私は全裸なのだ
スタジオぼっち
第1話 何故か全裸の私
真夜中、ある街の少しうらぶれた通りで、私は警官二人と対峙している。
「貴方は何をしているんですか?」
若い方の警官が尋ねてきた。
「何をするも何も、ええと、家に帰る途中ですよ。うん、確かそうだった気がする」
私は答えたが、この答えが説得力に欠けるような気もする。何故だろう?
「帰宅中ね、でも何で」
年かさの方の警官が問いただしてきた。
「何で?」
これは、私だ。
「貴方はなぜ全裸なんです?」
「貴方はなぜ全裸なんです?」
二人の警官は盛大にハモった。
私はあらためて自分を確認した。確かに、確かに……私は、
全裸だ!
「これには理由がある!…………多分」
「多分でなんです?自分でもわからないんですか?見たところ、あなたは全裸であることを除けば一般的な三十歳前後の男性に見えるが、貴方、酔っ払ってる?」
若いほうの警官が詰め寄ってきた。私は二歩下がる。
「私は完全に素面だ。そもそも酒は飲めない質だ」
「変な薬物つかってませんか?」
「冗談じゃない!」
「とりあえず、署に来てくれませんか?」
「え!全裸で?」
私は尋ねた。何という思いやりのない警官たちだ。
「全裸で」
「全裸で」
二人の警官はまたもや盛大にハモった。
「股間を隠す配慮ぐらいないのか?あんたの警察手帳とかでいいから」
「警察手帳は股間を隠すためのものじゃない!」
若い方は警官が気分を害したようだ。当たり前の事を言うやつだ。
「じゃ拳銃で」
「ふざけてるのか?!」
年かさの方の警官も怒り出した。私は他人を怒らせるのが得意なようだ。
逃げよう。この年になって全裸で連行される屈辱に耐えられそうにはない………この年?いや、私は何歳なんだ?名前は………?
思い出せない。記憶が消えている。警官は一般的な30前後の男性に見えると言ってはいたが。
私は全裸なのだ スタジオぼっち @sumikun1234
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私は全裸なのだの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます