第39話 心の内 Ⅲ
「……内通していたか。エドワード。しかし何処で……。」
確かに不思議だ。
シャイン達から離反する計画を立てていたとしてもグロールさんは『遠視』を持っている。
そう簡単に隙をつけるとは思えない。
「あんたが出した手紙……それが無事に辿り着くまでは流石に追っていないだろうと踏んだ。」
「……そうか。」
恐らく、バインドさんに当てた手紙に離反する計画について書かれていたのだろう。
それが読まれたか。
そして、恐らく密かに監視をしていたシャインの手の者に伝えたのだろう。
しかし、いつから……。
「彼は我々があの村に送り込んでいた刺客だ。君に殺されないで良かったよ。まぁ、君に始末されないように忍び込ませていたんだがね。」
「……成る程。流石ですね。」
してやられた。
つまり、エドワードがここに潜り込むのは想定の範囲内だったということか。
「さて……ここで君達を始末するのは簡単だ。外のお仲間も入り込んだ途端に始末できるしね。」
あの銃があっても敵わないか。
どんなものかは分からないが、恐らく通用しない。
既に手の内は明かされているはずだ。
「なら、命が助かる道があるのか?」
「いや、無い。」
シャインはグロールさんの元へ近付いていく。
「離反を考えた者を許す程馬鹿じゃあない。……でも、生きながらえることはできる。君ならそこから活路を見い出す事もできるだろ?つまり、君達はこの提案を受けざるを得ない。」
「……何をさせたい。」
シャインは俺達の主な軸がまだグロールさんにあると見抜いている。
だからグロールさんと交渉をしている。
「簡単さ。このまま陽炎部隊の相手をしてもらう。我々が手傷を負ううこと無く奴等を始末できるのならばそれが良い。あぁ、勿論外のお仲間も使ってくれて良いがね。」
「……断ると言ったら?」
シャインは少し笑う。
「分かるだろ?」
シャインの視線を感じ取ったエドワードが切っ先を突き付ける。
「……良いだろう。取り敢えず陽炎部隊を倒す。それで良いな。」
「あぁ。勿論だ。」
笑顔でシャインはエドワードに視線を送る。
すると、エドワードは剣を外した。
「あ、そうだ。」
シャインは思い出したかのように手を挙げる。
すると、酒場に人が入ってきた。
背中からナイフを突き付けられて。
「っ!バインドさん!」
「……やられちゃいましたね。護衛の兵も残しておくんでした。」
成る程、人質か。
なら、ここで全員殺すのは無理か。
エドワードが離れた所を一気に仕留めようと思ったが、そう甘くは無い。
「……すまない。」
「いえ、構いませんよ。」
「君達が私達に大人しく従ってくれれば彼は解放する。約束しよう。」
……取り敢えず今は従おう。
それしか無い。
何か、策を講じよう。
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