第10話 再開 Ⅱ

「こ、ここは?」

「俺が昔虐められた時、閉じ込められた坑道です。廃坑に閉じ込められたんですけど、中を探索してみたら外に出たんです。」

 

 もうかなり昔のことで忘れていた。

 この坑道が廃坑となったのもかなりの昔で、当時作業していた人間は誰も生きては居ない。

 つまり、この通路を知っているのは俺だけということだ。

 

「ま、真っ暗ですけど……。所で、何で片目を閉じてるんですか?」

「そろそろ良いですかね。……大丈夫です。ついて来て下さい。」

 

 この道を思い出した時から俺は片目を閉じていた。

 レインには疑問に思われていたが、先導したかったので黙っていた。

 

「予め片目を閉じておく事で片方だけでも暗闇に目を慣らしておいたんです。これならなんとか見えます。」

「……ま、前もって言ってくれれば私も目を瞑りましたよ?」

 

 そう言われるとどうしようもない。

 先導したかった等と言うわけには行かない。

 恥ずかしいからな。

 

「……まぁ。これまで誰かと連携を取るような事が無かったので……。次からは気を付けます。」

「そ、そんな!すみません!お気を悪くされたのなら謝ります!」

 

 この坑道は長い。

 先程から気になっていたことを聞いても良いだろう。

 

「……レインさんは何でそんなに俺に畏まるんですか?そっちはもっとこう、上から目線で良いと思うんですけど。」

「そ、そんな!アーロン隊長の息子様にそんな事出来ません!」

「……?」

 

 どういう事だろうか。

 まるで分からん。

 

(貴方のお父上。アーロン様はそれはそれは厳しいお人でした。部下には厳しく、しかし勤務時間外は優しくされており、大変慕われていました。)

「成る程。」

「ど、どうしました?」

 

 そうか。

 ティルの声は聞こえないのか。

 

「いえ、ティルが父さんの事を話してくれました。どうやら厳しかったそうですね。でも、時間外は優しかったそうじゃないですか?」

「わ、私はポンコツで時間外もかなりお時間を頂いて訓練されましたので……。お優しい一面をあまり受けてないんです……。」


 ……つまり、今横にいる人はポンコツということだ。

 支援役にポンコツを寄越すとは、シャルも本気で支援するつもりは無いらしい。

 

「そ、それもあってアーロン隊長には頭が上がらないんです〜。」

「……でも、俺はただのアルフレッドです。その父も今は居ないので気にしないでくださいよ。」

 

 すると、眼の前に曲がり角が現れる。

 

「あ、曲がりますよ。」

「っ!止まって!」

 

 レインは小声で言う。

 その声に反応し止まる。

 

「……どうしました?」

 

 一応、小声で話しかける。

 

「話し声が聞こえます。」

 

 フードを外す。

 すると、そこからは人よりも長い耳が現れる。

 

「エルフ……。」

「あ、そうなんです。私はエルフで小さな音も聞こえるんです。まだ少し遠いですが、話し声と足音が……。数は……。二人?」

 

 何故だ。

 気づかれたのか? 

 いや、自分達の潜入が気付かれたとは思えない。

 ということは俺が閉じ込められた時に何処からか脱出したことを聞き、調査に来たのか。

 

「私達が来た道は一本道です。どうしますか?『ワープ』しますか?」

「……いえ、ここを逃したら他に潜入できる場所がありません。相手が誰であれ、排除しましょう。」

 

 ナイフを取り出す。

 すると、レインもナイフを取り出した。

 今更気づいたが、あのオロオロとした様子は何処にもない。

 

「……アーロン隊長にみっちり訓練をつけられたことによって私は部隊の中でもかなり上位の実力を身に着けたと言われました。」

 

 臨戦態勢になるその姿は頼りになるお姉さんという感じだ。

 先程までのポンコツ美人は消えた。

 

「恩返しをここでさせてもらいますよ。」

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