第22話 忠告

 その後は取り敢えず彼女等の拠点まで移動した。

 意外と村の近くであったのが驚きだ。

 そして、拠点につくとまずはグレンの処刑を行わされた。

 グレンの『キャンプ』のスキルを奪う為だ。

 グレンの意識は無かったのがせめてもの救いであった。

 いや、厳密には意識はあった。

 だが、記憶を失ったせいか廃人同然だったのだ。

 その事について、レインはというと。

 

「私は大丈夫です。グレンさんに恨みがあったわけでは無いですが、陽炎部隊がアーロン隊長を裏切って殺したことも事実。アルフレッド君に殺さないでとお願いはしません。」

 

 とのことだ。

 他の隊員についても同じらしい。

 そして、もう一人重要人物がいる。

 グロールだ。

 

「アルフレッド。話がある。」

 

 グロールは落ち着いた頃、人目を気にしながら話す。

 周りに人は居らず、この距離で聞こえることは無いだろう。

 

「アルフレッド。先の交渉、違和感には気付いているか?」

「……どういう事です?」

 

 グロールは再度周りを確認する。

 それ程までに聞かれたく無いのだろう。

 

「良いか?魔王を殺すのが目的ならば何も勇者を殺す必要は無い。戦力は多いに越したことは無いんだ。様々な状況に対応出来るからな。」

「……つまり魔王を討伐するために勇者を殺すのはおかしいと?」

 

 グロールは頷く。

 

「そうだ。考えても見ろ。もしこのまま事が運んで魔王がいなくなった後、この世界で最も脅威なのはお前だ。王国はお前を殺そうとするぞ。」

「……でも強くなりすぎているから殺せないのでは?」

 

 そこで気が付く。

 成る程。

 グロールの感じていた違和感はそれか。

 

「そうだ。王国としてはお前を何が何でも排除したがるだろう。だが、事実それは不可能となる。つまりこれは……。」

「国では無く、シャインの独自の判断?」

 

 グロールはまた頷く。

 

「そうとしか思えん。王国が勇者を殺すと計画するとも思えん。奴には何か考えがあるのだろう。それも最強となったお前を利用した、な。」

 

 暫く考える。

 どちらにせよ現状はこの人達に協力をせざるを得ないのだ。

 だから、逃げるという選択肢はない。

 というか、村へ復讐を果たすなら多少乗せられたとしても協力するのが良いだろう。

 

「……現状は協力体制を維持していこう。もしお前の身に危険が生じるようならレインと共に離脱しろ。レインにもこの事は伝えておく。良いか、くれぐれも今の話に気づいたことを勘付かれるなよ。」

「……ありがとうございます。」

 

 そこで、ふと思い出した事がある。

 この人に聞いておかなければ。

 

「そういえば、あの廃屋でどうやって暮らしていたんですか?あそこを出入りする人は見たことがありませんでした。」

「ん?あぁ。二階に家庭菜園ができるスペースがあってな。そこで基本的な食料は調達していた。それに、俺のスキル『遠視』で周りに人が居ないことを確認して少しずつ食料をちょろまかしていたんだ。」

 

 成る程。

 この人のスキルは『遠視』だったのか。

 ならば見張っている時に現れない訳だ。

 

「まぁ、陽炎部隊が来てからはスキルを使うのは避けていたんだ。奴らの中にはスキルの発動を感知するスキルを持つやつがいるからな。」

「そんな人がいたんですか?」

「……成る程な。奴等はお前のことを最初から信用していなかった訳だ。仲間ならばスキルの情報は交換しておくべきだからな。」

 

 そう考えてみれば他のメンバーのスキルについて聞いたことが無い。

 まぁ、正直興味も無かったが、こうなるならば聞いておけば良かった。

 

「さ、お前ももう安め。明日も早いんだろ?」

「はい。明日は早速村へ向かうみたいです。」

 

 俺はグロールへ頭を下げた。

 

「今度、ゆっくりと父の話を聞かせて下さい。」

「おお。たっぷりと聞かせてやるよ。俺の親友の話をな。」

 

 グロールさんは信用ができるな。

 父との話も聞きたいし、今日は早く寝るとしよう。



 

  保有スキル

 

『隠密』     強制的に相手の認識外になる

『不意打ち』   相手が認識していない場合攻撃力が二倍。

『奇襲』     相手が認識していない場合攻撃力が五倍。

『俊足』     発動してから三十秒間、速度が五倍。

『回復』     致命傷以外なら即座に回復可能。

『ファイアボール』火の玉を放つ。

『ライトニング』 雷撃を放つ。

『模倣』     相手の動き、言動等を習得出来る。

『調合』     薬を即座に調合出来る。

『キャンプ』   好きな場所にキャンプを展開可能。

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