【完結】私たち、ただの村人から冒険者になりました(折角なので女子二人旅します)

竜胆

序章

 ふたつの太陽とふたつの月が空を支配し、大小様々な浮島が青色の空高く浮かぶ。

 広大な大地には数多の国が平和にまた諍いながら睨み合っている。

 海には点在する島々があり、世界は輝きに満ちていた。

 豊かな自然と文化に恵まれた人々の生活を脅かすのは諍いによる住人たちの争いだけではなく、そこいらを徘徊する魔獣などもあった。

 最大の国土を誇る帝国「シーダー」は他国からの侵略や魔獣の侵攻に対応するべく、数百年前に帝都を巨大な浮島に移した。

 帝国に倣うように各国もまた次々と浮島へ都を移した。

 浮島への移住が進むにつれ、それまで馬車や船での移動が主だった人々の足に空挺が発展して行った。

 とはいえ、海上からまた地から離れて生きることを望まない国もあり、全ての都が浮島にあるというわけでもない。


 そこまで読んで膝の上に乗せた分厚く使い込まれた本を二人の幼い少女は閉じた。

 見上げた空に遠く浮島が見える、山に囲まれた小さな村を見下ろす丘の上にある岩に座り少女たちは浮島を見つめる、その向こうには二つ仲良く並ぶ太陽が西へと陽を傾け始めていた。

 「海の上にある国かぁ」

 「行ってみたいね」

 「絶対二人で見にいこうね」

 まだ幼い少女たちはクスクスと笑いながら顔を突き合わせて本を背後にたつ大きな木の虚にそっと隠した。

 遠くから少女たちを呼ぶ声が聞こえてくる。

 「帰ろうか」

 「うん」

 手を繋いで二人は声の方へと走り出した。

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