってた」

「勝てるわけねえよあんなの!」

 黒いパーカーの男達は思い思いに逃げた。


 葛飾ギルドマスターはほっとしていた。

「やれやれやっと白井さんが動いたから良かった」


 桐生院に呼び出され夕食だ。

「で。黒いパーカー男達にスマホダメにされた」

「ハハッ、だからご機嫌斜めなんだな」

「あたりまえだろ?お前だってそのバッグ汚されたら怒るだろ」

「あー、そいつを消すね」

「だろ!」

「そいつらは最近出てきたサイキッカーってやつらだな」

「ほーん、サイキッカーね」

 超能力者ね。

「その元凶君は大層君にご執心らしいよ?」

「は?俺のせいなわけじゃないよな?」

「多分君のせい」

「嘘ダァー!知らないもんそいつのこと」


「そんなもんさ有名人は」

 ワインを一口飲む桐生院。

「さあ、どうするんだい?」

「はぁ、ぶん殴っていうこと聞かせるしかないんじゃないか?」


「それで済めばいいけどね」

「で?分かってるんだろ?」

「あぁ」

 スマホにマップが送信される。

「ここがアジトになってるらしい」

「へぇ。廃工場ねぇ、なかなか渋いセンスだこと」

「まぁ、うちも困るからねー。色々と」

「はいはい。わかりましたよ」

 オキヌは食べ終わってもう寝ている。

 鈴木さんは心配そうだが。

「まぁ。それだけ悪いことした子にはお仕置きだな」

「若いんだからほどほどに」

 俺はビールを飲み干すと口を拭う。

「さてなんのことやら?老骨に鞭打って行ってきますよ」


 次の日、さてこの辺りだけど、

 廃工場はすぐに見つかった。

「さて。何人がいるのかな?」

 中に入るとがらんとしていた。

「おーい誰もいないのか?」

「あ、白井さんだ!本物だね」

「俺はそんなに有名人じゃないぞ?」

「早速だけど本物か試してみていいかな?」

 ゾロゾロ出てくるわ。黒いパーカーを着た奴らが。一体何人くらいいるんだ?

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