第27話 襲撃 Ⅱ

「こっちよ!」

「ママぁ!」

 

 燃え盛る家の中から親子が出てくる。

 が、子供は何かを落とし家の中に戻ろうとする。

 

「何してるの!?逃げるのよ!」

「でも、でもクマさんが!」

 

 どうやら人形か何かを落としたらしい。

 だが、母親に止められる。

 

「こんな時にいらないものを持ってこないの!行くよ!……ひっ!」

 

 母親が子供の手を引っ張り逃げ出そうと振り向く。

 そして、眼の前にいた俺と目があった。

 

「こ、この人殺し!この火事も全部あんたのせいだろ!この、悪魔の使いめ!」

「……。」

 

 まるで親の仇を見るような目だ。

 いや、コイツラからしたら実際そうなのかもしれない。

 この火事で友人や家族を失ったかもしれない。

 その犯人と思われる人物が眼の前にいるのだ。

 仕方が無いだろう。

 

「わ、私も殺すのかい!?」

「やめて!ママを殺さないで!」

 

 娘が母親の前へと出る。

 両手を広げ、庇っているつもりなのだろう。

 

「や、やめて!下がりなさい!どうか……娘だけは!どうか!」

「……邪魔だ。」

 

 その親子二人をどかし、燃え盛る家の中に入る。

 そして、すぐそこに落ちているクマのぬいぐるみを拾う。

 まだ燃えてはいなかったか。

 

「え?」

 

 それを娘に手渡す。

 

「……あっちは火の勢いが弱い。建物も少ないし、避難民も集まっている。そっちへ行くといいだろう。」

「あっ!」

 

 娘は母親が掴んでいた腕を振り払い、こちらに駆け寄ってくる。

 

「ありがとう!お兄ちゃん!」

「……。」

 

 軽く頭を撫でてやる。

 

「早く行け。」

「うん!」

 

 娘は笑顔で母親の元へ戻って行く。

 母親は最後まで俺のことを警戒していた。

 

 

 

「あ、アルフレッド君!こっちは大体良い感じてすよ!」

「レインさん。こっちも大丈夫です。」

 

 人が多いような所はシャイン達蜃気楼に任せているから大丈夫だろう。

 俺達もそちらの支援へ回った方が良いだろうか。

 

「……おや?裏切り者がいるな。」

「こいつらも殺すか?アルフレッドの方も、必要なのはナイフの方だけだし。」


 声のする方を振り返る。

 そこには陽炎部隊の人間が二人いた。

 騎士団との戦いの際に見た覚えがある。

 

「いや、シャルに報告したほうが良いんじゃないか?」

「あー、そうだな。そうするか。」

 

 すると、二人は踵を返し、その場を去ろうとした。

 

「……逃がしませんよ。」

「なっ!?」

 

 すると、その先には『ワープ』したレインがいた。

 先回りされた事に驚き、足を止める。

 

「畜生!二手に分かれるぞ!……くそっ!」

 

 もう一人がまた踵を返した。

 が、すぐ先には俺がいる。

 二人がレインに気を取られている隙に『俊足』で距離を詰めた。

 

「一つ聞くぞ。」

「あ?何だよ!?」

 

 男達は剣を構える。

 俺もナイフを向ける。

 

「お前らは俺の父の死に関わっているか?」

「い、いや!関わってない!な!そうだろ!レイン!」

「……。」

 

 レインは暫く考える。

 

「……この二人はあの頃、アーロン隊長が亡くなった時、部隊に所属していて当時もその場にいた筈です。……が。私自身関わっていないので何とも言えません。」

「……そうですか。なら、捕縛して拠点にいる当事者に聞きましょうか。」

 

 つまり、グロールさんに聞こうと思ったのだ。

 レインは頷いた。

 

「じゃ、行きますよ。」

「え?がぁっ!」

「は、離せ……。」

 

 レインは二人の首を思い切り掴み、『ワープ』した。

 拠点に戻り、二人の身柄を拘束した後、戻って来るだろう。

 後はグロールさんに話を聞くだけだ。

 

「お、そっちは終わったのかな?」

「シャインさん。ということはそちらも?」

 

 すると、シャインが現れる。

 シャインは頷いた。

 

「あぁ。村人には私達の拠点に来るように誘導してある。私達も帰る所だよ。」

 

 すると、眼の前にレインさんが現れる。

 

「あれ?終わったんですか?」

「お、丁度いいところに来たね。帰るとしようか。」

 

 すると、レインはあからさまに不機嫌な顔になる。

 

「……あなたは自力で帰って下さい。他の隊員達もそうしてるんでしょう?」

「まぁね。でも楽できる時にしたほうが良いじゃん?」

 

 レインはこちらを見る。

 

「……まぁ、多分こうなったら意地でも自力で帰りませんよ。一緒に行きましょうか。」

「……アルフレッド君がそう言うのなら。」

 

 レインは嫌そうな顔をしながらも俺とシャインの肩に手を置く。

 そして、次の瞬間にはキャンプにもどって来ていた。

 さて、村人もそうだが、あの二人の処遇も決めなくてはな。

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