第6話 桐生院


「さっぱりしてよく似合いますわ!」

「そ、そうですか?ありがとうございます」

「そうだ今晩のパーティーにいらっしゃってちょうだい!その格好なら大丈夫だから」

「え、えぇ、いやこれ以上はさすがに」

「いいじゃん!いこうよー」

 ヤマトくんが攻めてくる。

「あはは、ではすぐにいなくなりますがいいですか?」

「もちろん!お帰りの際は鈴木に言ってください」

「はい!」

 とついて来たのはいいが船上パーティー?!

「う、うわぁ」

「どうされましたか?白井様」

「いえ、私が場違いなのがヒシヒシと伝わって来まして」

 みんなが見てる気がしてならない。

「そんなことはありませんよ、あなたはふさわしい格好で一番輝いておいでです」

「鈴木さんも口が上手いですね」

「本当のことですので」

 あはは、なんで俺ってばここにいるんだ?

「それじゃ僕はもう帰ろうかと」

「まだ始まっていませんよ、あ、始まります」

 壇上にグラスを持った人が立つとワァァァァァァと歓声が沸く。

「ゴホン、我が桐生院グループのパーティーにようこそおいでくださいました。今宵は心からお寛ぎになりそしてご歓談くださいませ。そして今宵サプライズゲストとして私の息子、ヤマトを助けてくれた方にも来ていただいてます!みなさん盛大な拍手を!」

 聞いてないよ!え!眩しいし!

「トラックに轢かれそうな私の息子を助けてくれた様で心からお礼を申し上げます。ありがとうございます」

ワァァァァァァと歓声が沸く。

 あぁ、これで帰れない。

「さぁ。それでは今日という日にカンパイ」


「白井様、大丈夫ですか?」

「帰ってもよろしいですか?」

「海を渡るつもりですか?」

「え?」

「この船はいま海上にいます」

「ええー!」

 聞いてないよ聞いてない!

「すこしいいかな?」

「は、はいぃ!」

「君が私の息子を助けてくれたのだね、良い青年だ。名前は?」

「白井健人と申します」

「そうか、私がいては緊張してしまうね、白井くん本当にありがとう」

「当然のことをしたまでですので」

「あはは、なかなか人にはできないよ。それじゃ楽しんでくれ」

「はい!」

 はぁ、心臓が止まるかと思った。

「白井様、何かお持ちしましょうか?」

「いまなにもはいらな」

 殺気がしたな!どこからだ?

「白井さま」

「しっ!」

 鈴木の口に手を当てる。

 そこだ!

“パーン”

 という音と共に男が1人倒れると押さえつける。投げたのは影収納に入ってたダガーだ。

 男は拳銃を取り落として俺に捕まっている。

 シーンとしてる中、

「だれか?警備員さん??」

「何をしている!早く動け!」

 桐生院の一言で動き出す。

 ダガーを抜いて影収納に仕舞うと警備員にあとは任せる。


「ありがとう白井君、二度も助けられたね」

「いえ。何か怪しい動きをしていたので」

 これは誤魔化しが効かないぞ。

「何かのプロかね?」

「いえ、一般市民なので端っこで飲んでますんで」

「白井君、是非ともうちの会社に来てくれないか?」

「え。ええー、一般市民ですよ?」

「いや、君みたいな人がいいんだ!調べさせたが本田商事の人らしいな。引き抜くからよろしく頼むよ」

 うわぁ、調べられてたのか。

「は、はい、よろしくお願いします」

「よかった、ではまたな」

「これで同僚ですね」

「鈴木さん、まだ同僚ではありませんよ」

 どうとでもなれと酒を飲んで、つまみを食べる。美味いな。


 次の日は鈴木さんが迎えに来てくれたが俺の家は古くてボロいアパートだ。高級車が目の前にあるのは目立つな。

「おはようございます!」

「おはよう白井さん」

「ここでは目立つので」

「そうですね、では行きましょうか」

 と向かったのは喫茶店だった。

「あの?」

「朝ごはん食べてませんよね?一緒に食べましょう」

「はい」

 コーヒーとサンドウィッチを頼むと、

「白井さんは何をやっていたのですか?」

「ゴホッ!え?いきなりなんのことですか?」

「あの身のこなしは普通じゃありませんでしたし」

「あはは、護身術を少々」

「そんなレベルじゃないんだけどなぁ」

「あはは」

「まぁ、いつか教えてくださいね」

 っと、ニコッと笑われても異世界帰りですとは言えないよ。

 食べ終わり会計は鈴木さんがしてくれてそれから出社。桐生院グループ本社に向かう。

 

 桐生院グループに入ると特別対策室という課があってそこに呼ばれると、近藤課長と言うらしいがその人から指示をもらうらしい。

 俺のデスクも用意されていてまずは雇用形態から説明されて給料なんてとんでもない額だった。そしてもう振り込まれてるらしい特別ボーナスとやらを見るとびっくりした。五百万ほど入っていたのだ。


「さぁ、君の任務は社長の警備だよ」

「えっ!」

「まぁ、これだけ大きな会社だから、そりゃ恨まれることも多い訳だ。だから、君には社長を守ってもらうからよろしくね」

「は、はい…」

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